認定基準・障害年金を不動産従事者が知るべき理由

認定基準・障害年金の基本から不動産実務との接点まで

障害年金の収入がある入居希望者を断ると、実は大家が損をするケースがあります。

この記事の3つのポイント
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認定基準を知ると審査判断が変わる

障害年金は「病名」ではなく「障害の程度」で等級が決まります。不動産実務でも、入居審査の正確な判断に役立つ知識です。

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家賃収入があっても障害年金は止まらない

障害年金には原則として所得制限がありません。家賃収入が入っても受給は継続でき、賃貸入居者の収入源として安定性があります。

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住宅セーフティネット制度で空室対策になる

障害年金受給者を受け入れる「セーフティネット住宅」に登録すると、行政からの支援が受けられ、空室解消につながります。


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障害年金の認定基準とは何か・等級の仕組みを理解する

 

障害年金とは、病気やケガによって日常生活や就労に支障をきたした場合に、国から支給される年金給付のことです。多くの人が「身体障害だけが対象」と思いがちですが、実際には精神疾患や内部疾患(がん・糖尿病・腎臓病など)も対象です。これが大前提です。

認定基準とは、「どの程度の障害状態であれば年金を受給できるか」を定めた厚生労働省の基準のことです。障害年金は1級・2級・3級の等級制になっており、それぞれに定義された障害の程度に該当しなければ支給されません。

等級ごとの基準をまとめると、次のとおりです。

等級 障害の程度(概要) 対象の年金
1級 他人の介助なしでは日常生活が送れない(寝たきりに近い状態) 障害基礎年金・障害厚生年金
2級 日常生活に著しい制限がある(自宅内での活動がほぼ限界) 障害基礎年金・障害厚生年金
3級 労働に著しい制限がある 障害厚生年金のみ

意外ですね。3級は障害厚生年金の加入者(会社員・公務員)だけが対象で、自営業者や専業主婦などが加入する国民年金には3級がありません。

障害年金制度には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があります。障害基礎年金は国民年金から支給され1・2級のみ、障害厚生年金は厚生年金から支給されて1〜3級と障害手当金(一時金)まで設けられています。

重要なのは、「障害者手帳の等級≠障害年金の等級」という点です。厚生労働省の基準によると、手帳と年金では認定基準がまったく別の制度として設計されています。手帳で3級をお持ちの方が、年金の2級に該当するケースもあれば、手帳を持っていない方が年金を受給できるケースも存在します。等級が一致すると思い込みは禁物です。

令和7年度(2025年度)の受給額は、障害基礎年金2級が年額831,700円(月額約69,300円)、1級はその1.25倍で年額約1,039,625円(月額約86,600円)です。障害厚生年金の額は現役時代の報酬によって異なりますが、3級の最低保障額は年額622,275円(月額約51,900円)となっています。

日本年金機構|障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額(等級・金額の公式情報)

認定基準を決める3つの受給要件・初診日と保険料納付

障害年金を受け取るには、認定基準の等級に該当するだけでは不十分です。3つの要件をすべてクリアする必要があります。

① 初診日要件

初診日とは、障害の原因となった病気やケガで「初めて医師に診てもらった日」のことです。この日をもとに保険料納付要件の確認や、障害認定日の計算が行われます。

注意点が多い要件です。「転院した場合は最初の医院での初診日」「同じ病気が再発した場合は、完全に治っていなければ最初の初診日」などが原則とされています。また、接骨院や鍼灸院での施術日は初診日として認められません。

② 保険料納付要件

原則として、初診日の前々月までの被保険者期間のうち、3分の2以上が保険料納付済みまたは免除期間であることが必要です。これが満たせていないと、どれほど重い障害状態でも受給できません。

ただし、特例があります。初診日が令和8年4月1日までにある場合は、直近1年間(初診日の前々月まで)に未納がなければ要件を満たします。これが条件です。

③ 障害の程度要件(認定基準への該当)

「障害認定日」に障害等級に該当する状態であることが求められます。障害認定日は原則として初診日から1年6か月後です。ただし、特定の治療・手術を行った場合は、1年6か月を待たずに請求できる特例が設けられています。

たとえば人工透析を開始した場合は透析開始から3か月後、人工関節・人工骨頭を挿入置換した場合はその挿入置換日、在宅酸素療法を開始した場合(常時使用)はその開始日が障害認定日となります。体の状況によっては、思ったより早く申請できます。

精神疾患の障害年金申請は増加傾向にあり、申請全体の約70%を占めているのが現状です。しかし令和6年度(2024年度)のデータによると、精神障害における不支給率は12.1%と、前年度の6.4%から大幅に上昇しています。申請すれば通るわけではありません。

厚生労働省|令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書(不支給率・認定状況の公式データ)

認定基準と家賃収入の関係・不動産収入があっても障害年金は止まらない

不動産業に携わる方なら、「入居希望者が障害年金受給者で、かつ家賃収入もある」という場面に出会うことがあります。こういったケースで「収入が多いなら年金は止まるのでは?」と心配される方がいますが、これは誤解です。

