敷地権登記はいつからか始まりと非敷地権リスク

敷地権登記はいつから始まり何が変わったのか

建物謄本だけ確認して決済を進めると、土地の権利証不足で所有権移転登記が止まります。

この記事の3ポイント
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敷地権登記のスタートは昭和59年1月1日

区分所有法と不動産登記法の同時改正により、昭和59年1月1日から「敷地権」制度が施行。建物と土地の権利が一体化され、分離処分が原則禁止になりました。

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昭和58年以前のマンションは非敷地権が混在する

法改正前に建築されたマンションは、同じ棟の中でも敷地権あり・なしが混在するケースがあります。土地の登記識別情報(権利証)が別途必要になる部屋が存在します。

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非敷地権物件は重要事項説明で必ず確認が必要

非敷地権マンションは土地と建物を別々に登記・抵当権設定しなければなりません。買主への説明不足は宅建業法違反のリスクに直結するため、事前の謄本確認が不可欠です。

敷地権登記の始まり:昭和58年改正と昭和59年1月1日施行の背景

 

分譲マンションが日本全国に急速に普及したのは、主に高度経済成長期の1960〜70年代のことです。当時は区分所有建物の専有部分(各住戸)と、その土地の権利(敷地利用権)がまったく別々に登記されていました。土地の登記簿には、マンションの全住戸分の持分移転が次々と記録されるため、1棟のマンションだけで土地登記簿が膨大な量になり、書き損じや漏れが頻発していたのです。

こうした混乱を解消するために、昭和58年(1983年)に区分所有法が改正され、専有部分と敷地利用権の一体化が原則化されました。分離処分の禁止が法律上の原則となったのです。

ただし、法律の条文だけでは登記の公示方法が変わらないため、翌昭和59年(1984年)1月1日に不動産登記法も改正・施行されました。この日が「敷地権登記制度」の正式なスタートです。これ以降に建てられた分譲マンションは、原則として建物の登記に「敷地権の表示」が記載され、土地の権利変動は建物の登記だけで公示されるようになりました。

昭和59年1月1日が制度の施行日。この日付は宅建実務で必ず確認が必要です。

参考:法務局による区分建物「敷地権」の公式解説

法務局「区分所有建物の敷地権とは」(PDF)

敷地権登記の仕組み:登記簿謄本での確認方法と表示の読み方

敷地権登記がされているマンションの登記事項証明書(建物謄本)には、2つの重要な記載があります。ひとつは「敷地権の目的たる土地の表示」、もうひとつは「敷地権の表示」です。

「敷地権の目的たる土地の表示」には、①土地の符号、②所在及び地番、③地目、④地積が記載されています。マンションが複数の筆の土地にまたがって建っている場合は、それぞれの土地に符号(1・2・3…)が振られています。

「敷地権の表示」には、①土地の符号、②敷地権の種類(所有権・地上権・賃借権)、③敷地権の割合、④原因及びその日付が記載されます。この「原因及びその日付」が、その住戸が敷地権化された年月日です。

敷地権の種類は確認必須です。一般的な分譲マンションは「所有権」ですが、借地権付きマンションの場合は「賃借権」または「地上権」になります。借地権付きマンションは土地の購入費用がかからない反面、地代が継続的に発生し、契約更新や建替えに制約が生じます。

参考:全日本不動産協会による敷地権の法律解説

月刊不動産「Vol.108 敷地権」(公益社団法人全日本不動産協会)

非敷地権マンションとは何か:昭和58年以前物件の実務リスク

敷地権制度が始まった昭和59年1月1日以前に建てられたマンションには、非敷地権の状態のまま残っている物件が多数あります。非敷地権とは、土地と建物がそれぞれ別々に登記されている状態のことです。つまり、戸建て住宅と同じように、土地の持分と建物の専有部分を個別に処分できる状態です。

