両手仲介手数料と違法性リスク回避

両手仲介の手数料と上限額

賃貸の両手仲介では借主から1ヶ月分請求するが法律上は0.5ヶ月が原則です

📋 この記事の3ポイント要約
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手数料の上限額を理解する

売買では売主買主双方から最大3%+6万円+消費税、賃貸では原則0.5ヶ月分が上限で両者合わせて1ヶ月分まで受領可能

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囲い込みリスクと2025年規制

両手仲介を狙った囲い込みは2025年1月から行政処分の対象となり、売主に機会損失や価格低下のリスクを与える行為として厳しく規制されています

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手数料計算と値引き交渉

400万円超の物件は「売買価格×3%+6万円+消費税」で計算し、両手仲介では値引き交渉がしやすいが片手より報酬が2倍になるため慎重な対応が必要

両手仲介の手数料の仕組みと法定上限

両手仲介では不動産会社が売主と買主の双方から仲介手数料を受け取ることができます。売買取引では、売主と買主それぞれから「売買価格×3%+6万円+消費税」を上限として受領可能です。つまり売買価格が3,000万円の場合、片方から最大105.6万円、両手では合計211.2万円の手数料収入となります。

これは物件価格400万円超の場合の計算式です。どういうことでしょうか?

正確には、200万円以下の部分は5%、200万円超400万円以下の部分は4%、400万円超の部分は3%と段階的に設定されています。ただし実務上は簡略化して「売買価格×3%+6万円+消費税」という速算式を使うのが一般的です。例えば5,000万円の物件であれば、5,000万円×3%+6万円=156万円に消費税を加えて171.6万円が片側の上限となり、両手なら343.2万円まで受領できる計算になります。

賃貸取引の両手仲介では状況が大きく異なります。宅地建物取引業法の規定では、貸主と借主の双方を合わせて家賃1ヶ月分+消費税が上限です。原則として貸主から0.5ヶ月分、借主から0.5ヶ月分の配分が基本とされています。

実際には借主から1ヶ月分を受領するケースが多いですね。

これは借主の事前承諾があれば可能とされているためです。しかし法令上の原則は双方から0.5ヶ月分ずつであることを理解しておく必要があります。仮に家賃10万円の物件なら、原則では貸主5.5万円・借主5.5万円の配分となり、承諾があれば借主から11万円全額を受領することも可能という仕組みです。この原則を知らずに運用していると、後にトラブルの原因となる可能性があります。

国土交通省の仲介手数料に関する告示では、賃貸の場合の詳細な規定を確認できます。

両手仲介と片手仲介の手数料の違い

両手仲介と片手仲介では不動産会社が受け取る報酬額に大きな差が生じます。片手仲介では売主または買主のどちらか一方からのみ手数料を受け取るため、3,000万円の物件なら105.6万円が収入です。一方、両手仲介なら同じ物件で211.2万円の収入となり、労力はほぼ同じでも報酬は2倍になります。

つまり収益性が倍増するということですね。

この収益構造が不動産会社に両手仲介を強く志向させる動機となっています。営業担当者には「両手を狙うこと」が事実上のノルマとして課されている会社も存在します。特に大手仲介会社では組織的に両手を追求する風土があり、これが後述する「囲い込み」問題につながっているのです。

片手仲介の場合は客付業者と元付業者が分かれるため、売主と買主それぞれに専属の担当者がつきます。売主側の業者は売主の利益を最優先し、買主側の業者は買主の利益を追求する構造です。これにより利益相反のリスクは低減されますが、業者間の調整に時間がかかる場合もあります。

両手仲介では1社が双方を担当するため交渉がスムーズに進む利点があります。売主と買主の間で直接調整できるため、価格交渉や条件調整が迅速に行えます。また手数料の値引き交渉にも応じやすい傾向があります。仲介会社は双方から手数料を得ているため、片方の手数料を少し減額しても全体として利益が確保できるためです。

手数料調整で成約に導けるわけです。

例えば売主が2,500万円を希望し買主が2,450万円を提示した場合、仲介会社が売主買主双方の手数料をそれぞれ20万円ずつ値引きすることで、実質的に40万円の価格調整となり合意に至るケースがあります。これは両手仲介ならではの柔軟性と言えるでしょう。

