債務者債権者どっち?違いと覚え方

債務者債権者の違いと基本

売買契約で買主が即座に債務者とは限りません。

この記事の3ポイント要約
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債権者と債務者は立場が入れ替わる

不動産売買では同じ人が「物件引渡しの債権者」かつ「代金支払いの債務者」になる双方向の権利義務関係が発生します

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任意売却での債権者対応は複雑

住宅ローン返済不能時は金融機関が債権者として抵当権を行使し、債務者は任意売却で交渉する選択肢があります

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説明義務違反は不動産業者のリスク

債権債務関係の説明不足で契約トラブルになると、仲介業者が説明義務違反を問われる可能性があります

債務者と債権者の基本定義と覚え方

 

不動産実務で債務者と債権者を混同すると、契約書類の作成ミスや説明不足につながります。債務者とは、債権者に対して特定の行為をする義務を負う人のことです。債権者は、債務者に対して特定の行為を請求できる権利を持つ人を指します。

漢字の成り立ちで覚えるのが確実です。「債権」の「権」は「権利」を意味し、「債務」の「務」は「義務」を表しています。つまり債権は請求する権利、債務は履行する義務ということですね。

金銭消費貸借契約を例にすると、お金を貸した銀行が債権者となり、借りた個人が債務者になります。銀行には返済を受ける権利があり、個人には返済する義務が発生するわけです。

この関係を「債権債務関係」と呼びます。

不動産業従事者として押さえておきたいのは、一つの取引で両者の立場が複数存在する点です。売買契約では、物件の引渡しについて売主が債務者で買主が債権者ですが、代金支払いについては売主が債権者で買主が債務者となります。

どちらも正しいということですね。

住宅ローンを組む場合、金融機関は融資金の返済を受ける債権者となり、購入者は返済義務を負う債務者になります。同時に金融機関は債務者の不動産に抵当権を設定し、返済不能時の担保とします。このような権利関係を正確に理解することで、顧客への説明がスムーズになるでしょう。

実務では契約書や重要事項説明書に「債権者」「債務者」という用語が頻出します。作成時に立場を取り違えると、法的効力に影響する可能性があるため、常に「誰が何を請求できるのか」「誰が何をする義務があるのか」を意識することが重要です。

債務者と債権者が入れ替わる不動産売買の具体例

不動産売買契約では、同一人物が債権者と債務者の両方の立場を同時に持ちます。

これは双務契約という契約形態の特徴です。

具体的な場面を見ていきましょう。

Aさんが3000万円で不動産をBさんに売却する契約を結んだとします。物件の引渡しに関しては、Aさんが「物件を引き渡す義務」を負う債務者、Bさんが「物件を受け取る権利」を持つ債権者です。一方、代金の支払いに関しては、Bさんが「代金を支払う義務」を負う債務者、Aさんが「代金を受け取る権利」を持つ債権者となります。

つまり同じ契約内で立場が入れ替わるわけです。

この仕組みを理解していないと、契約書の「甲(売主)は物件を引き渡す義務を負い、乙(買主)は代金を支払う義務を負う」という条項の意味を顧客に正確に説明できません。特に不動産取引が初めての顧客には、「あなたは買主として物件を受け取る権利がありますが、同時に代金を支払う義務もあります」と明示する必要があります。

賃貸借契約でも同様の構造があります。賃貸人(大家)は物件を使用させる義務を負う債務者であり、賃料を受け取る権利を持つ債権者です。賃借人(借主)は賃料を支払う義務を負う債務者であり、物件を使用する権利を持つ債権者となります。契約書作成時に混同すると後々トラブルになるでしょう。

実務上の注意点として、契約不適合責任の場面では売主が債務者の立場が強調されます。引き渡した物件が契約内容に適合しない場合、買主(債権者)は売主(債務者)に対して追完請求や損害賠償を請求できます。民法改正後はこの点が明確化されたため、説明時に意識することが大切です。

freee会計の債権債務解説では、双務契約における権利義務関係の実務的な整理方法が詳しく説明されています。

債務者と債権者が問題になる任意売却の実務

住宅ローン返済が困難になった場合、債務者と債権者の関係が複雑に絡み合います。任意売却はこの局面で重要な選択肢となるでしょう。

任意売却とは、債務者がローン返済不能に陥った際、競売の前に債権者の同意を得て不動産を売却する方法です。通常の売却価格では残債務を完済できない状況で、債権者である金融機関が抵当権の抹消に同意することで成立します。債務者にとっては市場価格に近い金額で売却でき、残債務を減らせるメリットがあります。

競売との違いは明確です。競売は裁判所が強制的に不動産を売却する手続きで、売却価格が市場価格の7割程度になることも珍しくありません。任意売却なら8~9割程度で売却できる可能性が高く、債務者の経済的負担が軽減されます。債権者にとっても回収額が増えるため、双方にメリットがあるわけです。

ただし任意売却には債権者の同意が必須です。複数の債権者がいる場合、すべての債権者から同意を得る必要があり、交渉が難航するケースもあります。特に後順位抵当権者は配当が少ないため、同意しないことがあります。

結局は同意が得られないということですね。

不動産業従事者として任意売却を扱う場合、債務者に対して「債権者との交渉は専門知識が必要です」と伝え、弁護士や任意売却専門業者との連携を提案すべきです。債権者との折衝では、残債務の返済計画や引越し費用の捻出など、細かい条件交渉が発生します。この段階で債務者の立場を守りつつ、債権者の利益も考慮したバランスの取れた提案が求められます。

