事業用定期借地権公正証書ひな形の作成と活用
公正証書なしで契約すると普通借地権扱いになり借主を50年以上保護する義務が生じます
事業用定期借地権の公正証書ひな形の基本構成
事業用定期借地権の公正証書は、法律で定められた必須項目を漏れなく記載する必要があります。公正証書の構成は、前文、目的条項、期間条項、地代条項、用途制限条項、原状回復条項、登記条項、特約条項など、複数のセクションから成り立っています。
基本構成は全国の公証役場でほぼ統一されており、美濃加茂公証役場や大牟田公証役場などが公開しているひな形を参考にすることができます。これらの公開ひな形は実務で広く活用されており、初めて事業用定期借地権の契約を扱う場合でも参考にしやすい内容です。
つまり標準的なひな形があります。
公正証書には「賃貸人」と「賃借人」の明確な特定が必要で、個人の場合は住所・氏名、法人の場合は本店所在地・商号・代表者氏名を正確に記載します。土地の表示については、登記簿謄本の記載どおりに地番、地目、地積を明記する必要があります。
美濃加茂公証役場のサンプル書式ページでは、事業用定期借地権の公正証書ひな形が公開されており、実務上の参考資料として有用です。
期間の定めについては、10年以上50年未満の範囲内で明確に記載する必要があります。期間が10年未満だと事業用定期借地権の要件を満たさず、50年以上だと一般定期借地権の範囲になってしまうため、期間設定には十分な注意が必要です。10年以上30年未満の契約と30年以上50年未満の契約では、契約更新や建物買取請求権の扱いが異なる点も覚えておく必要があります。
用途制限条項では「専ら事業の用に供する建物」という文言が必須であり、居住用部分が一部でも含まれていると事業用定期借地権として無効になるリスクがあります。コンビニエンスストア、ショッピングセンター、倉庫、事務所ビルなど、事業用途を具体的に明記することで、後々のトラブルを防止できます。
事業用定期借地権の公正証書作成に必要な書類と手続き
公正証書を作成するには、当事者の本人確認書類と権利関係を証明する書類が必要です。個人が契約当事者の場合、印鑑証明書(発行後3か月以内)と実印、または運転免許証やマイナンバーカードなどの顔写真付き身分証明書と認印が必要になります。
法人が契約当事者の場合、法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)と法人代表者の印鑑証明書、代表者印が必要です。登記簿謄本も発行後3か月以内のものを用意する必要があります。代理人が公証役場に出頭する場合は、委任状に本人の実印を押印し、本人の印鑑証明書を添付します。
京橋公証役場の事業用定期借地権等の公正証書説明ページには、必要書類の詳細な一覧が掲載されており、準備段階で確認すると手続きがスムーズです。
土地の権利関係を確認するため、土地の登記簿謄本(登記事項証明書)も必要です。この登記簿謄本には最新の所有者情報、抵当権の有無、地積などが記載されており、公証人が契約内容と権利関係の整合性を確認する際に使用します。
契約書案(ひな形)も事前に準備します。公証役場に持参する前に、契約当事者間で契約条件を十分に協議し、合意内容を文書化しておくことが重要です。公証人は当事者から提出された契約書案をもとに、法律的な観点から内容を精査し、必要に応じて修正を提案します。
公証役場での手続きは、事前に公証人と日時を予約し、必要書類を持参して出頭します。公証人が契約内容を読み上げ、当事者双方が内容を確認したうえで署名・押印を行います。この手続きには通常1~2時間程度かかります。
公正証書が完成すると、原本は公証役場に保管され、当事者には正本と謄本が交付されます。正本は登記手続きに使用し、謄本は契約書として各当事者が保管します。正本・謄本の交付には1枚250円の費用がかかります。
事業用定期借地権の公正証書作成費用と計算方法
公正証書の作成費用は「公証人手数料令」という政令で全国一律に定められています。手数料は契約の「目的の価額」によって段階的に設定されており、事業用定期借地権の場合、目的の価額は契約期間中の地代総額の2分の1相当額とされています。
具体的な手数料は以下のとおりです。目的の価額が100万円以下なら5,000円、100万円超200万円以下なら7,000円、200万円超500万円以下なら11,000円、500万円超1,000万円以下なら17,000円です。
例えば、月額地代が20万円で契約期間が20年の場合、地代総額は20万円×12か月×20年=4,800万円となり、その2分の1の2,400万円が目的の価額です。この場合、手数料は23,000円となります(1,000万円超3,000万円以下の区分)。
これが基本手数料です。
基本手数料に加えて、正本・謄本の交付費用がかかります。公正証書の枚数が法務省令で定める計算方法により4枚(横書きの場合は3枚)を超えると、1枚につき250円が加算されます。通常、事業用定期借地権の公正証書は10枚前後になることが多く、正本・謄本を各1通ずつ交付する場合、250円×枚数×2通分の費用が発生します。
公正証書作成費用を貸主と借主のどちらが負担するかについては、法律上の定めはありません。実務上は、借主が全額負担するケースが多いですが、双方で折半することもあります。契約前に費用負担について明確に合意し、覚書や本契約書に明記しておくことでトラブルを防止できます。
費用は公正証書作成当日に現金で支払うのが一般的です。公証役場によっては振込対応も可能な場合がありますが、事前に確認しておくと安心です。
