マスターリース サブリース 違い 契約内容 仕組み メリット デメリット 注意点

マスターリース サブリース 違い

オーナー側からの契約解除は正当事由がないとできません。

この記事の3つのポイント
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契約主体の違い

マスターリースはオーナーとサブリース会社の契約、サブリースは会社と入居者の契約で、借地借家法の適用が異なります

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手数料率の比較

管理委託は家賃の5%程度、固定型マスターリースは15~20%と3~4倍の費用負担が発生します

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法的リスク

契約解除には正当事由が必要で、賃料減額請求は特約があっても借地借家法32条により可能です

マスターリース契約とサブリース契約の基本的な違い

マスターリースとサブリースは、不動産業界で頻繁に混同される用語ですが、契約の当事者が明確に異なります。マスターリースは、物件オーナーとサブリース会社(不動産管理会社)の間で締結される賃貸借契約のことを指します。この契約では、サブリース会社が物件全体を一括して借り上げることになります。

一方でサブリースは、マスターリース契約を結んだサブリース会社と、実際の入居者(第三者)との間で締結される転貸借契約を意味します。

つまり、サブリースは転貸を前提とした契約です。

現在では、この一連の仕組み全体を「サブリース」と呼ぶことが一般的になっています。どういうことでしょうか?業界内では、オーナーからサブリース会社への一括借り上げと、そこから入居者への転貸という一連の流れを、まとめて「サブリース方式」と表現することが多いのです。

しかし、法律的な観点では区別が重要になります。マスターリース契約においては、サブリース会社が賃借人として借地借家法による保護を受ける立場となるため、オーナー側からの一方的な契約解除が極めて困難になります。この法的な立場の違いが、後述するトラブルの原因となることが少なくありません。

不動産業従事者としては、オーナーへの説明時に「マスターリース」と「サブリース」の違いを正確に伝えることが、信頼関係構築の第一歩です。

マスターリースの賃料形態と手数料率の実態

マスターリース契約には、大きく分けて「賃料固定型」と「パススルー型(実績賃料連動型)」の2種類があります。この選択が、オーナーの収益性に直接影響を与えるため、不動産業従事者は両者の特徴を正確に理解しておく必要があります。

賃料固定型は、サブリース会社がオーナーに対して一定の賃料を保証する仕組みです。空室の有無にかかわらず、毎月固定の賃料がオーナーに支払われます。手数料率は家賃収入の15~20%程度が相場となっており、管理委託方式の5%と比較すると3~4倍の費用負担となります。例えば、満室時の家賃収入が月100万円の物件の場合、管理委託なら95万円が手元に残りますが、固定型マスターリースでは80~85万円程度になる計算です。

パススルー型は、実際の入居状況に応じてオーナーへの賃料が変動する仕組みです。満室時には高い収益を得られる一方、空室が発生すればその分収入も減少します。この方式では、サブリース会社は管理業務を担当し、実際の賃料収入から手数料(家賃の5~10%程度)を差し引いた金額をオーナーに支払います。

固定型が安心ということですね。しかし、この「安心」には大きな落とし穴があります。後述する賃料減額請求のリスクを考慮すると、固定型の保証は必ずしも長期的な安定を意味しないのです。

収益性を重視するオーナーには、稼働率が高い物件でパススルー型を選択することで、手数料負担を抑えられるメリットがあります。逆に、立地条件が不利で空室リスクが高い物件では、固定型のメリットが大きくなります。ただし、固定型を選択する場合は、必ず賃料減額請求のリスクについても説明する必要があります。

マスターリース契約における法的リスクと借地借家法の適用

マスターリース契約の最大のリスクは、借地借家法が適用されることにあります。この法律は、賃借人(サブリース会社側)を強く保護する内容となっており、オーナー側には大きな制約が課されます。

最も重要なポイントは、賃料減額請求権です。借地借家法第32条により、サブリース会社は周辺相場や経済情勢の変動を理由に、いつでも賃料の減額を請求できます。契約書に「○年間は賃料を減額しない」という特約を設けていても、この減額請求権を排除することはできないと最高裁判所が判断しています。

実際の裁判例を見ると、新築時に設定した高めの保証賃料が、わずか数年後に大幅に減額されるケースが多数存在します。

減額が認められるかは厳しいところですね。

周辺相場との乖離が明確であれば、裁判所は減額を認める傾向にあります。

もう一つの重大なリスクが、契約解除の困難さです。オーナー側からマスターリース契約を解除するには、借地借家法第28条に定める「正当事由」が必要となります。正当事由とは、建物の老朽化による建て替え、オーナー自身の使用必要性、立退料の提示など、複数の要素を総合的に判断して認められるものです。単に「別の管理会社に変えたい」「手数料が高い」という理由では、正当事由とは認められません。

