依頼者対義語とは受任者受託者請負人の違い

依頼者の対義語と受任者受託者請負人の違い

専任媒介契約でも依頼者自身が買主を見つけたら仲介手数料を払う義務が発生します

この記事のポイント
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依頼者の対義語は契約形態で異なる

委任契約では「受任者」、委託契約では「受託者」、請負契約では「請負人」と呼称が変わります

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報酬発生の条件が契約ごとに大きく違う

受任者・受託者は業務遂行で報酬請求可能、請負人は成果物完成が条件となります

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不動産業界では媒介契約の種類で義務が変わる

専任媒介は2週間に1回、専属専任媒介は1週間に1回の報告義務があり、違反しても罰則はありません

依頼者の対義語が契約形態で変わる理由

 

不動産取引の現場では、依頼する側を「依頼者」と呼びますが、依頼を受ける側の呼び方は契約形態によって異なります。この違いを理解していないと、契約書作成時に誤った用語を使用し、法的な解釈トラブルに発展する可能性があるのです。

委任契約における対義語は「受任者」です。委任契約とは、法律行為を他者に依頼する契約形態を指します。不動産業界では、弁護士に訴訟を依頼する場合や、税理士に確定申告を依頼する場合などが該当します。委任する側を「委任者」、引き受ける側を「受任者」と呼び、この関係性は民法643条で明確に規定されています。

つまり法律行為かどうかです。

一方、委託契約では「受託者」という呼称が使われます。委託契約は、法律行為以外の業務を他者に任せる契約形態です。例えば、物件管理業務を管理会社に依頼する場合や、清掃業務を外部業者に委託する場合が該当します。委託する側を「委託者」、受ける側を「受託者」と呼び、この区別が契約上非常に重要になります。

請負契約における対義語は「請負人」です。請負契約は、仕事の完成を約束する契約形態であり、民法632条で「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と定められています。

建設工事やリフォーム工事などが典型例です。

この3つの契約形態は、報酬の発生条件が根本的に異なります。委任契約と委託契約(準委任契約)では、業務を遂行すれば報酬を請求できます。これに対して請負契約では、仕事を完成させなければ報酬を請求できないという原則があります。

不動産業界では、これらの契約形態が混在して使われるため、どの立場で契約を結んでいるのか明確にすることが重要です。例えば、売買仲介を依頼する媒介契約は、準委任契約に該当し、不動産会社が「受託者」または「受任者」の立場になります。一方、建物の建築を依頼する場合は請負契約となり、建設会社が「請負人」となるわけです。

契約書を作成する際には、依頼する業務内容に応じて適切な呼称を使い分ける必要があります。誤った用語を使用すると、報酬の発生条件や責任範囲が意図しない形で解釈される危険性があります。したがって、契約形態ごとの対義語を正確に理解し、適切に使用することが、不動産業従事者にとって必須のスキルとなります。

受任者と受託者の実務での使い分け方法

不動産実務において、受任者と受託者の使い分けは契約内容の性質によって決まります。この2つの用語は似ているように見えますが、法律上の位置づけが微妙に異なるため、正確な理解が求められます。

受任者は、主に法律行為を伴う業務を引き受ける立場です。不動産業界で具体的な例を挙げると、登記手続きを司法書士に依頼する場合、司法書士が受任者となります。また、不動産売買契約の代理権を付与して代理人に契約させる場合も、その代理人は受任者の立場になります。この場合の契約は「委任契約」と呼ばれ、民法の委任に関する規定が適用されます。

受託者は、法律行為以外の業務を引き受ける立場です。不動産業界では、物件の清掃、修繕、管理、広告宣伝活動などが該当します。これらは「準委任契約」として扱われ、民法656条により委任に関する規定が準用されます。例えば、賃貸物件の管理を管理会社に依頼する場合、管理会社は受託者となります。

結論は準委任契約です。

実務上、不動産仲介業務は準委任契約に該当するため、不動産会社は「受託者」または「受任者」と呼ばれることが多いです。宅地建物取引業法における媒介契約も、基本的には準委任契約の性質を持つため、依頼を受けた不動産会社は受託者の立場になります。

受任者と受託者では、報酬請求の条件にも違いがあります。委任契約(受任者)の場合、民法648条1項により、特約がなければ報酬を請求できません。

つまり、無報酬が原則です。

一方、準委任契約(受託者)も同様に、特約がなければ報酬請求できませんが、実務上は必ず報酬の取り決めを行います。不動産仲介手数料も、媒介契約という準委任契約に基づく報酬として位置づけられます。

両者の義務内容にも違いがあります。受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負います(民法644条)。受託者も同様の義務を負いますが、さらに準委任契約特有の義務として、業務の処理状況を報告する義務が課される場合があります。不動産媒介契約では、専任媒介契約の場合に2週間に1回以上、専属専任媒介契約の場合に1週間に1回以上の報告義務が宅地建物取引業法で定められています。