事業用定期借地権の公正証書と覚書の違いと活用タイミング
事業用定期借地権の実務では、まず「覚書」を締結し、その後に公正証書を作成する流れが一般的です。覚書は、本契約(公正証書)を締結する前の準備段階で交わす文書であり、契約条件の合意内容を確認する役割を果たします。
覚書の段階では、土地の造成工事、建築確認申請、融資の審査など、事業開始に向けた準備作業を進めることができます。ただし、覚書はあくまで予備的な合意であり、公正証書が作成されない限り、事業用定期借地権としての法的効力は発生しません。
覚書には事業用定期借地権の成立要件である「公正証書による契約」という条件が満たされていないため、たとえ覚書に署名・押印しても、事業用定期借地権は成立していないことになります。この点を理解していないと、重大なリスクを招きます。
不動産流通推進センターの相談事例では、公正証書を作成せずに事業用建物の建築に着手したケースが紹介されており、事業用定期借地権として無効となり普通借地権として扱われる可能性が指摘されています。
覚書の段階で公正証書作成を中止した場合、覚書違反として損害賠償責任を負う可能性があります。覚書には通常、「一定期日までに公正証書を作成する」という義務条項が含まれており、正当な理由なく公正証書作成を拒否すると、相手方に発生した損害(建築費用、機会損失など)を賠償しなければならないケースがあります。
覚書から公正証書作成までの期間は、通常1~3か月程度です。この間に、土地の測量、境界確定、登記簿の確認、建築プランの最終調整などを行います。公正証書の作成日が事業用定期借地権の契約日となり、この日から賃貸借期間が開始します。
事業用定期借地権の公正証書作成における契約期間の選択
事業用定期借地権の契約期間は10年以上50年未満の範囲で設定できますが、期間の長さによって法律上の扱いが異なります。10年以上30年未満の契約と、30年以上50年未満の契約では、借地借家法の適用条文が異なるため、実務上の注意点も変わってきます。
10年以上30年未満の契約では、借地借家法第23条第2項が適用され、契約更新、建物買取請求権、借地条件変更などの規定が最初から適用されません。つまり、特約を定めなくても、これらの権利が発生しないことが法律で保証されています。
契約期間が短い分リスクが小さいです。
30年以上50年未満の契約では、借地借家法第23条第1項が適用され、契約の更新がないこと、建物買取請求権を行使しないことを特約として明記する必要があります。特約を定めなければ、これらの権利が発生する可能性があるため、公正証書の条項に明確に記載することが重要です。
契約期間の選択は、借主の事業計画に大きく影響します。コンビニエンスストアや飲食店など比較的短期の事業モデルでは10~20年程度、ショッピングセンターや物流施設など大規模投資を伴う事業では30~50年程度の期間が選ばれることが多いです。
期間を10年未満に設定すると事業用定期借地権の要件を満たさず、普通借地権として扱われます。逆に50年以上に設定すると一般定期借地権の範囲になり、事業用に限定できなくなります。期間設定を誤ると契約目的が達成できないため、慎重な検討が必要です。
契約期間の延長は可能ですが、再度公正証書を作成する必要があります。延長する場合も、当初の契約開始日から通算して50年未満の範囲内でなければ、事業用定期借地権としての性質を維持できません。延長手続きの費用と手間も考慮して、当初の期間設定を行うことが望ましいです。
事業用定期借地権の公正証書における登記と更地返還条項
公正証書作成後は、事業用定期借地権設定登記を行う必要があります。登記は貸主と借主が共同で管轄の法務局に申請します。登記をすることで、第三者に対して借地権の存在を主張でき、土地の所有者が変わっても借地権が保護されます。
登記申請には、公正証書の正本または謄本、貸主の登記識別情報(権利証)、双方の印鑑証明書、委任状(司法書士に依頼する場合)などが必要です。登記申請は公正証書作成後速やかに行うことが推奨されており、公正証書の条項にも「直ちに登記を行う」という文言が含まれることが一般的です。
登記手続きを司法書士に依頼する場合、報酬として5万円~10万円程度が相場です。登録免許税は、借地権の価額(通常は土地評価額の一定割合)の1,000分の10が課税されます。
更地返還条項は、事業用定期借地権の重要な特徴です。契約期間満了時には、借主は建物を取り壊して土地を更地の状態で貸主に返還する義務があります。この条項は公正証書に明記され、法的拘束力を持ちます。
建物の解体費用は原則として借主が負担します。木造建物の解体費用は坪単価3万円~5万円、鉄骨造は坪単価4万円~6万円、鉄筋コンクリート造は坪単価6万円~8万円が目安です。例えば50坪の鉄骨造店舗なら、解体費用は200万円~300万円程度が見込まれます。
解体費用の負担を巡るトラブルを防ぐため、公正証書には「契約期間満了時に借主の責任と費用負担により建物を取り壊し、更地で返還する」という文言を明記します。また、返還時期や返還方法、解体工事の実施時期なども具体的に定めておくと、後々のトラブルを防止できます。
更地返還に関する特約として、貸主が建物を買い取る選択肢を設けることもできます。ただし、この特約を設ける場合は、買取価格の算定方法や買取通知の時期などを明確に定める必要があります。特約の内容によっては、事業用定期借地権の性質が変質する可能性もあるため、専門家のアドバイスを受けることが望ましいです。
Please continue.

