専属専任媒介買う側値引き交渉の実態と注意点

専属専任媒介買う側値引き交渉

買主側の仲介手数料値引きは断られるケースが8割です。

この記事の3つのポイント
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買主側の値引き交渉は困難

専属専任媒介でも買主側への仲介手数料値引きは一般的に断られやすく、売主側との関係を優先する業者が多い

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両手仲介と囲い込みリスク

専属専任媒介では両手仲介を狙った囲い込みが発生しやすく、大手不動産会社でも両手取引比率が40〜50%に達する実態がある

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値引き交渉の適切なタイミング

購入申込書提出時と媒介契約締結前が最も効果的で、契約後の交渉は契約違反のリスクがある

専属専任媒介における買主側の仲介手数料値引きの実態

 

専属専任媒介契約の物件を購入する際、「仲介手数料が値引きしやすい」という情報を耳にすることがありますが、これは大きな誤解です。実際の不動産取引の現場では、買主側への値引きは売主側よりも断られやすい傾向にあります。

不動産仲介業者にとって、専属専任媒介契約は売主との独占契約です。この契約では、売主側からの仲介手数料がほぼ確実に入るため、業者は売主との関係を最優先します。買主側からの値引き要請があっても、売主側の仲介手数料は満額確保したいというのが業者の本音です。

複数の不動産業者の回答を分析すると、「買主に対して仲介業者はあまり値引きしない」という見解が一致しています。

理由は明確です。

買主は一度きりの取引になることが多いのに対し、売主、特に複数物件を所有するオーナーとは長期的な付き合いが期待できるからです。つまり、リピート顧客になる可能性が高い売主側を優遇するのは、ビジネス上当然の判断なのです。

仲介手数料は宅建業法で上限が定められています。売買価格の3%+6万円(税別)が上限ですが、下限の規定はありません。

つまり理論上は値引き交渉は可能です。

しかし実際には、大手不動産会社のほとんどが買主側の値引きには応じません。オンライン専門や中小の不動産会社であれば交渉の余地がある場合もありますが、それでも売主側への値引きと比べると成功率は低いのが現実です。業界の実情として、買い反響に対して売り物件が少ない市況が続いており、買主側の立場は決して強くありません。

地域によっても状況は異なります。都心部や人気エリアでは物件の奪い合いになるため、買主側からの値引き交渉は特に難しくなります。一方で地方の売れ残り物件などでは、多少の値引きに応じてもらえる可能性が出てきます。

顧客に正確な情報を伝えることが重要です。「専属専任媒介だから値引きしやすい」という安易な期待を持たせるのではなく、現実的な交渉の可能性を説明する必要があります。値引き交渉よりも、物件価格そのものの交渉や、購入後のサービス向上を求める方が効果的な場合も多いでしょう。

専属専任媒介と両手仲介の関係性

専属専任媒介契約では、両手仲介が発生しやすい構造になっています。両手仲介とは、1つの不動産会社が売主と買主の双方から仲介手数料を受け取る取引形態です。

具体的な数字を見てみましょう。例えば3,000万円の物件の場合、片手仲介では売主または買主の一方から約105万円(3%+6万円+消費税)の手数料を受け取ります。しかし両手仲介では売主・買主双方から受け取るため、合計約210万円の収入になります。

収入が2倍になるのです。

大手不動産会社の両手取引比率を見ると、驚くべき実態が明らかになります。住友不動産販売では約50%、三井不動産リアルティでは約40%が両手取引というデータがあります。

つまり、取引の半数近くが両手仲介なのです。

これは偶然ではなく、業者側が意図的に両手仲介を目指している証拠と言えるでしょう。

両手仲介が多い理由の1つが専属専任媒介契約です。この契約では、売主は他社に重ねて依頼することができません。つまり、その不動産会社が物件情報を独占できるため、自社で買主を見つければ両手仲介が実現します。

ここで問題になるのが「囲い込み」です。囲い込みとは、他社からの購入希望者の問い合わせを断り、自社で買主を見つけるまで物件情報を公開しない行為を指します。専属専任媒介では5営業日以内にレインズ(不動産流通機構)への登録が義務付けられていますが、登録はしても他社からの問い合わせに「既に申し込みが入っています」と虚偽の回答をするケースがあるのです。

囲い込みが売主にもたらすデメリットは深刻です。本来なら高値で購入してくれる買主が他社にいるかもしれないのに、その機会を奪われてしまいます。売却期間が長引き、最終的に価格を下げざるを得なくなることもあります。

買主側から見ると、両手仲介には一見メリットがあるように思えます。不動産業者が売主と直接つながっているため、価格交渉がスムーズに進む可能性があるからです。「2,500万円を2,450万円に下げられませんか?」という買主の要望に対して、業者が「仲介手数料を20万円ずつ値引きします。なので、2,500万円のままでいかがですか?」と提案することもあります。