契約書を作成する際は、依頼する業務が法律行為か否かを判断し、適切な用語を選択する必要があります。登記や訴訟など明確な法律行為であれば「受任者」、それ以外の業務であれば「受託者」と記載するのが適切です。ただし、実務上は両者を厳密に区別せず、どちらの用語を使っても問題ないケースも多いため、契約内容全体を見て判断することが重要です。

請負人が負う契約不適合責任の重要性

請負契約における請負人は、他の契約形態とは明確に異なる責任を負います。

それが「契約不適合責任」です。

この責任の重さを理解していないと、不動産取引で重大なトラブルに巻き込まれる可能性があります。

請負契約では、請負人は「仕事の完成」を約束します。民法632条に規定されているとおり、注文者(依頼者)は仕事の結果に対して報酬を支払います。つまり、仕事が完成していなければ、原則として報酬を請求できません。これは受任者や受託者とは大きく異なる点です。受任者・受託者は業務を遂行すれば報酬を請求できますが、請負人は成果物を完成させなければならないのです。

厳しいところですね。

さらに重要なのが、契約不適合責任の存在です。改正民法(2020年4月施行)により、従来の「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に名称と内容が変されました。契約不適合責任とは、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものである場合に、請負人が負う責任です。

不動産業界で具体例を挙げると、建築工事の請負契約において、完成した建物に契約内容との不適合(例:設計図と異なる構造、約束した性能が出ない等)があった場合、注文者は請負人に対して以下の権利を行使できます。

まず追完請求権です。注文者は請負人に対して、修補、代替物の引渡し、または不足分の引渡しを請求できます(民法562条)。建物に不具合があれば、修理を求めることができるということです。

次に代金減額請求権です。請負人が追完をしない場合、または追完が不能である場合、注文者は代金の減額を請求できます(民法563条)。例えば、約束した性能が出ない建物であれば、その分の代金減額を求められます。

さらに損害賠償請求権と契約解除権もあります。契約不適合が請負人の責めに帰すべき事由による場合、注文者は損害賠償を請求できます(民法564条、415条)。また、契約不適合が契約目的を達成できない程度に重大であれば、契約を解除することも可能です(民法564条、541条、542条)。

この責任は非常に重く、請負人にとって大きなリスクとなります。建築工事の場合、契約不適合責任の期間は、目的物の引渡し後、原則として1年間です。ただし、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分については、10年間の責任期間が住宅品質確保促進法により定められています。

不動産取引において請負契約を結ぶ際は、この契約不適合責任を十分に理解し、契約書に明確な品質基準や仕様を記載することが重要です。曖昧な記載は後のトラブルの原因となるため、具体的な数値や基準を盛り込むべきです。また、請負人側は、この責任の重さを認識し、適切な保険に加入するなどのリスク管理が必要になります。

不動産媒介契約における依頼者と業者の関係

不動産媒介契約は、売主や買主(依頼者)が不動産会社(受託者または受任者)に売買や賃貸の仲介を依頼する契約です。この契約における両者の関係性と義務内容を正確に理解することが、トラブル回避の鍵となります。

媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。一般媒介契約は、複数の不動産会社に同時に依頼できる契約形態です。依頼者の自由度が高く、自分で買主を見つけて直接取引することも可能です。不動産会社側には、指定流通機構(レインズ)への登録義務や定期的な報告義務がありません。

専任媒介契約は、1社の不動産会社にのみ依頼する契約形態です。依頼者は他の不動産会社に重ねて依頼できませんが、自分で買主を見つけた場合は直接取引が可能です。不動産会社には、契約締結日から7日以内のレインズ登録義務と、2週間に1回以上の業務処理状況報告義務が課されます(宅地建物取引業法34条の2)。

これが基本です。

専属専任媒介契約は、最も制約の厳しい契約形態です。依頼者は1社にのみ依頼でき、自分で買主を見つけた場合でも、必ずその不動産会社を通して取引しなければなりません。不動産会社には、契約締結日から5日以内のレインズ登録義務と、1週間に1回以上の報告義務が課されます。

興味深いのは、専任媒介契約でも依頼者自身が買主を見つけた場合、不動産会社に仲介手数料を払う必要があるかという点です。標準専任媒介契約約款によれば、依頼者が自ら発見した相手方と取引する場合、不動産会社への報酬支払い義務は発生しません。ただし、不動産会社が紹介・案内した相手方と依頼者が直接取引した場合は、約定報酬相当額の違約金が発生します。これは「抜き行為」と呼ばれ、不動産業界の3大タブーの1つとされています。

不動産会社には、宅地建物取引業法に基づく様々な義務が課されています。まず媒介契約書の作成・交付義務です(宅建業法34条の2第1項)。契約締結後、遅滞なく一定事項を記載した書面を依頼者に交付しなければなりません。この義務に違反すると、業務停止処分の対象となります。

次に、専任媒介契約・専属専任媒介契約における報告義務です。前述のとおり、定期的に業務処理状況を依頼者に報告する義務があります。ただし、この報告義務違反には直接的な罰則がなく、宅建協会からの指導や営業停止命令の対象となる程度です。それでも、誠実な業務遂行義務の一環として重要な義務となります。

