建築基準法第6条改正で確認申請と不動産取引が変わる

建築基準法第6条の改正で確認申請と不動産取引が変わる

申請が不要だと思っていたリフォームが、実は100万円以下の罰金対象になっていることがあります。

📋 この記事の3つのポイント
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4号特例が縮小・廃止

2025年4月から木造2階建て住宅は「新2号建築物」に再分類され、構造・省エネ審査が義務化。これまで7日だった審査期間が最長35日(実態は平均約39日)に延びています。

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リフォーム時にも確認申請が必要

主要構造部(壁・柱・梁・屋根など)の過半を超える大規模修繕・模様替えには、新2号建築物であれば建築確認申請が新たに義務化。申請なしで工事をすると最大100万円の罰金リスクがあります。

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不動産取引・資産価値への波及

確認申請の厳格化で建築コストと工期が増加し、新築・買取再販の価格上昇が避けられません。再建築不可物件の売却難易度もさらに上昇しており、仲介担当者として正確な知識が問われます。


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建築基準法第6条の改正とは何か:4号特例縮小の全体像

2025年4月1日、建築基準法第6条が改正され、日本の住宅建築に関わるルールが大きく塗り替えられました。この改正の核心は「4号特例の縮小」です。

4号特例とは、建築基準法第6条第1項第4号に規定されていた小規模建築物を対象に、建築士が設計する場合には構造関係規定や省エネ関連の審査を省略できる制度でした。木造2階建て以下・延べ面積500㎡以下・高さ13m以下・軒高9m以下という条件を満たす建物なら、耐震強度や採光計算の審査なしで確認済証を受け取れたのです。

この特例が実質的に廃止(縮小)されました。

改正後の建築物区分は下表のとおりです。

区分 規模要件 特例(審査省略)
1号建築物 特殊建築物で特定用途の床面積合計が200㎡超 なし
新2号建築物 2階建て以上 または 延べ面積200㎡超の建築物 なし(審査省略不可)
新3号建築物 延べ面積200㎡以下の平屋建て あり(従来の4号特例を継承)

つまり、日本の一般住宅の大多数を占める木造2階建て住宅は「新2号建築物」となり、確認申請で構造審査・省エネ審査の両方が必要になったのです。これが原則です。

改正の背景には2つの大きな課題がありました。一つ目は、2016年の熊本地震で4号特例で建てられた住宅の多くが倒壊し、多くの犠牲者が出たという教訓です。二つ目は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて住宅の省エネ性能を底上げする必要があるという政策的要請です。安全と環境の両面から、審査の簡略化を認める制度を縮小する流れは必然でした。

参考リンク(国土交通省による改正建築基準法の公式解説資料)。

国土交通省「改正建築基準法について」(建築物区分の図解入り)

建築基準法第6条改正で変わる確認申請の審査期間と提出図書

改正で最も現場に打撃を与えているのが審査期間の延長です。端的に言えば、確認済証が下りるまでの時間が約5倍になりました。

旧4号建築物の確認審査の法定期間は「7日以内」でしたが、新2号建築物は「35日以内」に変わりました。さらに国土交通省の調査によると、2025年4月の施行直後から申請件数が集中したこともあり、事前審査から確認済証の交付までの実際の平均処理期間は改正前の3〜7日から約39日にまで延びているとのことです(2025年9月末時点)。

工期が1ヶ月以上伸びることになります。

提出書類も大幅に増えています。新2号建築物の確認申請では、これまで省略できていた以下の図書が原則必要となりました。

  • 構造計算書(仕様規定の場合は省略できるケースあり)
  • 構造詳細図(基礎伏図・各階床伏図・小屋伏図・軸組図など)
  • 省エネ関連の設計図書(断熱仕様書・エネルギー計算書など)

ただし、仕様規定のみで構造安全性を確認する建物(多くの小規模木造住宅が該当)については、仕様書に必要事項を明記すれば基礎伏図・小屋伏図・各階床伏図・軸組図などの添付を省略できる合理化措置があります。これは使えそうです。

