更新料と家賃は別で請求される
法定更新になると更新料を請求できなくなります。
更新料と家賃の違いと法的性質
更新料と家賃は、賃貸借契約において全く異なる性質を持つ費用項目です。どういうことでしょうか?
家賃は毎月の居住対価として継続的に支払われる費用であり、賃貸借契約における基本的な義務として民法や借地借家法で規定されています。一方、更新料は契約期間を延長する際に貸主へ支払う一時金であり、法律では明確に規定されていません。
つまり法律上の義務ではないということですね。
この違いは実務において重要な意味を持ちます。家賃は契約書に記載がなくても当然に発生する義務ですが、更新料は契約書に明記されていない限り請求できません。国土交通省の調査によると、更新料を徴収する主な理由として「一時金収入として見込んでいる(53%)」「長年の慣習(50.4%)」という回答が多く、実質的には大家さんの収入源となっている実態があります。
居住用物件の場合、家賃と更新料の税務上の扱いも異なります。家賃は消費税非課税ですが、更新事務手数料は不動産会社への報酬として消費税が課税される点にも注意が必要です。
更新料そのものは非課税です。
不動産業従事者としては、入居者から「更新料も家賃の一部ではないか」という質問を受けることがあります。その際には、更新料は契約継続の対価であり、毎月の居住費用である家賃とは別の性質を持つことを丁寧に説明する必要があります。
契約書への明記が基本です。
参考:国土交通省の民間賃貸住宅に係る実態調査では、更新料の法的性質について詳細なデータが公開されています。
更新料を家賃と別に請求する際の契約書記載ポイント
契約書への具体的な記載方法が、更新料請求の成否を分ける最も重要な要素になります。実は契約書に「更新料を支払うこと」と曖昧に書いただけでは不十分なケースが存在します。
最高裁判例(平成23年7月15日判決)では、更新料条項が有効となるためには「一義的かつ具体的」に記載されている必要があると示されました。具体的には、「更新時に新賃料の1か月分を更新料として支払う」といった金額または算定方法が明確な記載が求められます。「相当額を支払う」といった抽象的な表現では無効と判断されるリスクがあります。
さらに重要なのは、法定更新の場合についても明記することです。契約書に「合意更新の場合に更新料を支払う」としか書いていないと、法定更新になった際に更新料を請求できない可能性があります。東京地裁平成23年の判決では、法定更新時の更新料請求が認められなかった事例があり、賃貸借契約書には「合意更新・法定更新いずれの場合も更新料を支払う」と明記する必要があるという教訓が得られました。
不動産業従事者は契約書のひな形を使用する際、以下の点を必ず確認してください。
- 更新料の金額または明確な算定方法(家賃〇か月分など)
- 支払時期(更新日、更新日の〇日前など)
- 法定更新の場合の取り扱い
- 更新料と更新事務手数料の区別
契約書の記載不備により更新料を請求できず、大家さんとの信頼関係を損なうリスクを回避するためには、契約締結前の書面チェックを徹底することが不可欠です。家賃2か月分の更新料が請求できないと、仮に家賃7万円の物件なら14万円の損失が発生します。
参考:更新料条項の有効性について詳しく解説している全日本不動産協会の法律相談ページ。
更新料の地域差と不動産業者が知るべき慣習
更新料の有無と金額は地域によって驚くほど異なり、不動産業従事者が他地域の物件を扱う際に混乱を招く要因となります。地域差はどれくらいあるんでしょう?
2024年の調査データによると、千葉県で更新料を設定する物件は約83%、神奈川県では約90%と非常に高い割合です。東京都でも約65%の物件で更新料が設定されています。一方、大阪府では8.4%、兵庫県に至っては0%に近い水準となっており、関西圏では更新料の慣習がほとんど根付いていません。興味深いのは、同じ関西でも京都府だけは例外で、約43~55%の物件で更新料が設定されています。
この地域差が生まれた背景には歴史的経緯があります。関東圏では戦後の住宅不足の中で、初期費用を抑えて入居しやすくする代わりに更新時に一時金を徴収する慣習が広まりました。関西では敷引き(返還しない敷金)制度が発達し、更新料の代わりとして機能してきた経緯があります。京都が例外となっているのは、古都保存のため新規物件が少なく、関東並みの設定が維持されたとの説もあります。
不動産業従事者が注意すべきは、他地域出身の入居希望者への説明です。関西出身者が関東の物件を契約する際、更新料の存在に驚き、契約直前でキャンセルになるケースも珍しくありません。事前に地域特性を説明し、更新料を含めた総コストを提示することでトラブルを予防できます。
また、管理会社を変更する際に、新旧の管理会社で更新料の設定が異なる場合もトラブルの原因になります。契約期間中に一方的に契約内容を変更することはできないため、既存契約の更新料条項は引き継がれることを理解しておく必要があります。
これは基本です。
更新料が家賃とは別に発生する更新時の総費用
更新時に入居者が負担する費用は、更新料だけではありません。実際には複数の費用項目が同時に発生し、その総額が入居者にとって大きな負担となるため、不動産業従事者は全体像を把握しておく必要があります。
典型的な更新時の費用内訳は以下の通りです。
✅ 更新料:家賃の0.5~2か月分(大家さんへの支払い)
✅ 更新事務手数料:10,000円~家賃の0.5か月分(管理会社への支払い)
✅ 火災保険料:10,000~20,000円程度(2年分)
✅ 保証会社の更新料:10,000円~家賃の0.3か月分程度
例えば家賃7万円の物件で、更新料が家賃1か月分の場合、総額は約12~15万円になります。家賃とは別に、この金額を一括で支払う必要があるわけです。
入居者からすると、かなりの出費ですね。
不動産業従事者が押さえておくべきは、これらの費用の支払先と性質の違いです。更新料は大家さんへの契約継続の対価であり、居住用物件では消費税非課税です。一方、更新事務手数料は管理会社への事務処理の対価であり、消費税が課税されます。この違いを理解していないと、入居者からの質問に正確に答えられません。
さらに注意が必要なのは、更新料は家賃に含まれないため、更新月であっても通常通り家賃を支払う必要がある点です。Yahoo!知恵袋などでも「更新料2か月分を払ったら、その月の家賃は不要なのか」という質問が頻繁に見られますが、答えは「別途家賃も必要」です。つまり、更新月は家賃+更新関連費用の二重負担が発生することになります。
この総費用を事前に明確に伝えることで、入居者の資金準備を促し、支払遅延のトラブルを防ぐことができます。更新の3か月前には費用明細を送付し、分割払いの相談にも応じる姿勢を示すことが、入居者との良好な関係維持につながります。
分割払いは契約次第です。
更新料を請求できないリスクと法定更新の落とし穴
法定更新になると更新料を請求できなくなる可能性があることを、意外と知らない不動産業従事者が多いのが現実です。法定更新とは何でしょう?