非敷地権マンションを売買する際には、建物の登記と土地の共有持分登記を別々に申請しなければなりません。これは実務上、次のような追加作業を生じさせます。

さらに注意が必要なのは、同じマンションでも部屋(住戸)によって敷地権あり・なしが混在するケースがある点です。これは、昭和58年以前のマンションが法改正後に一部の部屋だけ敷地権化の手続きを完了させ、残りの部屋が非敷地権のままになっているためです。専有部分を複数名で共有していた場合や、土地と建物の持分比率が異なっていた場合、あるいは抵当権の関係で変更が困難だった場合に、このような混在状態が生じます。

同じマンションでも部屋ごとに確認が必要。これが原則です。

宅建実務で見落としやすい「敷地権化の前後」判定ミスとその対処

実務でとくに気をつけなければならないのは、「建物の保存登記日」と「敷地権化の日付」が同一日付に見えるケースです。一見すると「建物を建てたと同時に敷地権化した」と思い込みがちですが、実際には逆の順番、すなわち「保存登記→その後に敷地権化」という順序であった場合があります。

この前後関係を見誤ると、売主が土地持分の登記識別情報(権利証)を保有しているにもかかわらず、宅建士が「建物謄本の確認だけで問題なし」と判断してしまいます。決済当日に土地の権利証が足りないことが発覚すると、所有権移転登記ができず、決済そのものが中断するリスクがあります。

判定の簡単な方法があります。建物の保存登記の欄に「原因」の記載があるかどうかを確認することです。通常、保存登記には「原因」は記載されません。しかし、敷地権化された後に保存登記がされた場合、建物に付随する土地持分の所有権移転に関する「原因(例:売買 平成●年●月●日)」が記載されます。

  • ✅ 保存登記に「原因」あり → 「敷地権化→保存登記」の順 → 土地の権利証は不要
  • ⚠️ 保存登記に「原因」なし → 「保存登記→敷地権化」の順 → 土地の権利証が別途存在するため確認必須

この確認を怠ると、宅建士として重大なミスにつながります。決済前に必ず確認したい事項です。

参考:司法書士による敷地権化と建物保存登記の前後判定の解説

司法書士 吉村事務所「マンションの敷地権」

敷地権登記がされていない物件の重要事項説明での対応ポイント

非敷地権マンションを取り扱う宅建士にとって、重要事項説明書の作成は特に慎重に進める必要があります。敷地権付き区分建物であれば、建物謄本の「敷地権につき建物と一体」という記載だけで土地の権利についての説明ができます。しかし非敷地権の場合は、土地の共有持分ごとに登記記録を確認し、戸建てと同様の詳細な記載が必要です。

国土交通省が公表している「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、区分所有建物の表題登記日が昭和58年5月31日以前のものについて、耐震性の観点も含めて慎重な調査が求められています。つまり、昭和58年5月以前の物件は、敷地権・非敷地権の観点だけでなく、耐震基準の観点でも要確認です。これは一石二鳥の調査ポイントといえます。

実務では以下の手順で確認するのが安全です。

  • 📌 建物謄本の「敷地権の表示」欄の有無を確認する
  • 📌 「敷地権の表示」がない場合は土地謄本を別途取得する
  • 📌 土地謄本で区分所有者全員の共有持分が正しく登記されているか確認する
  • 📌 売主が建物・土地の両方の登記識別情報を保有しているかを事前確認する
  • 📌 抵当権が設定されている場合は建物・土地の両方の抵当権を確認する

非敷地権の場合、土地謄本が非常に膨大になる点も把握しておきましょう。1棟のマンションに100戸あれば、過去の売買・相続・抵当権設定・抹消がすべて土地1冊の謄本に記録されます。大規模マンションになるほど、土地謄本のページ数は数十ページに及ぶこともあります。これは読み解くのに相当な時間がかかるということですね。

参考:国土交通省による宅建業法の解釈・運用の考え方(耐震基準・区分所有の確認事項)

国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(PDF)

第19版 不動産実務百科Q&A