建設性能評価書とは・取得から活用までの基礎知識
建設性能評価書を取得していれば、住宅性能は完全に保証されると思っていませんか? 実は評価書があっても、施工後の検査で等級が下がるケースが約1割存在します。
建設性能評価書とは何か・設計性能評価書との根本的な違い
建設性能評価書とは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づいて、登録住宅性能評価機関が実際に建設された住宅を検査し、その性能を等級で示した公的な書類です。つまり「建てた後の現物確認」を経て交付される点が最大の特徴です。
一方でよく混同されるのが「設計住宅性能評価書」です。これは建設工事着手前に設計図書をもとに評価するもので、あくまで「設計上の性能を示す」にとどまります。設計評価書だけでは完成した住宅の性能を保証したことにはなりません。
建設性能評価書は、設計評価書を取得したうえで、さらに施工中・完成後の現場検査を経なければ取得できません。両者はセットで取得されることが多く、不動産取引の現場では「建設性能評価書=最終的なお墨付き」として扱われます。これが基本です。
評価される性能は全部で10分野あり、「構造の安定(耐震等級)」「劣化の軽減」「維持管理・更新への配慮」「温熱環境・エネルギー消費量」「空気環境」「光・視環境」「音環境」「高齢者等への配慮(バリアフリー等級)」「防犯」「火災時の安全」が対象です。これら全分野を一括して評価・証明できるのは品確法に基づく性能評価制度だけです。
宅建業者として覚えておくべきは、「建設性能評価書は任意取得」という点です。法律上の義務はありません。しかし取得することで売主側には大きなメリットが生じ、買主にとっても安心材料になる制度です。
参考:住宅性能評価制度の概要(国土交通省)
建設性能評価書の取得費用と審査期間の実態
取得費用は住宅の規模・評価機関・申請する評価項目の数によって変わります。一般的な戸建住宅(延床面積100〜150㎡程度)の場合、設計住宅性能評価と建設住宅性能評価を両方取得すると合計で10万〜20万円前後が目安です。マンション1棟では戸数に比例して増加し、1棟全体では数百万円規模になることもあります。
審査期間については、申請書類が整っている場合でも設計評価から建設評価完了まで通常2〜4ヶ月程度かかります。期間の大部分は施工中の現場検査スケジュールの調整に費やされます。着工前に評価機関との打ち合わせを済ませておかないと、検査日程の確保が遅れて引渡し時期にも影響します。これは痛いですね。
現場検査は原則として4回実施されます。①基礎配筋工事完了時、②躯体工事完了時(中間検査)、③断熱工事完了時、④竣工時(完了検査)というフローです。この4回すべてを通過して初めて建設性能評価書が交付されます。1回でも検査を受け忘れると評価書の取得自体が不可能になるため、施工スケジュールと連動した管理が必須です。
評価機関は全国に複数あり、代表的なところでは「一般財団法人住宅保証機構」「株式会社日本住宅保証検査機構(JIO)」「ハウスプラス住宅保証株式会社」などがあります。機関によって費用や対応スピードが異なるため、施工会社と協議のうえ選定することをおすすめします。評価機関選びが条件です。
参考:登録住宅性能評価機関一覧(国土交通省)
建設性能評価書と住宅ローン・フラット35への影響
建設性能評価書を取得することで、住宅ローンにおける直接的な優遇が受けられる場面があります。代表的なのが「フラット35S」の適用です。フラット35Sとは住宅金融支援機構が提供する長期固定金利型住宅ローンの優遇プランで、一定の性能基準を満たした住宅に対して通常のフラット35より金利が低く設定されます。
フラット35S(金利Aプラン)では、耐震等級2以上または免震建築物であることが条件のひとつです。建設性能評価書でその等級が証明されることで、金利優遇の申請手続きがスムーズになります。具体的には当初10年間、年0.25%の金利引下げが適用されるプランがあり、3,000万円の借入で30年返済の場合、利息総額の差は100万円を超えることもあります。これは使えそうです。
民間銀行ローンでも、建設性能評価書や長期優良住宅認定書などの添付を求めるケースが増えています。評価書があることで審査がスムーズになり、場合によっては金利優遇・保証料の削減につながることもあります。買主への説明時に「評価書取得済み=ローン優遇あり」という情報提供が差別化ポイントになります。
