自ら売主の重要事項説明で知らないと業務停止になるポイント

自ら売主の重要事項説明で知らないと業務停止になるポイント

重要事項説明を省略しても、買主が宅建業者なら書面の交付だけはしなければ1年間業務停止になります。

📋 この記事のポイント3選
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説明省略できても書面交付は必須

買主が宅建業者の場合、重要事項の「説明」は省略できますが、35条書面(重要事項説明書)の交付は必ず行わなければなりません。省略すると業務停止処分の対象です。

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手付金保全は未完成5%・完成10%が境界線

自ら売主の場合、未完成物件なら代金の5%、完成物件なら10%を超える手付金を受領する前に保全措置の実施が必要です。この記載を35条書面に正確に盛り込む義務があります。

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媒介業者がいても売主業者の説明義務は消えない

他社に媒介を依頼していても、自ら売主となる宅建業者は独立して重要事項説明義務を負います。媒介業者に任せきりにすると、自社も処分対象になります。


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自ら売主の重要事項説明とは何か:義務の根拠と対象範囲

 

宅建業法第35条は、宅地または建物の売買・交換・貸借の契約が成立するまでの間に、宅建業者が買主・借主に対して重要事項を説明する義務を定めています。ここで重要なのは「自ら売主」という立場です。

自ら売主とは、宅建業者が自分自身を売主として不動産を販売することを指します。媒介や代理とは異なり、当事者として取引に関与するため、宅建業法上の規制が集中しやすい立場です。

自ら売主の宅建業者は、宅建業法が適用される売買・交換の取引を行っている以上、重要事項説明義務を負います。これは原則です。

一方、よく比較されるのが「自ら貸主」です。宅建業者が自ら賃貸物件の貸主になる行為は「自ら貸借」に該当し、宅建業法の規定する「宅建業」には含まれません。そのため自ら貸主の宅建業者は、重要事項説明義務を負わないという重要な例外があります。

この違いを整理しておきましょう。

立場 宅建業法の適用 重要事項説明義務
自ら売主(宅建業者) ✅ あり ✅ 義務あり
媒介業者 ✅ あり ✅ 義務あり
代理業者 ✅ あり ✅ 義務あり
自ら貸主(宅建業者) ❌ なし ❌ 義務なし

つまり「自ら貸主はOK、自ら売主はNG(義務あり)」が原則です。

説明は必ず宅地建物取引士が担当しなければなりません。専任の宅建士である必要はありませんが、宅建士であることは必須です。また、説明の際には相手方から求めがなくても必ず宅建士証を提示しなければならず、この提示を怠ると10万円以下の過料が科せられます。

説明の時期については「契約が成立するまでの間」、つまり必ず契約締結前に行うことが条件です。契約後に説明したのでは、買主が契約内容を理解したうえで判断する機会が失われてしまうためです。これが基本です。

参考:宅建業法第35条の条文と解釈について、国土交通省が発行する公式資料で確認できます。

国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(PDF)

自ら売主の重要事項説明で買主が宅建業者の場合の扱い:書面交付だけは省略できない

実務でよく誤解されるのが「相手が宅建業者なら重説は不要」という理解です。半分正しく、半分は危険な誤りです。

平成29年(2017年)の宅建業法改正により、買主・借主が宅建業者である場合には、重要事項の「説明」を省略することができるようになりました。これは宅建業者であれば不動産取引の知識があり、保護の必要性が低いという理由によります。

ただし、「説明の省略」と「書面交付の省略」は別の話です。

買主が宅建業者であっても、35条書面(重要事項説明書)の交付は必ず行わなければなりません。書面の交付を省略すると、業務停止処分の対象となります。これは絶対に覚えておくべきルールです。

整理するとこうなります。

買主の属性 重要事項の説明 35条書面の交付
一般消費者 ✅ 必要 ✅ 必要
宅建業者 ❌ 省略可 ✅ 必要(省略不可)

「相手が業者だから書面も出さなくていいだろう」と判断して書面交付を省略した場合、法律違反です。実務では業者間取引が多い場面もあるため、このルールの誤解が特に起きやすいポイントです。

また、2022年5月18日施行の法改正によって、35条書面は買主の承諾がある場合に限り、PDFなどの電磁的記録(電子データ)で提供することが認められるようになりました。ただし、電子化には相手方の事前承諾が必要です。承諾なしに電子データのみで交付しても、適法な書面交付とはみなされません。

実務上のポイントをまとめると、業者間取引であっても「書面は必ず出す、説明は省略できる」という運用が正解です。書面交付を省略した時点でアウトになりますので、特に注意が必要です。

参考:買主が宅建業者の場合の重要事項説明の扱いについて詳しく解説されています。

全宅保証「宅建業者が宅地または建物の買主または借主となる場合の取扱い」(PDF)

自ら売主の重要事項説明と媒介業者が絡む場合の二重義務:任せきりは違法になる

自ら売主で物件を販売する際、自社だけで営業せず他社(媒介業者)に販売を委託するケースは実務でも多くあります。この場合、重要事項説明義務の所在について混乱が生じることがあります。

結論から言うと、売主業者と媒介業者の両方が独立して重要事項説明義務を負います。これは宅建業法の規定によるもので、売主業者が媒介業者に販売を任せたからといって、自社の説明義務がなくなるわけではありません。