さらに守秘義務も重要です。不動産会社は、宅建業法45条により、正当な理由なく業務上知り得た秘密を他に漏らしてはなりません。例えば、売主の売却理由や財務状況、買主の年収や借入状況などを第三者に話すことは守秘義務違反となり、50万円以下の罰金が科されます。

依頼者側にも一定の義務があります。専任媒介契約・専属専任媒介契約を結んだ場合、他の不動産会社に重ねて依頼してはなりません。これに違反して他社経由で契約が成立した場合、違約金として約定報酬相当額を支払う義務が生じます。また、不動産会社に対して、物件の正確な情報を提供する義務もあります。虚偽の情報提供は、後のトラブルの原因となります。

媒介契約は準委任契約の性質を持つため、不動産会社は仕事の完成(買主を見つけること)を約束するわけではありません。あくまで誠実に業務を遂行する義務を負うだけです。そのため、買主が見つからなくても、通常は不動産会社に責任を問うことはできません。ただし、明らかに誠実な業務遂行を怠った場合は、損害賠償請求の対象となる可能性があります。

依頼者の対義語を間違えると起きる法的リスク

契約書において依頼者の対義語を誤って使用すると、予期しない法的リスクが発生します。言葉の選択ミスが、報酬請求の可否、責任範囲、契約解除の条件などに直接影響するため、不動産業従事者は細心の注意が必要です。

最も典型的なリスクは、報酬請求権の有無に関する問題です。例えば、本来は準委任契約として締結すべき不動産管理業務を、誤って請負契約として記載した場合を考えてみましょう。請負契約では「仕事の完成」が報酬請求の条件となります。不動産管理業務には明確な「完成」という概念がないため、受託者側が報酬を請求しづらくなる可能性があります。

逆のケースも問題です。本来は請負契約とすべき建築工事を、準委任契約として記載した場合、注文者は仕事が完成していなくても報酬を支払わなければならなくなる危険性があります。請負契約であれば、完成しない限り報酬請求できないという原則がありますが、準委任契約では業務遂行に対して報酬が発生するためです。

痛いですね。

契約不適合責任の範囲も、契約形態により大きく異なります。請負契約では、前述のとおり契約不適合責任が適用され、請負人は完成した目的物の品質に対して責任を負います。一方、準委任契約では、善管注意義務を尽くして業務を遂行すれば、結果に対する責任は原則として問われません。誤った契約形態を選択すると、想定外の責任を負わされる、あるいは本来追及できる責任を追及できなくなる事態が生じます。

不動産売買の仲介において、特に注意が必要なケースがあります。それは、不動産会社が売主から直接物件を買い取って転売する場合です。この場合、不動産会社は「買主」の立場であり、「受託者」や「仲介業者」ではありません。契約書に誤って「受託者」と記載すると、法的な立場が曖昧になり、瑕疵担保責任(契約不適合責任)の範囲が不明確になります。売主側の不動産会社は「売主」として、買主に対して契約不適合責任を負う立場であることを明確にする必要があります。

契約期間の解釈にも影響があります。委任契約・準委任契約は、当事者がいつでも解除できる「任意解除権」が民法651条により認められています。ただし、相手方に不利な時期に解除した場合、損害賠償義務が生じる可能性があります。一方、請負契約では、注文者はいつでも解除できますが(民法641条)、請負人側からの任意解除は原則として認められていません。契約書に誤った呼称を使用すると、解除権の有無に関する解釈が混乱する可能性があります。

税務上の取り扱いにも違いが生じることがあります。例えば、消費税の課税関係において、請負契約と準委任契約では、課税のタイミングや方法が異なる場合があります。特に、長期にわたる業務委託契約では、誤った契約形態の記載により、消費税の納税時期が意図しない形になる可能性があります。

紛争が発生した場合の立証責任も変わってきます。請負契約で目的物に不具合があった場合、契約不適合の存在を立証するのは注文者側です。一方、準委任契約で受託者の義務違反を主張する場合、善管注意義務違反を立証するのは委託者側となります。この立証責任の違いは、訴訟の勝敗を左右する重要な要素となります。

契約書を作成する際は、以下の点を確認してください。第一に、依頼する業務内容が法律行為か否かを判断します。法律行為であれば「委任者・受任者」、それ以外であれば「委託者・受託者」と記載するのが基本です。第二に、業務内容に「完成」という概念があるか否かを確認します。明確な完成形がある場合は「注文者・請負人」とすべきです。

第三に、報酬の発生条件を明確にします。

業務遂行に対して報酬を支払うのか、成果物の完成に対して支払うのかを契約書に明記します。

実務上、どちらの呼称を使うべきか判断が難しい場合は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。特に、高額な取引や長期間の契約、複雑な業務内容を伴う契約では、専門家のチェックが不可欠です。契約書の用語選択ミスによる損失は、時に数百万円から数千万円規模になることもあるため、事前の確認にコストをかける価値は十分にあります。

e-Gov法令検索:民法(契約に関する規定を確認できます)
国土交通省:不動産取引に関する情報(媒介契約の標準約款などが掲載されています)

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