両手仲介の手数料計算の実例と注意点

具体的な手数料計算を見ていきましょう。売買価格4,000万円の物件を両手仲介で成約させた場合、売主側の手数料は4,000万円×3%+6万円=126万円に消費税10%を加えて138.6万円です。買主側も同額となるため、不動産会社の総収入は277.2万円となります。

この金額は1件の取引としてはかなり大きいです。

5,000万円の物件なら片側171.6万円で両手なら343.2万円、1億円の物件なら片側336.6万円で両手なら673.2万円にもなります。これだけの報酬差があるため、不動産会社が両手仲介にこだわる理由は明白です。

ただし400万円以下の低額物件では特例措置があります。2018年の法改正により、売買価格が400万円以下の物件については、売主から最大18万円+消費税まで受領できるようになりました。通常の計算式だと400万円の物件は18万円+消費税となりますが、これが下限として設定されたのです。空き家対策の一環として、低額物件の流通を促進する狙いがあります。

賃貸の両手仲介では計算がシンプルです。家賃15万円の物件なら、原則では貸主から8.25万円、借主から8.25万円で合計16.5万円が上限となります。ただし借主の承諾があれば借主から16.5万円全額を受領することも可能です。逆に貸主の承諾があれば貸主から全額受領することもできますが、実務上は借主が全額負担するケースが圧倒的に多い状況です。

この計算を誤ると法令違反になります。

上限を超えて請求すると宅地建物取引業法違反となり、行政処分の対象となります。近年も上限超過請求で処分を受けた事例が報告されているため、正確な計算が不可欠です。

仲介手数料の計算では消費税の取り扱いにも注意が必要です。消費税は手数料本体に対して課税されるため、「売買価格×3%+6万円」で算出した金額に1.1を乗じることになります。売買価格に消費税を含めて計算するという誤りをしてはいけません。居住用不動産の売買価格自体には消費税が含まれていないためです。

両手仲介におけるあんこ取引の手数料配分

不動産業界特有の「あんこ取引」についても理解しておく必要があります。あんこ取引とは、売主側の元付業者と買主側の客付業者の間に、さらに別の仲介業者が介在する取引形態です。饅頭の餡子のように真ん中に挟まることから「あんこ」と呼ばれています。

どういう状況で発生するんでしょうか?

例えば元付業者Aが売主から媒介依頼を受け、業者Bが別の業者Cから物件紹介を受けて買主を見つけた場合、A-B-Cの3社が関与することになります。この場合の手数料配分は、売主からAが受領し、買主からCが受領し、BはCから一部を受け取る形が一般的です。ただし売主と買主が支払う手数料の上限は変わりません。

あんこ業者の報酬は、多くの場合、客付業者との間で協議して配分されます。例えば買主側の手数料105.6万円を業者Bと業者Cで折半するなどです。ただしこの配分は当事者間の合意によるもので、法令上の定めはありません。

あんこ取引自体は違法ではありません。

しかし中には不透明な手数料のやり取りや、文書の偽造、コンサルティング料の名目での上乗せ請求など、違法な手段で報酬を得ようとする悪質なあんこ業者も存在します。また、あんこが入ることで情報伝達が複雑化し、売主や買主に正確な情報が届かないリスクもあります。適切に業務を行っているあんこ業者もいますが、取引構造が複雑化することでトラブルの可能性が高まる点には注意が必要です。

売主や買主は自分の取引にあんこ業者が介在しているかを確認する権利があります。媒介契約書や重要事項説明書で関与業者を確認し、不明な点があれば説明を求めることが重要です。

両手仲介での手数料値引き交渉のポイント

両手仲介では手数料の値引き交渉がしやすいと言われますが、そのタイミングと方法には注意が必要です。最も効果的なタイミングは媒介契約を結ぶ前です。契約締結後では交渉の余地が大幅に減少します。

契約前が交渉のチャンスということですね。

複数の不動産会社から査定を取り、それぞれの手数料条件を比較することが有効です。「A社は手数料半額と言っているが、御社はどうか」といった具体的な比較材料を示すことで、交渉が進みやすくなります。