一点だけ厳守してほしいのは、「添付不要」と「審査不要」は別物だということです。仕様書で省略できるのはあくまで「書類の添付」であり、構造が審査対象から外れるわけではありません。仕様書の記載が不十分であれば、当然図面の提出を求められます。

また、省エネ基準適合については、確認済証の交付日ではなく「着工日」が基準となります。2025年3月までに確認済証を取得していても、着工が4月以降になれば省エネ適合義務の対象です。この点を見落として契約・引渡しスケジュールを組んでしまうと、後から大幅な計画変更を迫られるリスクがあります。

参考リンク(確認申請の審査長期化と実務対応策について)。

日経クロステック「建築確認の審査期間が長期化、AI事前チェックで審査機関の負担軽減」(2025年12月)

建築基準法第6条改正とリフォーム:大規模修繕・模様替えで確認申請が必要になる条件

「新築だけの話でしょ」と思っているなら、要注意です。

今回の改正で最も見落とされやすいのが、大規模の修繕・大規模の模様替えにも建築確認申請が必要になったという点です。改正前は、旧4号建築物では大規模なリフォームでも確認申請は不要でした。改正後、新2号建築物(木造2階建て)ではこれが義務化されました。

「大規模の修繕・模様替え」とは、建築基準法第2条第14・15号の定義に基づき、主要構造部の一種以上について過半(50%超)の改修を行うことです。主要構造部に該当するのは壁・柱・床・梁・屋根・階段の6つです。

具体的にどんな工事が対象になるのか、整理します。

工事の種類 確認申請の要否(新2号建築物)
スケルトンリノベーション(間取り大幅変 ✅ 必要
耐震改修(壁・柱の構造部補強) ✅ 必要
大規模断熱リフォーム(壁・床・天井解体を伴う) ✅ 必要
屋根全体の葺き替え(過半以上) ✅ 必要
キッチン・トイレ・浴室の水回りリフォーム ❌ 不要
手すり設置・引き戸へのバリアフリー改修 ❌ 不要
内装仕上げ・クロス張り替え ❌ 不要

申請が必要な工事を無許可で行うと、建築基準法第99条の規定により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される可能性があります。罰則対象は施工会社だけでなく建築主(施主)も含まれます。

加えて、延べ床面積100㎡超の新2号建築物で大規模修繕・模様替えを行う場合、原則として建築士による設計・工事監理が必要になりました。これまでは建築士の関与が必須でなかったリフォーム案件でも、図面作成と施工監理が義務付けられたのです。厳しいところですね。

なお10㎡を超える増改築を行う場合には、増改築部分について省エネ基準への適合も求められます。断熱材の仕様やサッシの性能を基準以上にしなければ確認済証が交付されません。この点は増改築を伴う物件の買取再販を手掛ける業者にも直接影響するポイントです。

参考リンク(国土交通省による木造戸建の大規模リフォームに関する公式パンフレット)。

国土交通省「建築確認手続きの対象となります 建築士による設計・工事監理が必要です」(PDF)

建築基準法第6条改正が不動産取引に与える影響:価格・工期・再建築不可物件

確認申請ルールの変化は、建築現場だけの話ではありません。不動産取引の実務に直結する影響が複数あります。それぞれ整理していきましょう。

① 建築コストの上昇

構造計算書や省エネ関連図書の作成が義務化されたことで、設計段階の作業量が増加します。構造計算書の作成費用は30〜50万円程度かかることもあるとされ、施主(建築主)が負担するコストが増えます。設計費・申請費の上昇は住宅の販売価格に転嫁されるため、新築一戸建ての価格はさらに上昇傾向をたどることになります。

コストが上がることは確実です。

買取再販ビジネスにも影響が出ています。業者が購入後にリフォームして再販する物件では、大規模リフォームに確認申請費・設計費・建築士費用が上乗せされるため、従来より仕入れ査定額が低く抑えられるケースが増えています。「不動産会社への買取依頼をすると価格が低くなる」という形で、売主側にもコスト増の影響が回ってくるのです。

