仮登記の本登記の登録免許税と租税特別措置法の注意点

仮登記の本登記における登録免許税と租税特別措置法の関係

仮登記の受付時期をうっかり見落とすと、本登記の登録免許税を数十万円単位で計算ミスします。

この記事の3つのポイント
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登録免許税は「仮登記の受付日」で変わる

本登記時の登録免許税は、仮登記がいつ受け付けられたかによって税率が異なります。平成15年3月31日以前・以後・平成18年4月以降の3区分が重要です。

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租税特別措置法72条が上書きする

「土地の売買」に限り、登録免許税法17条だけでなく租税特別措置法72条の規定も確認が必要です。見落とすと税率の適用ミスに直結します。

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還付されないケースに要注意

本登記の税率が仮登記時の既払い税率を下回る場合、差額は還付されず本登記の登録免許税は1,000円になります。過払い分は戻りません。

仮登記の本登記で適用される登録免許税法17条の基本的な仕組み

 

仮登記の本登記にかかる登録免許税は、「本登記の税率から仮登記時に支払った税率を差し引いた差額」が原則です。これが登録免許税法第17条の基本的な考え方になります。

仮登記をする際、たとえば売買を原因とする所有権移転の仮登記であれば、本則税率20/1000(2.0%)の半額、つまり10/1000(1.0%)の登録免許税を支払います。その後、本登記の際には本則税率の20/1000から既払い分の10/1000を引いた残りの10/1000(1.0%)を納付する流れです。差額を2回に分けて払う仕組みと考えると理解しやすいでしょう。

たとえば不動産評価額が1,000万円の土地を売買予約で仮登記した場合、仮登記時に10万円(10/1000)を納付し、本登記時にさらに差額を支払う計算になります。つまり合計して通常の本登記と同じ税額になるのが原則です。

ただし、この「原則」通りにならないのが実務の難しいところです。重要なのは次の点で、「土地の売買」については租税特別措置法72条が登録免許税法17条を上書きするため、計算方法が変わります。租税特別措置法が絡む場合は要注意です。

参考情報:登録免許税法第17条(仮登記等のある不動産の移転登記の場合の税率の特例)の原文・解説

登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)- e-Gov 法令検索

仮登記の本登記で「土地の売買」に租税特別措置法72条が適用される理由

「土地の売買」による所有権移転登記は、政策的な理由から長年にわたって特別な税率軽減措置が設けられています。これが租税特別措置法第72条です。この条文が存在するために、同じ「本登記」でも登記原因や仮登記の時期によって納付税率が変わってくるのです。

租税特別措置法72条第1項は、土地の売買による所有権移転登記について、本則の20/1000ではなく15/1000(1.5%)を適用する軽減措置を定めています。令和8年度税制改正により、この軽減措置はさらに3年延長され、令和11年(2029年)3月31日まで適用されることになりました。宅建事業従事者にとっては朗報です。

ここで重要なのは、仮登記の本登記に際して登録免許税法17条が「本登記の税率から控除する」と定めているときの「本登記の税率」の解釈です。土地の売買であれば本則20/1000ではなく、租税特別措置法72条の適用後の15/1000が起算点になります。これが見落とされやすいポイントです。

たとえば平成18年4月1日以降に仮登記がなされた土地の売買の本登記の場合、計算式は以下のようになります。

項目 税率
租税特別措置法72条の本登記適用税率 15/1000(1.5%)
登録免許税法17条の控除額(平成18年4月1日以降の仮登記) 10/1000(1.0%)
実際に本登記時に納付する税率 5/1000(0.5%)

つまり、20/1000から10/1000を引くのではなく、15/1000から10/1000を引くのが正解です。本登記の「起算点」を誤ると過大または過少納付につながります。これは実務上の落とし穴です。

参考情報:租税特別措置法72条の条文内容・仮登記に関する特別規定(2項・3項)

租税特別措置法 第72条 土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減 – 税務研究会

仮登記の受付時期別に見る登録免許税の税率一覧と計算例

実務上、最も混乱しやすいのが「仮登記の受付日がいつか」によって税率が変わるケースです。宅建事業に携わる方が古い案件を扱う際には、以下の時期区分を必ず確認してください。

以下は土地の売買を登記原因とする所有権移転仮登記の本登記における税率の整理です。

仮登記の受付日 本登記時の控除率 本登記適用税率(措法72条) 実際の本登記税率
平成15年3月31日以前 3/1000(措法72条3項) 15/1000 12/1000(1.2%)
平成15年4月1日〜平成18年3月31日 7.5/1000(措法72条2項) 15/1000 7.5/1000(0.75%)
平成18年4月1日以降 10/1000(登免税法17条) 15/1000 5/1000(0.5%)

昭和・平成一桁台の古い仮登記を今から本登記する場面では、平成15年3月31日以前の控除率「3/1000」が適用されます。つまり、多くの方が「10/1000控除できる」と思い込んでいる計算ではなく、控除額がたった3/1000しか認められないのです。