ただし手数料だけで会社を選ぶのは危険です。

安くても販売力が弱ければ意味がありません。

専任媒介契約や専属専任媒介契約の場合、一般媒介契約より値引きに応じてもらいやすい傾向があります。不動産会社としては独占的に売却を任されるため、多少手数料を下げても確実に受注できるメリットがあるためです。

中小の不動産会社の方が値引き交渉に柔軟なケースが多いです。大手は料金体系が硬直的で、営業担当者に値引きの裁量権が少ない場合があります。一方、中小企業では社長や役員の判断で柔軟に対応できることが多いのです。

両手仲介が成立する見込みの場合、特に値引き交渉がしやすくなります。不動産会社は両側から手数料を得られるため、片方を少し減額しても十分な利益が確保できます。例えば売主の手数料を20%値引きしても、買主側から満額を受け取れれば全体では上限の8割の収入となり、片手仲介の1.6倍の報酬が得られる計算です。

値引きを求めすぎると逆効果もあります。

過度な値引き要求は不動産会社のモチベーション低下につながり、販売活動が消極的になるリスクがあります。また、手数料を極端に下げると、広告費用をかけられず、結果的に売却期間が長引いたり、売却価格が下がったりする可能性もあります。

適度な交渉が重要です。

手数料無料や大幅値引きをうたう不動産会社も増えていますが、その仕組みを理解することが大切です。多くの場合、売主側で両手仲介が確実に見込める場合や、不動産会社自身が売主の場合に無料としています。仲介ではなく売主として販売する場合、仲介手数料は発生しませんが、その分、物件価格に上乗せされている可能性もあります。

片手仲介専門の不動産会社の記事では、透明性の高い取引について詳しく解説されています。

両手仲介における囲い込みと2025年規制強化

両手仲介を狙った「囲い込み」は不動産業界の深刻な問題です。囲い込みとは、売主から媒介依頼を受けた不動産会社が、他社からの問い合わせに対して「既に申込みが入っている」「商談中」などと虚偽の説明をして情報を遮断し、自社で買主を見つけて両手仲介を実現しようとする行為です。

売主に大きな損害を与える行為です。

囲い込みをされると、本来なら購入希望者が複数いるはずの物件が市場に出回らず、売却機会を逃します。内見の機会が減り、売却期間が長期化し、最終的には価格を下げざるを得なくなります。ある調査では、囲い込みによって売主が被る経済的損失は数百万円に上るケースもあると報告されています。

2025年1月から宅地建物取引業法施行規則が改正され、囲い込みに対する規制が大幅に強化されました。改正の要点は、専任媒介契約や専属専任媒介契約を結んだ不動産会社に対して、レインズ(不動産流通機構)への物件登録と状況更新を厳格に義務付けたことです。

具体的には何が変わったんでしょうか?

不動産会社はレインズに物件を登録する際、「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」という3つのステータスを正確に設定し、状況変化があれば速やかに更新する義務が課されました。虚偽の状況登録や更新懈怠は、宅地建物取引業法第65条に基づく指示処分の対象となります。

指示処分を受けると、都道府県の公報に社名が掲載され、業界内外に悪評が広がります。さらに指示に従わない場合は業務停止処分や免許取消処分に進む可能性もあります。この処分歴は宅地建物取引業者名簿に記載され、取引先や顧客から信用を失う重大なリスクとなります。

改正後の報告義務も強化されています。専任媒介契約では2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上、売主に対して販売活動の状況を報告しなければなりません。報告内容には「他社からの問い合わせ件数」「広告掲載媒体」「掲載期間」「他社からの紹介状況」など、囲い込みの有無を判断できる具体的な項目を含める必要があります。

2025年囲い込み規制に関する詳細記事では、改正の背景と影響について詳しく解説されています。

売主としては、定期報告の内容を注意深く確認することが重要です。報告が曖昧だったり、具体的な数字がなかったりする場合は、囲い込みの可能性を疑うべきです。またレインズの登録証明書を受け取り、自分でステータスを確認できる確認サイトをチェックすることも有効な対策となります。

囲い込みのリスクを最も避けやすいのは一般媒介契約です。一般媒介契約では複数の不動産会社に同時に依頼できるため、1社による情報独占が起こりません。ただし一般媒介ではレインズ登録義務がないため、逆に情報が広がらないリスクもあります。専任系契約と一般媒介、それぞれの特性を理解して選択することが大切です。