しかしこれには裏があります。業者は両手仲介で合計210万円を得られる見込みがあるため、各20万円ずつ、合計40万円値引きしても170万円の収入が残ります。片手仲介の105万円と比べれば、まだ十分な利益です。つまり、買主側の値引き交渉に応じているように見えて、実は業者が最も得をする構造になっているのです。

不動産業従事者として顧客にアドバイスする際は、両手仲介の構造を理解した上で対応する必要があります。レインズ登録証明書の確認を勧める、複数の不動産会社に物件情報を問い合わせる、といった囲い込み対策を提案することが重要です。

専属専任媒介における物件価格の値引き交渉戦略

仲介手数料の値引きが難しい専属専任媒介物件でも、物件価格そのものの値引き交渉には可能性があります。買主にとっては、仲介手数料を数万円値引きするよりも、物件価格を数十万円下げてもらう方が大きなメリットになります。

物件価格の値引き交渉が成功しやすいケースがあります。まず、販売開始から3ヶ月以上経過している物件です。専属専任媒介契約の期間は最長3ヶ月と定められており、この期間内に売れなかった場合、売主は価格の見直しを検討し始めます。レインズに登録されて3ヶ月以上売れ残った物件は、仲介業者や購入希望者から値下げ交渉を受けやすくなるのです。

つまり3ヶ月が目安ということですね。

次に、すでに値下げ履歴がある物件も狙い目です。一度値下げをしているということは、売主が「早く売りたい」という意思を持っている証拠です。さらなる値下げ交渉に応じてもらえる可能性が高まります。

売主側に期限や事情がある場合も交渉しやすいタイミングです。転勤、相続、離婚、資金繰りなどの理由で期限内に売却したい売主は、多少の値引きには応じやすくなります。ただし、こうした事情は表に出にくいため、仲介業者との関係構築が重要になります。

相場より明らかに高い価格設定の物件も交渉の余地があります。周辺の成約事例と比較して、明らかに割高な価格で売り出されている場合、適正価格への調整を求める交渉が正当化されやすくなります。

専属専任媒介物件での価格交渉では、仲介業者の立場を理解することが重要です。業者は売主から専属で依頼を受けており、売主の利益を最優先する立場にあります。しかし、契約期間内に成約させたいという業者自身の利益もあるため、合理的な値引き提案であれば売主に伝えてくれる可能性は十分にあります。

価格交渉の具体的な進め方として、購入申込書の提出時に希望価格を記載する方法が効果的です。「この価格なら確実に購入します」という明確な意思表示をすることで、売主側も真剣に検討してくれます。曖昧な「もう少し安くなりませんか?」という交渉よりも、「2,800万円なら即決します」という具体的な提案の方が成功率は高いのです。

決算期や年度末のタイミングも見逃せません。不動産会社には販売目標があり、期末には何とか成約件数を増やしたいと考えます。この時期は業者側も売主に対して値下げを提案しやすくなるため、買主側の交渉も通りやすくなります。

ただし注意点もあります。あまりにも大幅な値引き要求は、売主や業者の反感を買い、交渉自体が決裂するリスクがあります。一般的に、中古住宅で10%程度、新築で3%程度が値引きの相場とされています。

この範囲内での交渉が現実的でしょう。

専属専任媒介での値引き交渉が断られる理由と対策

専属専任媒介契約の物件で値引き交渉が断られるのには、明確な理由があります。不動産業従事者として顧客にアドバイスする際は、これらの理由を理解し、適切な対策を提案することが求められます。

最も大きな理由は、不動産会社の収入源が仲介手数料だけであるという点です。仲介手数料は成功報酬であり、契約が成立しなければ、それまでにどれだけ労力や時間や費用をかけても1円も入りません。広告費、人件費、交通費など、すべてが持ち出しになってしまうのです。

このリスクがあるからこそ、不動産会社は専任媒介や専属専任媒介で売主と契約しようとします。一般媒介では他社にも物件を紹介されるため、自社が買主を見つけても他社が先に成約してしまうリスクがあります。専属専任であれば、そのリスクを最小限に抑えられるのです。

手数料を値引きすることは収入の減少を意味します。

例えば3,000万円の物件で仲介手数料を3%から2%に値引きした場合、約35万円の減収になります。

これは不動産会社にとって大きな痛手です。

特に中小の不動産会社では、1件の値引きが会社の利益を大きく圧迫することになります。

買主側の仲介手数料を値引きすると、営業担当者のモチベーション低下につながる恐れもあります。多くの不動産会社では、営業担当者の給与が成果報酬型になっており、仲介手数料の一部が歩合として支払われます。値引きすることで担当者の収入が減るため、その物件に対する優先順位が下がり、積極的な営業活動をしてもらえなくなる可能性があります。

大手不動産会社が値引きに応じない理由も明確です。大手は社内規定で仲介手数料の割引率が厳しく制限されているケースが多く、現場の担当者に裁量権がほとんどありません。会社としてのブランド価値を維持するため、安易な値引きはしない方針を貫いているのです。

