公正競争規約と不動産広告と基準
公正競争規約の目的と事業者の責務(不動産広告)
不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)は、景品表示法にもとづき、不当な顧客誘引を防ぎ、消費者の合理的な選択と事業者間の公正な競争を確保することを目的に定められています。
ここで重要なのは「単に法律に違反しない」ではなく、広告表示が社会的に与える影響を踏まえて、事業者が規約を遵守し、より適正な広告に努める責務が明記されている点です。
また広告制作を受託する広告会社等にも、規約の趣旨に沿った制作努力義務が置かれており、制作工程まで含めて“広告品質管理の責任範囲”が広く設計されています。
実務での使い方としては、社内の広告審査ルール(チェックシート)を「宅建業法だけ」ではなく、表示規約の条文・施行規則の数値基準・禁止類型まで落とし込み、制作・入稿・公開後修正の運用フローをセットで整えるのが安全です。
特にインターネット広告は、規約上「広告表示」に含まれることが明示されているため、紙媒体と同じ発想で“あとで直せばよい”という運用をすると、更新遅延が違反リスクになり得ます。
不動産広告は「出した瞬間」だけでなく、「出し続ける間」も監督対象になる、という感覚が現場では大切です。
規約本文(表示規約・施行規則・おとり広告ガイドライン等)を確認したい場合(全体像の一次情報)。
公正競争規約の表示基準:徒歩所要時間と道路距離(不動産広告)
不動産広告でトラブルになりやすいのが「所要時間」の表示で、規約の施行規則では徒歩所要時間を“道路距離80メートルにつき1分”で算出し、1分未満の端数は切り上げて1分とする基準が定められています。
さらに、道路距離や所要時間を算出する際の起点は、区画なら駅等に最も近い地点、マンション・アパートなら建物の出入口とし、着点は施設の出入口(利用時間内に常時利用できるもの)とする、と起点・着点まで指定されています。
つまり「駅徒歩〇分」を作るときは、地図アプリの最短経路を“なんとなく”採用するのではなく、規約の起点・着点の考え方に合わせて距離を測ってから分換算する必要があります。
分譲地・分譲マンションなどの「団地」(一団の宅地・建物)では、最も近い区画(出入口)だけでなく、最も遠い区画(出入口)を起点に算出した距離/時間も表示するルールがあり、近い住戸だけで利便性を強調する設計を抑止しています。
これを落とすと、たとえば「駅徒歩2分」だけが一人歩きして、実際に遠い区画では「徒歩5分」だった、という齟齬が生まれやすく、クレーム・指摘の導火線になります。
広告制作側は、物件情報(住戸位置)と広告表示(所要時間レンジ)が連動するよう、データ項目を“最短/最長”で持つ設計にしておくと、運用で事故が減ります。
電車・バス等の所要時間表示についても、朝の通勤ラッシュ時の所要時間を明示し、乗換えがある場合はその旨を明示し、所要時間に乗換えに概ね要する時間を含めるなど、単なる「〇分」では済まない条件が設定されています。
また特急・急行など種別を明示する必要があり、速達列車の時間だけを“普通列車のように”見せる表示は不適切になり得ます。
地味ですが、これらは物件ポータルのテンプレ入力に隠れて見落とされやすいので、入力画面の項目設計(種別、通勤時/平常時、乗換え含む)を見直すと、違反予防の効果が高いです。
公正競争規約の必要な表示事項と取引態様(不動産広告)
表示規約では、物件広告を出す際に表示すべき「必要な表示事項」を定め、広告主に関する事項、所在地・規模など物件内容、価格など取引条件、交通・環境など利便、その他規則事項を、見やすい場所に明瞭に表示することを求めています。
とくに実務で落ちやすいのが「取引態様」で、施行規則では「売主」「貸主」「代理」「媒介(仲介)」の別を、これらの用語を用いて表示するルールになっています。
“仲介なのに売主っぽく見える”表現は、顧客の誤認(責任主体の誤解)を招きやすく、広告の信用を一気に落とすので、最初に固定表示として設計するのが定石です。
また、広告開始時期にも制限があり、造成・建築工事の完了前は、宅建業法33条の許可等の処分があった後でなければ広告表示をしてはならない、という枠が規約側にも置かれています。
「SNSで軽く告知」「LPだけ先出し」など、媒体を変えた“先行露出”も、規約上はインターネット広告として広告表示に入り得るため、社内で“広告開始OKの判定条件”を一元管理することが重要です。
予告広告の扱いも規約・施行規則で整理されており、本広告前にどこまで省略できるか、取引開始前に本広告をどう行うか、予告広告で必ず表示すべき事項は何か、という運用要件が定められています。