② 着工・引渡しスケジュールの長期化

法定審査期間が7日から35日に延びた影響で、確認済証の交付まで最短でも1ヶ月以上かかる計算になります。実態として現場では平均39日程度かかっているため、スケジュールには少なくとも45〜60日程度の余裕を持った計画が必要です。引渡し日を売買契約に記載する際、着工可能な時期から逆算して余裕を確保しなければ、後から遅延リスクが生じます。工期の延伸は頭に入れておくべき前提です。

③ 再建築不可物件への直撃

改正前、旧4号建築物に該当していた再建築不可物件は、建築確認申請なしに大規模リフォームを行えるという実情がありました。そのため「確認申請不要=大規模リフォームが自由にできる」という誤解が一部で流通し、再建築不可物件が一定数取引されていました。

改正後、木造2階建ては新2号建築物になるため、大規模修繕・模様替えには確認申請が義務化されます。再建築不可物件は接道義務(建築基準法第43条第1項)を満たしていないため、確認申請が通ることはほぼありません。つまり、大規模リフォームができない物件として明確化されてしまったのです。

再建築不可物件を敬遠する購入者が増えることは必然であり、老朽化した再建築不可物件の売却価格は今後大幅に下がる可能性があります。仲介担当者として再建築不可物件の売却依頼を受けた場合、この点を売主に正確に伝えることが説明義務の観点からも重要になります。

参考リンク(4号特例縮小と不動産売買への影響についての実務解説)。

イエウリ「4号特例の縮小による建築確認申請の義務化とは?不動産売買への影響について解説」

建築基準法第6条改正への実務対応:不動産従事者が今すぐすべきこと【独自視点】

改正の内容を「知っている」レベルで終わらせると、実務で使えません。ここでは、不動産従事者として今すぐ動ける具体的な対応策を整理します。

着工日ベースで経過措置を確認する

改正法が適用されるのは「2025年4月1日以後に着工する建築物」です。確認済証の交付日ではなく着工日が基準です。売買契約の際、「いつ着工するか」を必ず確認するクセをつけることが第一歩です。経過措置の判断を誤ると、当初の計画通りに進まなくなるリスクがあります。

物件種別ごとに確認申請の要否をチェックする

新2号・新3号の区分は階数と延べ面積で決まります。2階建て以上または延べ面積200㎡超ならば新2号です。平屋200㎡以下ならば新3号として従来の特例が継続されます。手がける物件がどちらに該当するかを、面積と階数から即座に判断できるようにしておきましょう。これが基本です。

リフォーム案件では「大規模かどうか」を設計士と一緒に確認する

確認申請が必要なリフォームかどうかは、「主要構造部の過半を超えているかどうか」で決まります。見た目の工事規模だけで判断せず、担当の設計士や施工業者と連携して工事の範囲を確認することが必要です。申請をするかどうかの最終判断は設計士が行いますが、不動産担当者として「申請が必要かどうかを聞く姿勢」を持つだけで、後のトラブルを大きく減らせます。

買取再販案件では事前にコストと工期の試算を行う

大規模リフォームを伴う買取再販物件では、確認申請費・設計士費用・追加工期コストを含めた収支試算が不可欠です。改正前の試算モデルをそのまま使い続けると、収益が大幅に圧迫されることになります。リフォーム会社・設計事務所と早期に情報共有し、費用と期間の見通しを固めてから仕入れ判断をする流れに切り替えましょう。

省エネ性能が物件価値に直結する時代への備え

2025年4月以降に建てられた建築物はすべて省エネ基準適合が義務化されています。今後は省エネ性能が物件の資産価値に影響する時代が本格的に始まります。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や長期優良住宅の認定物件は付加価値として訴求しやすくなり、旧来の低断熱住宅との差別化がより鮮明になっていくでしょう。省エネ性能は今後の物件説明で欠かせない項目になります。

建築基準法の改正は、一度理解してしまえば実務への組み込みはそれほど難しくありません。変化のタイミングで正しい知識を持っている不動産従事者が、取引の信頼性を高め、顧客にとっての安心感を提供できます。

参考リンク(改正建築物省エネ法のFAQ・実務対応の公式情報)。

国土交通省「改正建築物省エネ法オンライン講座 よくある質問(建築基準法関係)」