具体的な数字で見てみましょう。固定資産税評価額が2,000万円の土地で、昭和40年に仮登記がなされたケースで本登記する場合、本登記の登録免許税は「15/1000 − 3/1000 = 12/1000」で24万円になります。「10/1000控除」と誤った場合は10万円しか計算しないため、14万円もの計算ミスが生じます。これは大きな差です。

なお、売買以外の原因(贈与・死因贈与など)については、土地・建物ともに平成15年4月1日以降の仮登記であれば「20/1000 − 10/1000 = 10/1000(1.0%)」が原則の本登記税率となります。平成15年3月31日以前の仮登記では控除額が4/1000となり、16/1000(1.6%)の適用になります。登記原因と仮登記時期の組み合わせを正確に把握することが条件です。

参考情報:司法書士が実務で遭遇した古い仮登記の本登記・登録免許税の詳細解説

仮登記の本登記申請時の注意点 – 千葉司法書士事務所

仮登記時の既払い税率が本登記の税率を上回る場合の盲点と対処法

あまり知られていない落とし穴として、「仮登記時に支払った税率の方が、本登記の税率より高くなってしまうケース」があります。これは特に、住宅用家屋の軽減措置が適用される建物の登記でよく生じます。

たとえば、売買による建物の所有権移転の仮登記について、仮登記時に10/1000(1.0%)を支払っていたとします。その後、本登記の際に住宅用家屋証明書(住宅用家屋の取得要件を証明する書類)を取得し、租税特別措置法73条の軽減税率3/1000(0.3%)が適用されるケースです。

この場合、本来ならば3/1000 − 10/1000 = マイナスとなります。本登記の税率が仮登記の既払い分を下回るのです。この場合、本登記の登録免許税は1,000円となります。差額が還付されることはありません。

重要なのは、仮登記時に過払いした登録免許税の差額は「還付されない」という点です。損した分が戻ってくると思い込んでいると、後々驚くことになります。

この状況を避けるためには、仮登記の段階から住宅用家屋証明書の取得見込みを把握しておき、本登記時の税率を事前に試算しておくことが重要です。試算しておくことで、顧客への説明も明確になります。なお、住宅用家屋証明書は市区町村の窓口で取得でき、建物の床面積が50㎡以上(一定要件で40㎡以上)・新耐震基準適合などの要件確認が必要です。証明書の有無が税額に直結することを覚えておけばOKです。

参考情報:仮登記の本登記にかかる登録免許税の税率・還付不可の解説

所有権移転仮登記の本登記にかかる登録免許税 – 大阪の司法書士事務所ブログ

宅建事業従事者が見落としやすい「登記原因別」の税率チェックリスト

実務の現場では、登記原因のパターンが複数あるにもかかわらず、「土地の売買の仮登記だから5/1000だろう」と一律に判断してしまうことがあります。これは危険な思い込みです。

以下に、宅建事業従事者が実際に遭遇しやすい登記原因別の注意ポイントをまとめます。

登記原因 仮登記の受付時期 本登記税率の注意点
土地の売買 平成15年3月31日以前 控除額は3/1000のみ。よって12/1000(1.2%)と高くなる
土地の売買 平成15年4月1日〜H18.3.31 控除額は7.5/1000。本登記税率は7.5/1000(0.75%)
土地の売買 平成18年4月1日以降 控除額10/1000。本登記税率5/1000(0.5%)
贈与・死因贈与(土地・建物) 平成15年3月31日以前 控除額4/1000。本登記税率16/1000(1.6%)
贈与・死因贈与(土地・建物) 平成15年4月1日以降 控除額10/1000。本登記税率10/1000(1.0%)
相続・合併・共有物分割 平成15年3月31日以前 仮登記税率は本則の2分の1だが本登記は1,000円の定額
相続・合併・共有物分割 平成15年4月1日以降 本登記税率0.2%(2/1000)。仮登記時も0.2%(半額)

相続・合併・共有物分割については、仮登記の受付日が平成15年3月31日以前の場合、本登記の登録免許税がなんと1,000円になります。税率ではなく定額です。これは意外なポイントで、知っていると顧客へのアドバイスで差がつきます。

一方、古い贈与予約の仮登記を本登記する場合は税率が16/1000と比較的高くなるため、顧客が費用面で驚かないよう、事前に概算を伝えておくことが顧客満足につながります。登記原因をひと目で確認したい場合は、司法書士への相談が確実です。

なお、令和8年度税制改正により土地の売買に係る登録免許税の軽減措置(措法72条1項)は令和11年(2029年)3月31日まで3年間延長が決定しています。当面は15/1000の軽減税率が継続されることを確認しておきましょう。

参考情報:令和8年度税制改正による登録免許税軽減措置の延長内容(国税庁パンフレット)

登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ(令和6年4月)- 国税庁

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