障害年金には、原則として所得制限がありません。つまり、家賃収入・給与収入・事業収入がいくらあっても、障害の状態が等級に該当していれば受給を続けることができます。これは大切なポイントです。

例外として、「20歳前に初診日がある障害基礎年金(20歳前傷病)」の場合のみ、所得制限が設けられています。これは年金保険料を1円も払っていない期間の傷病に対する福祉的な給付であるためです。この1ケースだけは例外です。

社会保険労務士の中井事務所によると、「障害厚生年金を受給されている方に家賃収入が入るようになっても、所得制限はないため受給に影響しない」と明確に説明されています。家賃収入が入った途端に年金が止まるのでは、という不安は払拭してよい内容です。

一方で、障害年金自体は非課税所得ですが、家賃収入(不動産所得)は課税対象となります。不動産所得と他の所得は合算されて確定申告が必要になるケースもあるため、税務面の確認は別途行う必要があります。「年金は止まらないが税金はかかる可能性がある」という整理が基本です。

障害年金情報局|家賃収入があっても障害年金は受給できるか(社労士による解説)

認定基準を踏まえた賃貸審査での正しい対応・入居判断のポイント

障害年金受給者が賃貸を申し込む場合、不動産会社の担当者として押さえておくべきポイントがあります。厳しいところですね、この分野は知識の差が対応の差になります。

まず、「障害年金は収入として審査に使えるか?」という問題があります。結論として、障害年金は多くの保証会社では「収入」とみなされないケースが多数です。給与収入や事業収入と違い、「継続性はあるが雇用による収入ではない」という判断をされやすいのが実情です。

ただし、これは保証会社によって異なります。一部の独立系保証会社では、障害年金を安定した国からの収入として柔軟に評価するケースもあります。信販系の保証会社ほど厳格で、独立系のほうが柔軟な傾向があることを覚えておくと、提案の幅が広がります。

2017年に施行された「障害者差別解消法」により、精神疾患を理由とした一方的な入居拒否は原則として認められません。正当な理由(家賃支払い能力がない、過去の近隣トラブルなど)がなければ、障害を理由とした拒否は法律違反となる可能性があります。これは知らないと法的リスクです。

不動産業者として実務的に取り組める方法をまとめると。

  • 🏦 預金審査の活用:家賃の2年分程度の預貯金があれば支払い能力の証明になります(例:家賃6万円なら144万円の預金が目安)
  • 🤝 連帯保証人の活用:一定収入のある族を保証人に立てることで、保証会社の審査を回避できます
  • 🏠 独立系保証会社への切り替え:信販系より審査が柔軟なケースが多く、通過率が上がります

現場での判断として、「障害年金受給者だから無条件に断る」のではなく、収入源の安定性・預金残高・保証人の有無を総合的に判断する姿勢が、法律的にも正しい対応です。

社労士事務所よこさん|障害年金受給者の賃貸審査対策(具体的な方法と注意点)

不動産従事者だからこそ知っておきたい・住宅セーフティネット制度と認定基準の活用

空室に悩むオーナーにとって、障害年金受給者を含む「住宅確保要配慮者」への対応は、収益安定につながる可能性があります。これは使えそうです。

「住宅セーフティネット制度」は2017年10月にスタートした国の制度で、低所得者・高齢者・障害者・子育て世帯などを対象に、民間賃貸住宅での居住を支援する仕組みです。障害年金受給者もこの「住宅確保要配慮者」に該当します。

この制度に物件を登録すると、オーナー側には以下のメリットがあります。

  • 🔧 バリアフリー化などの改修費用補助:登録物件への改修費用の一部を行政が補助します
  • 📊 家賃低廉化補助:自治体によっては家賃差額の補助を受けながら入居者に安く貸し出せます
  • 🏡 入居者の安定確保:空室期間が短縮され、収益の安定に直結します

不動産仲介業者の役割としては、オーナーにこの制度のメリットを説明し、登録を促すことが重要です。「入居を拒まない物件」として登録するだけで行政の支援対象になる仕組みは、空室問題を抱えるオーナーにとっても有意義です。

賃貸仲介の実務では、住宅確保要配慮者のお客様が来店した際に「自治体の住宅支援課への問い合わせ同行」「セーフティネット住宅の紹介」「行政窓口の案内」といったサポートを行うことで、他社との差別化につながります。こういった対応が信頼の積み上げになります。

国土交通省が運営する「セーフティネット情報提供システム」を使えば、エリア・家賃・間取り・入居対象者別に物件を検索できます。担当するお客様がいれば、まずこのサイトで検索を試みるのが一手です。

参考として、CHINTAI JOURNALの記事「不動産会社が意識すべき住宅確保要配慮者への対応」では、行政との連携ステップや大家との信頼関係構築の具体例が解説されています。

CHINTAI JOURNAL|不動産会社が意識すべき「住宅確保要配慮者」への対応(実務的な対応事例つき)
国土交通省|住宅セーフティネット制度の概要(制度の公式情報)

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