人気物件では値引き交渉自体が不利に働きます。需要が高く、他に希望者がいるような物件では、交渉に応じると他の顧客に物件を取られるリスクがあります。業者としては、満額払ってくれる別の買主を優先する判断をするでしょう。

それでは値引き交渉を成功させるための対策はあるのでしょうか。

最も効果的なのは、専任媒介または専属専任媒介契約を結ぶことを条件に交渉する方法です。これは売主側が値引き交渉する際の手法ですが、買主側でも応用できます。「御社を通じて購入しますので、仲介手数料を検討してもらえませんか?」という提案です。不動産会社としては、他社に取られる心配がなくなるため、多少の値引きには応じやすくなります。

タイミングも重要です。媒介契約を結ぶ前、つまり購入申込書を提出する段階で交渉するのがベストです。媒介契約書には仲介手数料の金額が記載されるため、契約後に値引きを求めると契約違反と見なされる可能性があります。契約前であれば、まだ金額が確定していないため、交渉の余地が残されています。

両手仲介が見込める物件を狙うのも戦略の1つです。売主側も同じ不動産会社に依頼している場合、業者としては売主・買主双方から手数料を得られるため、買主側の手数料を多少値引きしても十分な利益が確保できます。ただし、この場合は囲い込みのリスクも考慮する必要があります。

「太い客」になることも有効です。今後のリピートが期待できる、あるいは他に優良顧客を紹介してくれるような顧客であれば、業者も長期的な関係を重視して値引きに応じてくれる可能性が高まります。「次回も御社にお願いしたい」「知人にも紹介します」といった言葉を添えることで、交渉が有利に進むこともあります。

専属専任媒介物件を購入する際の独自の注意点

専属専任媒介契約の物件を購入する際には、一般媒介や専任媒介とは異なる独自の注意点があります。不動産業従事者として、顧客にこれらのリスクを説明し、適切な対策を講じることが重要です。

まず確認すべきは、レインズへの登録状況です。専属専任媒介では契約締結後5営業日以内にレインズへ登録する義務があります。登録されると登録証明書が発行されるため、この証明書を売主側に見せてもらうよう依頼しましょう。証明書がない、あるいは提示を渋る場合は、囲い込みが行われている可能性があります。

レインズ登録されていれば安心というわけではありません。登録はしているものの、他社からの問い合わせに対して「既に申し込みが入っています」「商談中です」と虚偽の回答をする悪質なケースも存在します。このような囲い込みを見抜くには、複数の不動産会社から同じ物件について問い合わせてみる方法が有効です。

契約期間の確認も重要です。専属専任媒介契約は最長3ヶ月と定められており、期間満了時には契約が自動新されるか、売主が他社に切り替えるか選択できます。もし物件が3ヶ月以上売れ残っている場合、売主は焦りを感じている可能性が高く、値引き交渉がしやすくなります。反対に、売り出し直後の物件では、売主はまだ余裕があるため、強気の価格交渉は難しいでしょう。

業務報告の頻度も確認ポイントです。専属専任媒介では1週間に1回以上の業務報告義務があります。もし売主側から「不動産会社からの報告が少ない」という情報が得られた場合、積極的な販売活動が行われていない可能性があります。このような物件は、業者のモチベーションが低いか、意図的に情報を制限している可能性があるため、慎重に判断する必要があります。

自己発見取引の制限にも注意が必要です。専属専任媒介では、売主が自分で買主を見つけた場合でも、必ず依頼した不動産会社を通さなければなりません。これは売主にとって大きな制約ですが、買主側から見ると、売主が直接交渉できないため、必ず業者を通した交渉になることを意味します。迅速な意思決定が求められる場面では、このワンクッションが不利に働くこともあります。

物件情報の透明性を確保するため、売主側の不動産会社だけでなく、買主側でも独自に不動産会社をつける「片手仲介」を選択する方法もあります。これにより、買主の利益を代弁してくれる味方ができ、より有利な条件での交渉が可能になります。ただし、両社に仲介手数料を支払う必要があるため、費用負担は増えます。

専属専任媒介物件の購入では、売主側の事情を探ることも有効です。なぜ専属専任媒介を選んだのか、売却を急いでいるのか、過去に値下げをしたことはあるか、といった情報を仲介業者から聞き出すことで、交渉の戦略を立てやすくなります。

業者との良好な関係構築がカギになります。

契約書の内容を細かく確認することも忘れてはいけません。媒介契約書には、仲介手数料の金額、支払い時期、契約解除の条件などが記載されています。特に仲介手数料が税抜きなのか税込みなのか、割引が適用されているのかを明確にしておかないと、後からトラブルになる可能性があります。曖昧な点は必ず契約前に質問し、書面で確認を取るようにしましょう。

最後に、専属専任媒介だからといって必ずしも悪い条件とは限りません。信頼できる不動産会社が売主と専属専任媒介を結んでいる場合、集中的な販売活動により早期成約が期待でき、結果として買主にとっても良い条件で購入できることもあります。重要なのは、契約形態だけで判断するのではなく、物件の実態と不動産会社の信頼性を総合的に評価することです。


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