法定更新とは、契約期間満了の1年前から6か月前までに、貸主と借主の間で更新に関する合意がなかった場合、または貸主が更新拒絶の正当事由を示せなかった場合に、自動的に契約が継続される制度です。借地借家法26条に基づく借主保護のための仕組みであり、契約書を新たに交わすことなく契約が延長されます。
ここで重要なのは、法定更新の場合、原則として更新料を請求できないという点です。2011年の東京地方裁判所の判決でも、契約書に法定更新時の更新料について明記がない場合、更新料請求は認められないと示されました。つまり、契約書に「合意更新の場合に更新料〇か月分」とだけ書いてあり、法定更新についての記載がないと、法定更新になった際に更新料を受け取る権利を失う可能性があります。
不動産業従事者にとって、これは深刻なリスクです。更新手続きを適切に進めなかった結果、大家さんの収入源である更新料(例:家賃7万円×2か月=14万円)が得られなくなり、管理業務への信頼を失う事態に発展します。さらに、法定更新後は契約期間の定めがない状態となり、その後の更新料も請求できなくなる可能性があります。
法定更新を防ぐための対策は明確です。契約期間満了の3~4か月前には、必ず入居者に更新の意思確認を行い、合意が得られたら速やかに更新契約書を締結します。連絡を無視されたり、返事が曖昧な場合でも、書面で通知を送り、証拠を残すことが重要です。
内容証明郵便の活用も有効です。
また、契約書には必ず「法定更新の場合においても、更新料として家賃〇か月分を支払うものとする」といった条項を追加しておくことで、万が一法定更新になった場合でも更新料を請求できる法的根拠を確保できます。
これが基本的な対策です。
参考:法定更新と更新料の関係について詳しく解説している不動産適正取引推進機構のQ&Aページ。
更新料なし物件のトータルコスト比較と提案術
更新料なしの物件は入居者にとって魅力的に見えますが、トータルコストで見ると必ずしもお得とは限りません。不動産業従事者として、この仕組みを理解し、顧客に適切な提案をすることが求められます。
更新料なし物件の多くは、その分を家賃や初期費用に上乗せしている可能性があります。例えば、以下の2つの物件を比較してみましょう。
物件A(更新料あり)
- 家賃:6.5万円
- 更新料:家賃1か月分(6.5万円、2年ごと)
- 2年間の総コスト:6.5万円×24か月+6.5万円=162.5万円
物件B(更新料なし)
- 家賃:7万円
- 更新料:なし
- 2年間の総コスト:7万円×24か月=168万円
この例では、2年間では物件Aの方が5.5万円安くなります。しかし4年、6年と長く住む場合、更新料の回数が増えるため、物件Bの方が有利になる可能性があります。4年間で計算すると、物件Aは331.5万円、物件Bは336万円となり、差は縮まります。
不動産業従事者が入居希望者に提案する際は、居住予定期間を確認し、トータルコストを提示することが重要です。短期間(2~3年)なら更新料ありの低家賃物件、長期間(5年以上)なら更新料なし物件が有利というケースが多くなります。
具体的な数字で示すと説得力が増します。
また、更新料なし物件には他の特徴もあります。大手の管理会社(大東建託、積水ハウスなど)が運営する物件では、空室期間を短縮するために更新料なしを戦略的に採用しているケースがあります。UR賃貸住宅も更新料なしで知られており、長期居住を前提とする家族層に人気です。
顧客への提案では、「更新料2万円を分割すると月々833円の家賃上昇と同じ」といった換算を示すと理解しやすくなります。また、更新料ありの物件でも、家賃交渉の余地がある場合は、更新時に家賃を下げてもらうことで実質的な負担を減らせる可能性があることも伝えられます。
柔軟な提案が求められます。

