リースバックデメリット注意点と売却価格家賃相場トラブル回避

リースバックデメリット注意点と対策

顧客の利益を優先せず安易にリースバックを提案すると、あなたの信頼が一気に失われます。

この記事の3ポイント要約
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売却価格と家賃の実態

リースバックの売却価格は市場相場の70%程度、家賃は期待利回り7~13%で算出され周辺相場より高額になる傾向があります。

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契約更新と居住リスク

定期借家契約が多く2~3年で契約満了、再契約できないリスクや業者の転売・倒産により住めなくなる可能性があります。

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トラブル急増の現実

国民生活センターへの相談件数は2024年度に239件と5年で10倍に急増、8割が60歳以上の高齢者からの相談です。

リースバックの売却価格が市場相場より大幅に安くなる理由

 

リースバックでの売却価格は、一般的な不動産売却と比較して市場相場の70%程度にまで下がります。

この価格設定には明確な理由があります。

不動産会社がリースバックで物件を買い取る際、通常の売却とは異なり「すぐに転売できない」というリスクを抱えることになります。売主がそのまま賃借人として住み続けるため、買取後すぐに第三者へ売却して利益を得ることができません。また、賃借人が家賃を滞納するリスク、物件の価値が下落するリスク、さらには将来的な再販売時の不確実性も考慮する必要があります。

例えば、市場価格3,000万円の物件であれば、リースバックでの買取価格は2,100万円程度になる計算です。これは900万円もの差額が生じることを意味します。仮に40坪の戸建て住宅なら、1坪あたり約22万円も安く売却することになるのです。

つまり資金調達が目的でも、大きく目減りします。

この売却価格の低さを顧客に事前に説明せず、「現金化できます」とメリットだけを強調すると、後から「こんなに安いとは思わなかった」というクレームにつながります。複数の不動産会社に査定を依頼し、市場価格との差額を明確に示すことが、不動産業者としての誠実な対応です。

また、住宅ローンの残債が多い場合、売却価格では完済できないオーバーローン状態になる可能性もあります。この場合は原則としてリースバック自体が利用できないため、事前の残債確認が必須です。

リースバック後の家賃が周辺相場より高くなる仕組み

リースバックで設定される家賃は、周辺の賃貸相場とは異なる計算方法で決定されます。その結果、一般的な賃貸物件より高額になるケースが多いのです。

家賃の計算式は「買取価格×期待利回り(年率7~13%)÷12ヶ月+維持管理費」となります。例えば、2,100万円で買い取った物件に10%の利回りを設定すると、年間210万円、月額17.5万円の家賃になります。さらに固定資産税や火災保険料などの維持管理費が上乗せされる場合もあります。

一方、同じエリアの同等物件の賃貸相場が月12万円だとすると、月額5.5万円も高い計算です。年間では66万円、5年間で330万円もの差額が発生することになります。

これは軽自動車が2台買えるほどの金額です。

家賃が高い理由は明確です。

不動産会社は買取価格を回収し、さらに利益を確保する必要があります。通常の賃貸経営なら購入後すぐに賃貸に出せますが、リースバックではすでに賃借人が住んでいる状態からスタートするため、利回りを高く設定せざるを得ないのです。

さらに注意が必要なのは、契約更新時に家賃が値上げされるケースです。国民生活センターに寄せられた相談でも「更新時に家賃の大幅な引き上げを要求された」という事例が報告されています。当初は支払い可能でも、数年後に家賃が上昇して生活が圧迫される可能性を、顧客に伝える必要があります。

国民生活センター「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!」

リースバック契約の定期借家契約と居住継続リスク

リースバックでは、多くの場合「定期借家契約」が採用されます。これは普通借家契約とは大きく異なり、契約期間満了時に自動新されない契約形態です。

定期借家契約の一般的な契約期間は2~3年です。期間満了後は、貸主の同意がなければ再契約できず、住み続けることができなくなります。日本の賃貸市場全体では、定期借家契約の利用割合はわずか2.1%ですが、リースバックにおいては主流となっているのです。

どういうことでしょうか?

