公正証書遺言の費用と公証役場での手続き完全ガイド

公正証書遺言の費用と公証役場での手続きを徹底解説

不動産が絡む遺言の場合、費用が想定より30〜50%増しになることがあります。

📋 この記事の3つのポイント
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費用の基本構造を把握する

公証役場の手数料は財産の価額によって異なり、不動産評価額が高いほど費用が上がる仕組みです。

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手続きの流れと必要書類

事前準備から公証役場での署名・押印まで、スムーズに進めるための手順を解説します。

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不動産業従事者が見落としやすいポイント

不動産の固定資産税評価額の計上ミスや相続人の数による追加費用など、現場で起きやすいトラブルを紹介します。

公正証書遺言の費用:公証役場の手数料体系とは

 

公正証書遺言を作成する際、公証役場に支払う手数料は「法律で定められた基準」に基づいています。これは法律で定められているものなのでどこの公証役場でも同じです。費用は「遺産の価額」に応じて段階的に決まります。

具体的な手数料の目安は以下のとおりです。

  • 財産価額100万円以下:5,000円
  • 財産価額100万円超〜200万円以下:7,000円
  • 財産価額200万円超〜500万円以下:11,000円
  • 財産価額500万円超〜1,000万円以下:17,000円
  • 財産価額1,000万円超〜3,000万円以下:23,000円
  • 財産価額3,000万円超〜5,000万円以下:29,000円
  • 財産価額5,000万円超〜1億円以下:43,000円
  • 財産価額1億円超〜3億円以下:43,000円+5,000万円ごとに13,000円加算

不動産が遺産に含まれる場合、固定資産税評価額を基準に財産価額を計算します。つまり不動産評価額が基本です。

注意点として、遺産の受け取り人(受遺者)が複数いる場合は、各人への財産価額ごとに手数料を計算し合算します。たとえば子ども3人に財産を分ける場合、3人分それぞれ計算して足すことになります。これは見落とされがちな加算ルールです。

また、全財産の価額が1億円未満の場合は「遺言加算」として11,000円が別途加わります。痛いですね。このため、「思ったより高かった」と感じる方が後を絶ちません。

参考:公証役場の手数料は法務省令「公証人手数料令」で定められています。

法務省:遺言に関する情報(公正証書遺言)

公正証書遺言の作成費用:不動産評価が費用を左右する理由

不動産業に携わっていると、依頼者から「遺言の費用ってどのくらい?」と聞かれる場面があります。ここで大事なのが、不動産の評価額の扱いです。

公正証書遺言の費用計算に使う不動産評価額は、市場価格ではなく固定資産税評価額です。これが原則です。

固定資産税評価額は一般的に時価の60〜70%程度とされています。たとえば市場価格5,000万円の不動産であれば、固定資産税評価額はおよそ3,000〜3,500万円になることが多いです。このため「市場価格で計算したらもっと高い手数料になるのでは?」という誤解が生じやすいです。

一方で、不動産が複数ある場合や、土地と建物を別々に計上する場合は評価額の合算が必要です。どういうことでしょうか? たとえば土地2,000万円・建物1,000万円のケースでは、合計3,000万円として計算します。この計算ミスは実務でも起きやすいので注意が必要です。

さらに、相続人ではなく第三者(法人を含む)に不動産を遺贈する場合、相続税の2割加算と同様に「遺贈加算」が影響することもあります。この点は専門家への確認が不可欠です。

公証役場での公正証書遺言の手続きの流れと必要書類

実際に公証役場で公正証書遺言を作成するまでには、いくつかの準備が必要です。手順を整理すると以下の流れになります。

  1. 遺言内容を整理し、公証役場に事前相談または予約を入れる
  2. 必要書類を収集する
  3. 公証役場に原案を提出し、公証人と内容を確認・調整する
  4. 証人2人と共に署名・押印して完成
  5. 正本と謄本を受け取る(原本は公証役場が保管)

必要書類はこれが基本です。

  • 遺言者の印鑑証明書(発行から3か月以内)
  • 相続人の戸籍謄本
  • 不動産の登記事項証明書
  • 固定資産税評価証明書(最新年度のもの)
  • 証人2人分の氏名・住所・生年月日・職業のメモ

証人は遺言者の推定相続人・受遺者・その配偶者や直系血族はなれません。これは見落とされがちな制限です。不動産業者の担当者が証人を引き受けるケースがありますが、利害関係がないかを必ず確認する必要があります。