また、地震保険料の割引制度とも連動しています。耐震等級3であれば地震保険料が最大50%割引になります。この割引を受けるには「耐震等級3相当」ではなく、評価書による「耐震等級3」の証明が必要です。設計段階の自社計算では認められないケースがあるため注意が必要です。つまり公的な評価書の取得が条件です。
参考:フラット35S 技術基準(住宅金融支援機構)
建設性能評価書と重要事項説明・宅建業法上の取り扱い
宅建業者として最も注意すべきは、建設性能評価書が交付されている物件を取引する際の重要事項説明義務です。宅地建物取引業法施行規則第16条の2の規定により、住宅性能評価書(設計・建設双方)が交付されている新築住宅の売買においては、重要事項説明書にその旨を記載する義務があります。記載漏れは宅建業法違反となり、最悪の場合、業務停止処分の対象になります。
評価書の内容(各性能等級)についても、買主から質問があった場合には正確に説明できなければなりません。単に「評価書があります」と伝えるだけでは不十分で、「耐震等級〇」「断熱等性能等級〇」といった具体的な等級を把握したうえで説明することが求められます。これが原則です。
中古住宅の取引では少し状況が変わります。既存住宅については「既存住宅性能評価書」という別制度が用意されており、新築時の建設性能評価書とは性能基準の評価方法が一部異なります。新築時の評価書が手元にあったとしても、それがそのまま中古売買での性能証明になるわけではない点は、取引当事者に正確に伝えることが大切です。
また、評価書がない物件を「性能が高い」と説明した場合、不当表示として問題になるリスクがあります。口頭での性能説明は根拠書類なしには禁物です。評価書の有無・内容・等級の3点セットで確認する習慣を持つことが、宅建業者としてのリスク管理になります。
参考:宅地建物取引業法における住宅性能評価書の記載義務(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/001080650.pdf
建設性能評価書を活用した物件訴求の独自戦略
建設性能評価書は「取得して終わり」ではありません。宅建事業従事者として、この書類をどう営業・集客に活かすかが実務上の差別化につながります。意外に活用されていない視点です。
まず効果的なのが「等級の視覚化」です。評価書に記載された各性能等級(耐震・断熱・維持管理等)を図解や一覧表にまとめ、物件チラシやウェブ広告に掲載することで、競合物件との差別化が明確になります。数字が並ぶ評価書をそのまま渡しても買主には伝わりません。「耐震等級3=阪神淡路大震災クラスの1.5倍の力でも倒壊しない」など、生活イメージに落とし込む説明が有効です。頭に絵が浮かぶ説明が求められます。
次に「維持費の試算提示」です。断熱等性能等級が高い住宅は、年間の冷暖房費が大幅に削減できます。国土交通省の試算では、省エネ基準適合住宅と非適合住宅の冷暖房費差は年間で最大約3〜5万円になることがあります。30年で換算すると90万〜150万円の差になります。この数字を物件説明に盛り込むことで、評価書取得コストに対する費用対効果を買主が自然に理解できます。
さらに見落とされがちな視点が「瑕疵担保責任との連動」です。品確法において、建設性能評価書を取得した住宅を対象に紛争が発生した場合、指定住宅紛争処理機関(建築士会連合会)に申請手数料1万円で紛争処理を申請できます。この低コストの紛争解決手段は買主にとっても大きな安心材料であり、説明時に加えるだけで評価書の価値が一段上がります。これは使える情報ですね。
評価書を持つ物件の営業では「安心の根拠を数字で示せる物件」というポジショニングが最も有効です。感覚的な安心訴求から数値的根拠のある訴求へ切り替えることで、成約率・顧客満足度の双方に効果が出ます。
参考:住宅に関する紛争処理体制(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000022.html

日本法令 契約書作成・管理システムHOREI SIGN工事請負契約書セット 建設20-D みらい総合法律事務所 弁護士 水村元晴 監修