不動産会社の立場から見れば、将来的に物件を転売して利益を得るビジネスモデルのため、長期間の居住を保証したくないという事情があります。普通借家契約では借主が強く保護されるため、貸主側から契約解除することがほぼ不可能になってしまいます。

実際のトラブル事例として、「契約時は『ずっと住める』と口頭で説明されたが、2年後に再契約を拒否され退去を迫られた」というケースがあります。契約書には定期借家契約と明記されていても、営業担当者の口頭説明を信じてしまい、後から気づくパターンです。

再契約の可否は業者次第です。

対策としては、契約書に「再契約の可能性」や「再契約の条件」を明記してもらうことが重要です。また、普通借家契約での締結が可能かどうかを交渉する余地もあります。ただし、普通借家契約を選択すると、買取価格がさらに低くなる可能性があることも説明する必要があります。

不動産業者として顧客にリースバックを提案する際は、「何年住めるのか」「再契約の条件は何か」を契約前に明確にし、書面で確認することが信頼関係を保つ鍵となります。

リースバックの買い戻し価格が非現実的な理由

リースバックでは「将来買い戻せる」という条項が設けられることがありますが、実際には買い戻しが困難なケースが大半です。その最大の理由が、買い戻し価格の設定にあります。

買い戻し価格は、売却価格の1.1倍から1.3倍に設定されるのが一般的です。例えば、2,100万円で売却した物件を買い戻す場合、2,310万円から2,730万円が必要になります。しかも、この金額は売却時より高いにもかかわらず、元々の市場価格3,000万円よりは低い設定です。

つまり、資金難で売却したのに、数年後にさらに高額な資金を用意しなければならないという矛盾が生じます。仮に年間100万円ずつ貯蓄できたとしても、3年間で300万円。2,310万円を用意するには23年以上かかる計算になります。

買い戻しは現実的ではありません。

さらに問題なのは、買い戻し時に住宅ローンを利用しようとしても、審査が通りにくい点です。金融機関から見れば「一度売却した物件を買い戻す」という特殊なケースであり、申込者の信用状態も以前より悪化している可能性が高いため、融資判断が厳しくなります。

実際のトラブル事例として、「3年後に買い戻す約束で契約したが、提示された買い戻し価格が当初の1.3倍で、とても支払えない」という相談があります。契約書に買い戻し条項があっても、価格が明記されていないケースや、「市場価格を基準とする」といった曖昧な表現の場合、後から高額な価格を提示されるリスクがあります。

不動産業者として顧客に説明する際は、買い戻し価格を具体的な金額で契約書に明記すること、買い戻しを前提とした資金計画が現実的かどうかを一緒に検討することが必要です。「買い戻せる」という言葉だけで安心させるのは、プロとして無責任な対応と言えます。

リースバックの修繕費負担トラブルを回避する契約確認

リースバック後の修繕費負担について、貸主と借主の間で認識のズレが生じ、トラブルになるケースが増えています。通常の賃貸契約との違いを正しく理解する必要があります。

一般的な賃貸契約では、建物の構造部分や設備の経年劣化による修繕は貸主(オーナー)が負担し、借主の故意や過失による損傷は借主が負担するのが原則です。しかし、リースバック契約では特約により「すべての修繕費を借主が負担する」と定められているケースが少なくありません。

具体例を挙げると、外壁の塗装(一戸建ての場合50万~100万円)、屋根の修繕(30万~80万円)、給湯器の交換(15万~25万円)、エアコンの故障(1台あたり10万~20万円)などが発生した場合、本来は貸主負担であるべき費用が借主に請求される可能性があります。

これは想定外の出費です。

特に問題となるのは、リースバック前から存在していた不具合や、経年劣化による故障です。「売却前は所有者として修繕義務があったが、売却後は賃借人として修繕費を負担する」という矛盾した状況が生まれます。

実際のトラブル事例として、「賃貸になったので修繕は貸主がやってくれると思っていたが、契約書の特約で借主負担と書かれており、給湯器交換で20万円を請求された」というケースがあります。契約時に説明を受けていても、数年後に実際に修繕が必要になった時点で初めて負担の重さに気づくパターンです。

修繕費の負担区分を明確にする対策として、契約書に具体的な修繕項目と負担者を一覧表にして添付する方法があります。例えば「外壁・屋根→貸主負担」「室内設備(故意・過失)→借主負担」「室内設備(経年劣化)→貸主負担」といった形で明記します。

不動産業者として顧客にリースバックを提案する際は、修繕費の年間想定額(一戸建てなら年20万~30万円程度)を試算し、家賃と合わせた総支出額を示すことが重要です。「住み続けられる」という利点だけでなく、維持費用の現実も伝えることで、後のトラブルを防げます。

リースバック業者の倒産と転売による居住リスク

リースバック後、買い取った不動産会社が倒産したり、第三者に物件を転売したりすることで、居住環境が大きく変わるリスクがあります。これは顧客にとって予期せぬ重大なリスクです。

