権利義務承継と媒介契約と専任媒介

権利義務 承継 媒介契約

権利義務承継×媒介契約の要点
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承継は「当事者が変わる」イベント

相続・法人化・事業譲渡などで依頼者や媒介業者が入れ替わると、媒介契約の有効性、報告義務、レインズ登録、報酬発生の前提を再点検する必要があります。

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「契約上の地位」と「個別の権利義務」は別物

契約書の当事者の地位を丸ごと移すのか、報酬請求権など一部だけを動かすのかで、必要な同意・説明・書面化が変わります。

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トラブルの多くは「説明と記録不足」

媒介業者には調査説明義務が重く、承継時は本人確認・意思確認・権利関係の再確認が抜けやすい局面です。記録と手順で事故を防ぎます。

権利義務承継における媒介契約の成立と書面交付

媒介契約は「依頼者(売主・買主等)と宅建業者の間で、売買等の成立に向けて尽力する」ための土台で、成立後は所定事項を記載した媒介契約書を交付する運用が前提になります。

承継が起きた瞬間に重要なのは、媒介契約が“物件に付いて回る”のではなく、“当事者の合意に付いている”点です。したがって、依頼者が相続で変わった、法人へ移した、事業譲渡で窓口が変わった、という場面では「契約当事者が誰か」を確定し直さないと、以後の報告や交渉の正当性が揺らぎます。

実務で見落としがちなのは、媒介契約の承継を急ぐあまり「旧依頼者の署名押印の媒介契約書だけが残り、現依頼者の意思確認・再交付が未了」という状態で販売活動が先行することです。承継後に依頼者が「そんな条件では頼んでいない」と主張すると、報酬や損害賠償以前に、媒介行為自体の説明責任・記録の弱さが問題化します。

承継を機に、次を最低限“棚卸し”してください(箇条書き・入れ子なし)。

・依頼者名義(相続人代表、法人名、代表者、代理権の根拠)

・媒介の範囲(どこまでが媒介業務で、どこからが別途業務か)

参考)https://jws.rivierapublishing.id/index.php/jws/article/download/626/1297

・媒介価額や価格査定の前提が変わっていないか(遺産分割や税務都合で希望条件が変わることがある)

・交付済み書面の保存先(後日の紛争で“証拠”になる)​

参考:媒介契約書・重要事項説明・報酬上限など、取引全体の実務整理(令和6年度版)

不動産適正取引推進機構「不動産売買の手引(令和6年度版)」

権利義務承継と一般媒介契約と専任媒介

媒介契約は大きく「一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約」に分かれ、他業者への重ね依頼可否、報告頻度、レインズ登録義務などの“運用ルール”が変わります。

一般媒介契約は、他社併用ができ、さらに「明示型/非明示型」があり、標準書式を使うと原則として明示が前提になるため、承継後に依頼者が増えた(相続人が複数)局面ほど、併用状況の整理が効いてきます。

専任媒介・専属専任媒介では、有効期間(3か月上限)や報告義務(2週間に1回以上、1週間に1回以上)が法令ベースで固く、承継で“依頼者側の担当者が交代”しただけでも、報告先の誤りがクレーム化しやすいのが現場感です。

承継局面の典型パターン別に、注意点をまとめます(絵文字つき)。

・👤相続で依頼者が複数に:窓口(代表相続人等)を明確化し、報告義務の履行先を一本化しないと「聞いてない」紛争が起きやすい。zenodo+1​

・🏢個人→法人へ名義移転:意思決定者が代表者か担当者かを誤ると、媒介価額変更や条件変更の合意の有効性が揺らぐ。

・🔁専任→一般へ切替:承継をきっかけに「囲い込みを避けたい」「親族が別ルートで動いている」など方針転換が起きるため、契約類型の見直しを“提案事項”として持っておく。

参考)https://zenodo.org/records/13840115/files/51.pdf

参考:一般媒介契約の明示型/非明示型、他業者への重ね依頼の取扱い

全日本不動産協会「一般媒介契約について」

権利義務承継と媒介業者の調査説明義務

承継が絡むと、取引の前提が“静かに”変わるため、媒介業者の調査説明義務が一段重く感じられます。媒介業者は、公正安全な取引成立に向け、当事者確認(本人か、代理権はあるか、意思は真意か)、物件の権利関係、法令制限、取引条件の確定を行うべきだと整理されています。