また、公証役場への出向が難しい場合は、公証人に出張してもらうことも可能です。ただし出張手数料として通常の1.5倍+日当(4時間以内で1万円、超えると2万円)と交通費が加算されます。これは有料です。

公正証書遺言にかかる総費用の目安:実例で確認する

「結局いくらかかるの?」という疑問に答えるため、不動産が含まれる典型的なケースで計算してみます。

【ケース例】

  • 遺産内容:自宅不動産(固定資産税評価額2,500万円)+預貯金500万円
  • 相続人:子ども2人(長男・次男)に均等に相続

計算手順は以下のとおりです。

  1. 長男への財産:不動産1,250万円+預貯金250万円=1,500万円 → 手数料23,000円
  2. 次男への財産:同じく1,500万円 → 手数料23,000円
  3. 合計財産が1億円未満のため遺言加算:11,000円
  4. 正本・謄本作成費用:1枚250円×ページ数(目安2,000〜3,000円)

合計すると、およそ57,000〜60,000円程度になります。これは想定外に感じる方も多いです。

さらに、司法書士や行政書士に遺言案の作成を依頼した場合は、別途5〜15万円程度の報酬が発生します。公証役場への手数料はあくまで「作成・保管にかかる公的費用」であり、専門家報酬は別物だということですね。

不動産の評価額が高い都市部では、この合計が10万円を超えるケースも珍しくありません。依頼者への事前説明として、この「トータルコスト」の感覚を持っておくことが重要です。

公正証書遺言と自筆証書遺言の費用比較:不動産業者が知るべき違い

遺言の方式には主に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があります。費用面だけで比較すると自筆証書遺言が圧倒的に安く見えますが、不動産が絡む相続では注意が必要です。

項目 公正証書遺言 自筆証書遺言
作成費用 5万〜10万円以上(不動産あり) ほぼ0円〜数千円
証人 2人必要 不要
家庭裁判所の検認 不要 原則必要(法務局保管除く)
不動産登記への使用 そのまま使用可能 検認済みでないと使用不可
紛失・偽造リスク 原本は公証役場が保管・ほぼなし 高い

不動産の所有権移転登記には、「検認済みの遺言書」または「公正証書遺言の正本」が必要です。つまり自筆証書遺言では家庭裁判所での検認手続きが別途発生し、時間と費用がかかります。

検認手続きは家庭裁判所に申立てを行い、相続人全員への通知と期日出頭が求められます。期間も1〜2か月かかることが多く、その間は不動産の名義変更が進みません。意外ですね。

不動産の売却や賃貸活用を急ぐ場合、検認待ちで手続きが止まってしまうのは大きな損失につながります。費用だけで判断しないことが条件です。

法務局の自筆証書遺言保管制度(2020年7月開始)を利用すれば検認は不要になりますが、手数料3,900円と窓口への本人出頭が必要です。これは使えそうです。不動産業のお客様に遺言の話題が出たときは、この点をぜひ添えて説明してみてください。

参考:法務局の自筆証書遺言保管制度の詳細はこちら

法務省:自筆証書遺言書保管制度について

不動産業従事者が押さえる公正証書遺言の独自視点:相続登記義務化との連動

2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されました。これにより、相続を知った日から3年以内に登記申請をしないと10万円以下の過料が科されます。これは法的リスクです。

この義務化によって、公正証書遺言の重要性がさらに高まっています。なぜかというと、遺言書がない場合は相続人全員による「遺産分割協議」が必要になるからです。協議が整わなければ、3年以内の登記が難しくなります。

一方、公正証書遺言があれば、法定相続人全員の合意なしに特定の相続人や受遺者が単独で登記申請できます。これが原則です。不動産の名義変更をスムーズに進めるうえで、遺言書の有無は決定的な差になります。

不動産業者として関与できる場面はここです。売買・賃貸の相談の中で「相続した不動産」が出てきたとき、遺言書の有無・種類を確認することで、手続きの流れを的確に案内できます。

また、「相続登記が済んでいない不動産の売却」を依頼されるケースも増えています。登記義務化の背景と公正証書遺言の有無を確認する習慣を持っておくと、お客様へのサービス品質が格段に上がります。これは使えそうです。

具体的な確認事項としては次の3点を覚えておけばOKです。

  • 遺言書の有無・種類(公正証書 or 自筆証書)
  • 相続登記の申請状況(完了・未了・協議中)
  • 固定資産税評価証明書の取得状況(費用計算のため)

相続登記義務化の詳細は法務省の公式情報が信頼できます。

法務省:相続登記の申請義務化について

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