全国任意売却協会の解説には、債権者との具体的な交渉手順や必要書類が詳しく記載されています。

競売になると債務者は買受人を選べませんが、任意売却なら購入者を選定できる点も重要です。例えば親族に購入してもらい、リースバックで住み続けるという選択肢もあります。債権者にとっても早期回収が見込めるため、交渉次第で柔軟な対応を引き出せるでしょう。

債権者代位権が絡む不動産取引の特殊ケース

債権者代位権は、債務者が自己の権利を行使しない場合に、債権者が代わりに行使できる制度です。

不動産取引では特殊な場面で登場します。

典型例は不動産の連続売買です。A→B→Cと不動産が転売されたものの、BがAに対する所有権移転登記請求権を行使しないため、Cも登記を受けられない状況を考えてみましょう。この場合、CはBに対する登記請求権を被保全債権として、BのAに対する登記請求権を代位行使できます。結果としてA→B→Cと連続して登記が実行されるわけです。

賃借不動産の不法占拠のケースも重要です。賃借人は賃借権を保全するため、賃貸人(所有者)が第三者に対して持つ妨害排除請求権を代位行使できます。例えば借りている土地に第三者が無断で建物を建てた場合、賃借人が賃貸人に代わって撤去を請求できるということですね。

根抵当権者が債務者の不動産を保全するケースもあります。根抵当不動産に第三者が不法に占有している場合、根抵当権者は債務者が持つ明渡請求権を代位行使し、担保価値の維持を図れます。

つまり担保物件の価値を守れます。

不動産業従事者がこの制度を知っておくべき理由は、登記トラブルの解決策として提案できるからです。中古不動産の売買で登記が数代前から更新されていないケースでは、債権者代位権を使った一括登記が必要になることがあります。このような案件では司法書士と連携し、法的手続きを正確に進める必要があります。

ただし債権者代位権には要件があります。被保全債権が存在し、債務者が権利を行使しておらず、債務者が無資力である場合に限られます。実務では無資力要件が緩和される場合もあるため、個別事例での法的判断が欠かせません。

契約ウォッチの債権者代位権解説では、不動産取引での具体的な行使方法が事例付きで説明されています。

特殊な権利関係が絡む物件を扱う際は、事前に弁護士や司法書士に相談し、債権者代位権の適用可能性を検討することが賢明です。顧客に対しても「登記の問題は法的手続きが必要です」と明確に伝え、専門家への依頼を推奨しましょう。

債務不履行時の債権者の権利と不動産業者の対応

債務者が債務を履行しない場合、債権者には法的な対抗手段があります。不動産業従事者はこの流れを理解し、トラブル防止に努める必要があります。

債務不履行には3つの類型があります。履行遅滞は期限までに債務を履行しない状態、履行不能は債務の履行が不可能になった状態、不完全履行は履行したが内容が不十分な状態です。不動産売買では、引渡期日に物件を引き渡さない場合が履行遅滞、火災で物件が滅失した場合が履行不能、契約と異なる状態で引き渡した場合が不完全履行に該当します。

債権者は債務不履行に対して損害賠償請求ができます。民法改正後は債務者の帰責事由が不要となり、債権者に帰責事由がない限り請求可能になりました。

つまり請求しやすくなったわけです。

契約解除も重要な権利です。債権者が相当期間を定めて履行を催告しても債務者が応じない場合、契約を解除できます。無催告解除が認められるケースもあり、債務の全部が履行不能の場合や債務者が履行拒絶の意思を明確にした場合などが該当します。不動産売買では手付解除や危険負担による解除など、特別な解除事由も存在します。

強制執行は最終手段です。債権者が勝訴判決など債務名義を取得すれば、裁判所を通じて債務者の財産を差し押さえ、強制的に債権を回収できます。不動産の場合は競売手続きとなり、売却代金から配当を受けます。差押えには優先順位があり、抵当権者は一般債権者より優先されます。

不動産業者として注意すべきは、契約書に債務不履行の条項を明確に記載することです。違約金の額、解除の条件、損害賠償の範囲などを具体的に定めておけば、トラブル時の対応がスムーズになります。特に売主が債務不履行に陥るリスクが高い物件では、手付金の額や違約金の設定を慎重に検討すべきです。

重要事項説明では、債務不履行時のリスクを顧客に伝える必要があります。「もし相手方が契約を守らない場合、このような法的手段があります」と説明し、契約書の条項と照らし合わせて確認してもらいましょう。説明不足で後々「知らなかった」とクレームを受けないよう、記録を残すことも大切です。

抵当権が設定されている物件の売買では、債権者である金融機関の同意が必要なケースがあります。特に任意売却や親族間売買では、金融機関との調整が複雑になるため、早めに専門家を交えた協議を提案しましょう。

HOME4Uの債務不履行解説には、不動産売買における具体的なリスクと対処法が詳しく記載されています。

トラブルが発生した場合、まず契約書の条項を確認し、債権者・債務者双方の主張を整理することが基本です。感情的な対立に発展する前に、法的根拠を示しながら冷静に協議を進める姿勢が、不動産業者としての信頼につながります。


多重債務者の裏ワザ復活術