たとえば、宅建業者Aが自ら売主として新築マンションを販売し、宅建業者Bに媒介を依頼した場合、AもBも買主に対して重要事項説明義務を負います。両者が連帯して義務を負う形になるため、35条書面にはAの宅建士とBの宅建士の両方が記名しなければなりません。

「媒介業者が説明するから、売主業者は何もしなくてよい」という判断は誤りです。

実務では、媒介業者が説明の場面を取り仕切ることが多く、売主業者は説明に立ち会わないケースもあります。しかし、法律上は売主業者の義務は消えていません。媒介業者に任せきりにした結果、35条書面の記名が売主側の宅建士分しか取れていないというミスが起きると、法令違反になってしまいます。

売主業者が直接説明する場合でも、媒介業者が説明する場合でも、35条書面の記名義務については双方が責任を持って確認する体制を整えることが必要です。厳しいところですね。

参考:複数業者が関与する取引での重要事項説明義務の分担について詳しく解説されています。

公益社団法人全日本不動産協会埼玉県本部「宅建士試験合格のコツ・宅建業法~重要事項の説明~」

自ら売主の重要事項説明で必須の記載事項:手付金保全措置と8種制限の関係

自ら売主の宅建業者が作成する35条書面には、媒介取引とは異なる「自ら売主専用の記載事項」があります。これを漏らすと書面の内容が不完全になり、買主とのトラブルや行政処分につながるリスクがあります。

最も重要なものが「手付金等の保全措置の概要」です。

宅建業者が自ら売主となる場合、受領する手付金の額によっては買主が支払った手付金等を保全する措置を講じる義務があります。具体的な基準は以下のとおりです。

物件の状態 保全措置が必要な条件
未完成物件(工事完了前) 代金の5%超、または1,000万円超
完成物件(工事完了後) 代金の10%超、または1,000万円超

たとえば、3,000万円の未完成物件なら150万円(3,000万円×5%)を超える手付金を受領する前に保全措置が必要です。150万円という金額はサラリーマンの約3〜4か月分の手取り収入に相当し、買主にとって非常に大きな損失リスクがあります。

手付金を受領する前に保全措置を講じなければならず、事後では遅いです。

この「手付金等の保全措置の概要」は、自ら売主の宅建業者のみが35条書面に記載すべき事項であり、媒介業者が作成する書面には通常含まれません。自ら売主案件では必ず確認が必要な項目です。

加えて、自ら売主制限(いわゆる8種制限)との関係でいくつかの記載事項が追加で求められます。たとえば、割賦販売を行う場合には「割賦販売に係る事項」として、現金販売価格・割賦販売価格・引渡しまでに支払う金銭の額・月々の割賦金額・支払時期・方法を35条書面に記載しなければなりません。また、クーリングオフ(買受申込みの撤回)に関する説明も、自ら売主が行う売買では欠かせない実務上のポイントです。

これが条件です。自ら売主案件では35条書面の内容が媒介案件より厚くなる理由はここにあります。

参考:手付金等の保全措置の仕組みと自ら売主制限について詳しく解説されています。

ハトマークサイト「売り主が宅地建物取引業者である場合の規制について」

自ら売主の重要事項説明を怠った場合の処分:業務停止から免許取消まで

重要事項説明義務違反は、宅建業者にとって非常に重大な違反行為です。「うっかり省略した」で済まされない法的リスクがあります。

まず、重要事項の説明を怠った場合、業務停止処分の対象となります。免許権者(国土交通大臣または都道府県知事)は、1年以内の期間を定めて業務の全部または一部の停止を命じることができます。これは行政処分です。

さらに、情状が特に重い場合には免許取消処分になることもあります。免許が取り消された場合、5年間は再取得できません。

宅建士証の提示義務(説明時に宅建士証を見せること)を怠った場合には、10万円以下の過料が科せられます。これは比較的軽い処分ですが、実務ではうっかり忘れがちなポイントです。

また、故意に重要事項について不実の告知をした場合や、重要な事実を故意に告げなかった場合(宅建業法47条1号違反)は、業務停止処分にとどまらず3年以下の懲役または300万円以下の罰金という刑事罰の対象にもなります。懲役刑が科せられると前科がつくことになります。前科がつきますね。

処分のレベルを整理すると以下のようになります。

違反内容 主な処分・罰則
重要事項説明を行わなかった 業務停止処分(1年以内)、情状重大なら免許取消
宅建士証の提示義務違反 10万円以下の過料
故意の不実告知・重要事実の不告知 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(刑事罰)
35条書面を交付しなかった 業務停止処分

重要なのは、違反が実際に行政処分として公表されることです。都道府県のウェブサイトには処分を受けた宅建業者の情報が公開されており、業界内での信用に直接影響します。一度処分を受けると取引先や金融機関からの信頼を失うリスクがあります。取引先を失ってからでは遅いですね。

自ら売主の重要事項説明は「しっかり対応すること」が当然のルールである一方、その違反に対するペナルティも非常に重いという認識を持つことが重要です。

参考:重要事項説明義務違反に対する監督処分の内容について、全日本不動産協会が詳しく解説しています。

公益社団法人全日本不動産協会「重要事項説明義務違反に対する監督処分」

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