見落とされがちな意外なポイントは、「依頼者が物件を特定して買受け(または売却)を依頼してきた場合でも、媒介業者の説明義務が当然に免れるわけではない」という整理です。承継直後は“前から決まっていた話”として処理が雑になりやすく、ここが事故の入口になります。

さらに、法令が多すぎて調査できないという抗弁は通りにくい、という方向感も示されており、承継で用途や利用目的が変わった(例:相続人が「収益化したい」「建替えしたい」)なら、目的適合性の再確認を怠らないことが実務防衛になります。

承継時に“調査説明の抜け”が出やすい箇所(チェック用)

・本人確認:相続人の確定、遺産分割協議の進捗、代理人の委任状・権限範囲

参考)https://ejournal.stih-awanglong.ac.id/index.php/csj/article/download/1131/658

・意思確認:共有者の売却意思の一致(途中で反対が出ると止まる)

・権利関係:登記名義の移転未了、担保権の追加設定、差押え等の変動

・取引条件:買換え特約など、目的(資金計画)に直結する特約の再設計ejournal.stih-awanglong+1​

参考:媒介業者の調査説明義務を判例ベースで分類整理(実務の地雷が分かる)

不動産適正取引推進機構「媒介業者の調査説明に関する判例について」

権利義務承継とレインズ登録と報告義務

承継が起きたとき、現場で最初に崩れがちなのが「報告の相手」と「登録・活動の根拠」です。専任媒介(専属専任を含む)では、指定流通機構(レインズ)への登録義務があり、登録後は登録を証する書面の交付が求められる運用が整理されています。

報告義務も、専任媒介は2週間に1回以上、専属専任媒介は1週間に1回以上という頻度が示されており、依頼者の承継で連絡先が変わっただけでも「報告未了」と扱われるリスクがあります。

また、一般媒介ではレインズ登録義務はない一方、任意登録は可能なので、承継で売却方針が変わった(早期成約を優先、情報拡散を優先等)なら、一般媒介+任意登録という設計も選択肢になります。

承継が起きたら、運用を“機械的に”次の順で整えると事故が減ります。

  1. 依頼者の確定(代表窓口、連絡先、本人確認資料)
  2. 媒介契約書の差替え/再交付(更新・解除条項、有効期間、報酬)​
  3. レインズ登録情報・登録証明書の再確認(専任系)​
  4. 報告テンプレの宛先更新(送付証跡が残る方法に寄せる)​
  5. 「申込みがあった際の報告」など、報告イベントの定義を社内で統一(担当者交代時に漏れやすい)​

権利義務承継の独自視点:媒介契約の「承継できない業務」を切り分ける

承継を“契約の引継ぎ”として一括処理すると、意外に揉めるのが「媒介以外の周辺業務」です。媒介業務の一般的範囲は、売却なら物件調査・価格査定・相手方探索・交渉・契約締結と書面交付・決済引渡し等と整理されますが、実際はここから外れる業務(追加調査、境界確定の段取り、相続人調整の同席など)が発生します。

承継後の依頼者は、前任者が口頭で頼んでいた周辺業務まで「当然にやってくれる」と思いがちですが、媒介契約の中に入っていないなら、別途の合意(費用負担・範囲・成果物)として切り分けないと、後で“無料サービスの期待”がクレームになります。

独自の実務テクとしては、承継発生時に「媒介契約の再確認チェックシート」を必ず差し込み、追加業務が出る案件は“別紙の業務範囲メモ(1枚)”をその場で合意しておくことです。これだけで、承継後の認識ズレ(誰が、いつまでに、何をするか)が大幅に減ります。

すぐ使える「別紙メモ」例(コピペ運用向け)

・📌対象:境界確認、測量、インスペクション、相続関係説明の同席

・📌成果物:資料一式(PDF/紙)、メール報告、議事メモ

・📌費用:実費の有無、誰が支払うか、立替の可否

・📌期限:売出開始日、申込期限、決済目標日

・📌責任分界:法令調査・登記は誰が何を確認するか(司法書士・土地家屋調査士との役割分担)​