意外に効くチェック観点として、「見やすい大きさの文字」が原則7ポイント以上とされている点があります。
Webではポイント指定が馴染まない一方、極端に小さい注記で“書いたことにする”発想は規約の趣旨に反するため、重要事項・例外条件(例:予定、未定、条件付き)ほど視認性を確保する、という設計思想に立ち返ると整合しやすいです。
公正競争規約の不当表示:おとり広告と二重価格(不動産広告)
表示規約は、不当表示の典型として「おとり広告」を明確に禁止し、①物件が存在しない、②物件は存在するが実際には取引対象となり得ない、③物件は存在するが実際には取引する意思がない、という3類型を掲げています。
この定義は、現場でありがちな「もう申込入ったけど掲載継続」「成約済みだが集客用に残す」「条件が変わったのに表示更新しない」といった運用ミスにも直結しやすく、運用設計が甘いと“意図せずおとり”になります。
さらに規約は、継続広告で表示内容に変更があった場合は速やかに修正または取りやめること、取引の変更・延期・中止があった場合も速やかに公示することを定めており、更新遅延そのものがリスクになります。
もう一つ、指摘が多いのが二重価格表示です。
規約本文では、実売価格に比較対照価格を併記するなどの二重価格表示について、事実に相違する表示や有利誤認を招く表示を禁止し、施行規則では「過去の販売価格」を比較対照価格にする場合の要件(公表日・値下げ日、値下げ前2か月以上の実販売、値下げ後6か月以内等)を満たさなければ不当表示になり得る枠を置いています。
値下げ訴求は集客効果が高い反面、根拠資料の保存(いつ、いくらで、どの媒体で、どれだけの期間販売していたか)がないと説明できないため、広告チームと販売管理(価格履歴)の連携が“法務”ではなく“システム”の問題になります。
また「最高」「激安」「当社だけ」「業界一」などの最上級・著しく安い印象・優位性を示す用語は、合理的根拠資料を現に有していない限り使用できない、とする使用基準が定められています。
この種のキャッチコピーは、制作現場ではテンプレ化しがちですが、根拠を示せないなら“使わない”が最も安いコンプラです。
コピーを作るなら、優良誤認を避けつつも魅力を伝えるために、数値や条件(例:対象住戸、期間、限定条件)を明示して、誤認余地を潰す設計が有効です。
公正競争規約の違反措置と現場運用チェック(不動産広告)【独自視点】
表示規約では、協議会が違反を認めた場合、違反行為排除の措置をとるべきこと等を警告でき、また50万円以下の違約金を課すことができる、と定めています。
さらに警告に反して是正しない場合などには、500万円以下の違約金、資格停止、除名処分、消費者庁長官への措置要請まで可能とされており、“自主規制だから軽い”とは言い切れない設計です。
違反の影響が大きい場合には、違反事業者名、違反行為の概要、措置内容を公表できることも定められており、金銭以上にレピュテーションリスクが強く効きます。
ここからは検索上位の一般解説では薄くなりがちな、現場向けの独自視点として「違反を出さない広告運用の最小セット」を提案します。
単発の“校正チェック”だけでは、インターネット広告のように更新が頻繁な媒体で事故が再発しやすいため、運用を部品化して再現性を上げるのがポイントです。
おすすめの運用チェック(入れ子にしない箇条書き)
- ✅ 物件ステータス連動:申込・成約・募集停止が発生したら、掲載停止(取り下げ)までをSLA(例:当日中)で定義する(継続広告の修正義務に対応)。
- ✅ 所要時間の根拠保存:徒歩分数は「道路距離(m)→80m/分→端数切上げ」の計算ログを残す(起点・着点の説明もセット)。
- ✅ 団地の最短/最長:分譲は“最短だけ”にならないよう、レンジ(例:2〜5分)を自動生成できるデータ設計にする。
- ✅ キャッチコピー審査:最上級・著しく安い印象・優位性の語は、根拠資料がない限り禁止ワードとして扱う(使用基準の趣旨に対応)。
- ✅ 二重価格の台帳化:値下げ訴求をするなら、公表日・値下げ日・販売実績期間が追える価格履歴を“広告用に”出せるようにする。
意外な盲点として、物件写真・CGの扱いにも基準があり、取引するものを表示するのが原則で、事情があって他の建物写真を用いる場合は一定条件と明示が必要、と整理されています。
「完成前だからイメージ」自体は可能でも、どこがイメージで、何が実物と異なる可能性があるのかを明示しないと誤認につながり、結果として不当表示の温床になります。
広告は“売るための表現”であるほど、ルール上は「誤認の余地がない設計」に近づける必要があり、その調整力が不動産実務の広告品質を分けます。