不動産会社が倒産した場合、物件は破産管財人によって売却されるか、債権者に引き渡されることになります。新しい所有者に賃貸借契約は引き継がれますが、新所有者の方針次第では、家賃の大幅な値上げや、契約更新の拒否といった事態が発生する可能性があります。

また、倒産でなくても、買取業者が自らの判断で第三者に物件を転売するケースもあります。リースバックで買い取った物件の所有権は完全に業者に移転しているため、業者は法的に転売する権利を持っています。転売後の新所有者が、以前の契約条件を維持してくれる保証はありません。

契約内容が変わるリスクがあります。

実際のトラブル事例として、「知らない間に物件が第三者に売却されており、新所有者から『定期借家契約は更新しない』と通告された」というケースがあります。元の業者とは良好な関係を築いていても、新所有者とは一から関係を構築する必要があり、交渉力も大きく変わってしまいます。

対策としては、契約書に「転売禁止特約」を盛り込むことが考えられます。ただし、この特約を受け入れてくれる業者は限られており、受け入れる場合でも買取価格がさらに低くなる可能性があります。また、転売禁止特約があっても、倒産時には法的に無効となるケースもあります。

もう一つの対策は、信頼性の高い大手企業や、リースバック専門で実績のある業者を選ぶことです。企業の財務状況、過去の実績、口コミ評価などを総合的に判断し、倒産リスクの低い業者を選定することが重要です。

不動産業者としては、提携する業者の信頼性を自ら確認し、顧客に推薦する責任があります。「とりあえず買い取ってくれる業者」ではなく、「長期的に安定した関係を維持できる業者」を紹介することが、プロとしての務めです。業者選定の基準として、設立年数(最低5年以上)、資本金額、過去の倒産・トラブル履歴、金融機関との取引実績などを確認しましょう。

リースバック提案時に不動産業者が確認すべき顧客の適性判断

リースバックは万能な解決策ではなく、顧客の状況によっては不適切な選択となる場合があります。不動産業者として、顧客に本当に適しているかを冷静に判断する必要があります。

まず、リースバックが適さないケースを明確にしましょう。住宅ローンの残債が市場価格の8割以上ある場合、リースバックの買取価格(市場価格の70%程度)では完済できないため、原則として利用できません。また、相続として不動産を子供に残したい希望がある場合、所有権を失うリースバックは目的に反します。

さらに、月々の収入が不安定で家賃の継続的な支払いに不安がある場合も、リースバックは適していません。現在は住宅ローンの支払いに困っていても、リースバック後の家賃が同等かそれ以上になる可能性が高いため、根本的な解決にならないからです。

支払い能力の見極めが必要です。

一方、リースバックが有効なケースもあります。一時的に大きな資金が必要だが、数年後には収入が回復する見込みがある場合(事業資金の確保、教育費の一括支払いなど)、住み慣れた家を離れたくない高齢者で、相続人がいない、または相続人が不動産を必要としていない場合、そして離婚に伴う財産分与で、一方が住み続けたい場合などです。

国民生活センターの報告によると、リースバックに関する相談の約8割が60歳以上の高齢者からです。高齢者の場合、契約内容の理解が不十分なまま契約してしまうケースが多く、「何時間も勧誘され続けた」「マンションを売るよう執拗に勧誘された」といった強引な営業手法も報告されています。

消費者庁「堀井消費者庁長官記者会見要旨」リースバック相談件数増加について

不動産業者として、高齢者に対しては特に慎重な対応が求められます。家族や専門家(弁護士、税理士、ファイナンシャルプランナーなど)への相談を促し、複数の選択肢(任意売却、リバースモーゲージ、通常の売却と住み替えなど)を提示した上で、十分な検討期間を設けることが重要です。

顧客の判断材料として、以下の比較表を作成して提示することも有効です。

項目 リースバック 通常売却 リバースモーゲージ
売却価格 市場の70%程度 市場価格 融資(売却なし)
居住継続 可能(家賃必要) 不可 可能
所有権 失う 維持
月々の支払い 家賃 新居の家賃 利息のみ

顧客の利益を最優先に考え、リースバックのデメリットもメリットも包み隠さず説明することが、長期的な信頼関係を築く基盤となります。目先の成約だけを追い求める姿勢は、結果的に自身の評判を落とし、業界全体の信頼性を損なうことにつながります。

クーリングオフも適用されません。

リースバックは不動産売買契約であり、事務所や自宅での契約の場合、クーリングオフ制度の対象外です。一度契約すると原則として解約できないため、契約前の慎重な判断が極めて重要です。このことも顧客に必ず伝えるべき重要事項です。


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