2020年6月施行の賃貸住宅管理業法により、サブリース業者には新たな規制が課されています。200戸以上を管理する業者は国土交通大臣への登録が義務付けられ、契約前には賃料減額の可能性や契約解除の困難さについて、書面を交付して説明する義務が課されました。説明義務違反には罰則規定もあるため、不動産業従事者は必ず適切な説明を行う必要があります。

国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルサイトでは、サブリース業者の規制内容や禁止行為について詳しく解説されています。契約前の重要事項説明や書面交付の義務について確認する際の参考リンクです。

サブリース会社倒産時のリスクと実務上の対応策

サブリース会社が経営破綻した場合、オーナーが直面するリスクは極めて深刻です。保証賃料の支払いが突然停止し、入居者との契約関係も複雑な状況に陥ります。

サブリース会社の倒産により、まず直面するのが家賃収入の途絶えです。固定型マスターリース契約を結んでいた場合、サブリース会社からの保証賃料が支払われなくなり、ローン返済に窮するオーナーも少なくありません。特に、建築費用を全額融資で賄っていた場合、月々のローン返済が滞ることで金融機関との関係が悪化し、最悪の場合は物件の競売という事態に発展する可能性もあります。

より複雑な問題が、入居者との契約関係です。マスターリース契約が解除または終了した場合でも、サブリース契約(入居者との契約)は原則として存続します。民法第613条第3項により、賃貸人たる地位がオーナーに移転することになりますが、入居者が従来通りサブリース会社の口座に家賃を振り込み続けるケースが頻発します。

この状況への対応として、まずオーナーは速やかに全入居者に対して通知を行う必要があります。賃貸人がオーナーに変更されたこと、今後の家賃振込先の変更、敷金の承継について明記した書面を内容証明郵便で送付することが基本です。

倒産リスクを事前に回避するには、契約前のデューデリジェンスが不可欠です。サブリース会社の財務諸表を確認し、特に自己資本比率や営業キャッシュフローの推移をチェックする習慣をつけましょう。業界大手であっても、過度な事業拡大による財務悪化のリスクは常に存在します。

日本賃貸住宅管理協会のサブリース特集ページでは、賃料減額請求への対応方法や解約拒否への実務的なアドバイスが掲載されています。トラブル発生時の相談先としても活用できるリソースです。

管理委託方式との比較から見る最適な選択基準

マスターリース契約と管理委託方式のどちらを選ぶべきかは、物件特性とオーナーの経営方針によって判断が分かれます。不動産業従事者としては、両者の違いを数字で示しながら説明することが重要です。

管理委託方式では、オーナーが直接入居者と賃貸借契約を結び、管理業務のみを管理会社に委託します。手数料は家賃の5%程度が相場で、満室時の収益性はマスターリース方式よりも明らかに高くなります。例として、家賃10万円の部屋が10戸ある物件の場合、満室時の月収入は管理委託で95万円、固定型マスターリースで80~85万円となり、年間では180~240万円もの差が生じます。東京ドーム約4個分の広さの土地を所有する程度の規模感で考えると、この差は無視できない金額です。

つまり高稼働物件では管理委託が有利です。逆に、空室リスクが高い地方物件や、築年数が古く入居付けに苦戦することが予想される物件では、固定型マスターリースの安定性が魅力となります。

もう一つの重要な違いが、契約解除の容易さです。管理委託契約は委任契約の性質を持つため、3ヶ月程度の予告期間を設ければ解約が可能なケースが多くなっています。対してマスターリース契約は前述の通り、正当事由がなければ解約できません。この流動性の違いは、経営方針の変更や管理会社の変更を検討する際に大きな影響を及ぼします。

パススルー型マスターリースは、管理委託と固定型マスターリースの中間的な位置づけです。実際の入居状況に応じて賃料が変動する点は管理委託に近く、サブリース会社が入居者と直接契約する点はマスターリースの特徴を持ちます。手数料率は5~10%程度で、管理委託よりやや高めですが、固定型ほどの負担ではありません。

選択基準としては、稼働率80%以上を安定的に維持できる物件なら管理委託、稼働率が60%を下回る可能性がある物件なら固定型マスターリース、その中間ならパススルー型という目安が実務的です。ただし、固定型を選択する場合は、必ず賃料減額リスクと契約解除の困難さについて十分に説明し、オーナーの理解を得ることが必須となります。

物件の収益性を正確にシミュレーションする際は、不動産適正取引推進機構のサイトで公開されているサブリース関連の判例情報を参考にすることで、賃料減額のリスクを具体的に把握できます。過去の裁判例から減額幅の傾向を知ることが、現実的な収益計画の策定につながります。