既存住宅状況調査技術者の難易度と合格率の実態

既存住宅状況調査技術者の難易度と合格率の実態

合格率65%でも「建築士なら余裕」と油断した人の3人に1人が初回不合格になっています。

🏠 この記事のポイント3選
📋

受講資格は建築士のみ

一級・二級・木造建築士のいずれかが必須。資格なしでは講習自体を受けられません。

📊

合格率は約65%

講習修了考査の合格率は65%程度。建築士資格保有者でも3人に1人は不合格になる水準です。

⚖️

宅建業法上の義務と直結

2018年4月施行の改正宅建業法により、建物状況調査の実施可否の説明が義務化。不動産業者も無関係ではありません。

既存住宅状況調査技術者とは何か:資格の概要と法的背景

既存住宅状況調査技術者とは、国土交通省が定める講習を修了した建築士が取得できる資格です。正式には「既存住宅状況調査技術者講習制度」に基づくもので、2018年4月施行の改正宅地建物取引業法によって、その重要性が一気に高まりました。

改正宅建業法では、中古住宅の売買仲介時に「建物状況調査インスペクション)の実施可否」を売主・買主の双方に説明することが義務づけられました。この調査を実施できるのは、既存住宅状況調査技術者の資格を持つ者のみです。これが原則です。

注意すべき点があります。以前から存在していた「既存住宅現況検査技術者(民間資格)」では、法律上の「建物状況調査」を実施することができません。似た名前ですが、法的根拠がまったく異なります。不動産業に携わる方であれば、この違いは必ず押さえておきましょう。

調査の対象は、基礎・外壁・屋根・壁・床・天井・小屋裏・床下など、住宅の構造耐力上主要な部分と雨水浸入を防ぐ部分です。目視と計測を中心に、劣化やひび割れ、雨漏りの有無を確認します。つまり「見て・測って・報告書を書く」が基本業務です。

国土交通省:既存住宅状況調査技術者講習制度について(公式)

既存住宅状況調査技術者の難易度:合格率65%の本当の意味

合格率65%という数字だけを見ると「そこまで難しくない」と感じる方が多いです。しかし、この母数は「すでに建築士資格を持つ専門家」であることを忘れてはいけません。建築の知識を持つプロが受験して35%が落ちる。それが実態です。

修了考査(試験)の内容は、講習テキストから出題されます。講習は通常1日(オンライン含む)で行われ、主に以下の内容で構成されます。

  • 🏗️ 既存住宅状況調査の概要・役割(約60分)
  • 📐 調査内容・調査範囲・耐震性書類確認(約60分)
  • 🔧 調査方法基準・報告書記入方法・瑕疵事例(約120分)

講習を1日聞いただけで「大丈夫だろう」と試験に臨むのはリスクがあります。専門用語や調査方法基準の細かい規定が出題されるため、事前の予習が合否を左右します。厳しいところですね。

特に不動産業従事者にとって注意が必要なのは、建築知識の有無です。一級建築士と木造建築士では、日常的に扱う構造や工法が異なります。RC造(鉄筋コンクリート)の調査基準など、普段なじみのない分野が出題されると、合格率は一気に下がります。

日本木造住宅産業協会:既存住宅状況調査技術者講習の詳細カリキュラム

既存住宅状況調査技術者の受講資格と登録要件:見落としやすい2つの条件

この資格を取得するには、2段階の条件をクリアする必要があります。1つ目が「建築士であること」、2つ目が「建築士事務所に所属していること」です。見落とされやすいのが2つ目の条件です。

建築士の資格を持っていても、建築士事務所に所属していない場合は、既存住宅状況調査技術者として登録・業務ができません。これは大事な条件です。不動産業者に所属する建築士でも、その会社が建築士事務所登録をしていなければ、資格を活かした業務ができない点は見落とされがちです。

建築士の種類 対応可能な建物 制限
一級建築士 すべての建物 制限なし
二級建築士 木造・小規模建築物中心 大規模RC造等は対応範囲外
木造建築士 木造のみ 対応範囲が最も狭い

二級建築士や木造建築士で登録した場合、調査依頼があってもその建物が自分の対応範囲外であれば断るしかありません。これは業務機会の損失に直結します。不動産業者が社内のスタッフに取得させる際は、一級建築士かどうかを事前に確認するのが賢明です。

住宅保証機構:既存住宅状況調査技術者講習(受講申込・要件確認)

既存住宅状況調査技術者の難易度を上げる「更新制度」の落とし穴

この資格には有効期限があります。登録後は5年ごとに更新講習を受ける必要があります。更新を忘れると資格が失効し、法律上の「建物状況調査」が実施できなくなります。

更新を忘れた状態で調査を行った場合、その調査結果は法律上の「建物状況調査」として認められません。重要事項説明書に虚偽の記載をすることになりかねず、宅建業法違反のリスクが生じます。これは見落とすと大きな法的リスクです。

実務の中でうっかり更新期限を過ぎてしまうケースは少なくありません。特に多忙な不動産会社の建築士スタッフは要注意です。カレンダーへのリマインド登録や、社内での資格管理リスト作成など、組織的な管理の仕組みを作っておくことを強くお勧めします。

また、更新講習でも修了考査があります。「更新だから簡単」という認識は禁物です。内容は新規講習と同様、調査方法基準の理解度を問う問題が出題されます。更新講習も事前準備が必要です。

不動産業従事者が知っておくべき独自視点:資格取得後に稼げない人の共通パターン

既存住宅状況調査技術者の資格を取っても、業務依頼がほとんど来ずに新せず廃業する人が非常に多いという現実があります。資格の難易度よりも、「取得後のビジネス設計」の方が実は高いハードルです。

稼げない人には共通のパターンがあります。

  • 📌 資格を取っただけで集客施策を何もしていない
  • 📌 不動産仲介会社との連携ルートを持っていない
  • 📌 調査報告書の品質が低く、リピート依頼につながらない
  • 📌 調査料金の相場(1件あたり3万〜5万円程度)を知らず、安売りしすぎている

調査報告書の作成能力は、現地調査と同等かそれ以上に重要です。買主にとって報告書は「購入判断の根拠」になるため、内容が不明瞭であれば信頼を失います。これが原則です。

不動産仲介会社との連携という観点では、宅建業者として働く方が既存住宅状況調査技術者の資格を持つ建築士と業務提携する形も現実的です。改正宅建業法の施行後、仲介業者がインスペクターを紹介するケースが増えており、この連携ネットワークに入っているかどうかが、調査依頼数を大きく左右します。

全日本ハウスインスペクター協会などの業界団体に加入し、案件紹介ルートを確保することも一つの選択肢です。

一般社団法人全日本ハウスインスペクター協会:既存住宅状況調査の詳細と業務活用法