敷地権付き区分建物の登記と申請手続きの完全ガイド

敷地権付き区分建物の登記を正しく理解する

敷地権の登記が「なし」でも、実は建物と土地は一体として扱われている場合があります。

📋 この記事の3つのポイント
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敷地権とは何か?

区分建物に付随する土地の権利(所有権・地上権・賃借権)を「敷地権」といい、建物と分離して処分できない仕組みです。

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登記申請の落とし穴

敷地権付き区分建物では、土地と建物を別々に登記申請すると二重登記や権利関係の混乱が生じるリスクがあります。

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実務での注意点

敷地権の表示がある区分建物では、抵当権や仮登記の設定方法が通常の不動産と異なります。見落とすと後でクレームになります。

敷地権付き区分建物の登記とは何か:基本的な仕組みを理解する

区分建物とは、マンションや商業ビルのように一棟の建物が複数の独立した部分に区分され、それぞれが独立して所有される建物のことです。分譲マンションの1室がその典型例です。

「敷地権」とは、その区分建物が建っている土地について、区分所有者が持つ権利を指します。具体的には所有権・地上権賃借権のいずれかです。この敷地権が「登記された敷地権」として表題部に記録されている建物を「敷地権付き区分建物」と呼びます。

敷地権が登記されると、建物の専有部分と敷地の権利がひとつのセットとして扱われます。つまり建物だけを売ったり、土地だけに抵当権を設定したりすることが原則できなくなります。これが原則です。

この仕組みは不動産登記法第44条1項9号に基づき、区分建物の表題部には敷地権の目的である土地の表示と敷地権の種類・割合を記録することが義務付けられています。

権利の種類 内容 敷地権になれるか
所有権 土地を直接所有する権利 ✅ なれる
地上権 他人の土地の上に建物を所有できる権利 ✅ なれる
賃借権 賃料を払って土地を借りる権利 ✅ なれる
使用借権 無償で土地を借りる権利 ❌ なれない

使用借権は敷地権になれない点は見落としがちです。実務でまれに出くわすケースなので覚えておいてください。

不動産登記簿において、敷地権付き区分建物の土地の登記記録には「敷地権の目的たる土地」という表示がなされ、その土地の登記記録の権利部に「敷地権である旨の登記」が記録されます。この相互の記録が、建物と土地の一体性を担保しています。

敷地権付き区分建物の登記申請の手順:表示登記と権利登記の違い

登記申請は表示登記と権利登記の2段階に分かれます。それぞれの役割を混同しないことが基本です。

表題登記(表示登記)の手順

区分建物を新築・区分した場合、まず表題登記を申請します。敷地権付き区分建物の場合、以下の情報を表題部に記録します。

  • 専有部分の床面積・構造・種類
  • 建物の所在・家屋番号
  • 敷地権の目的である土地の表示(地番・地目・面積)
  • 敷地権の種類(所有権・地上権・賃借権)
  • 敷地権の割合(例:10000分の85など)

この申請は通常、土地家屋調査士が担当します。申請期限は建物完成から1ヶ月以内です。期限を過ぎると10万円以下の過料の対象になります。

所有権保存登記の申請

表題登記が完了したあと、権利部の登記として所有権保存登記を申請します。新築マンションでは分譲会社が全戸一括で申請するケースが多いです。この登記を怠ると、第三者への対抗要件を備えられません。

意外ですね。表題登記だけでは権利は公示されません。

住宅ローンを利用する場合は、所有権保存登記と同時または直後に抵当権設定登記も行います。敷地権付き区分建物では、抵当権は専有部分の登記記録に設定すれば、自動的に敷地権にも及びます。土地の登記記録に別途抵当権を設定する必要はありません。

参考:不動産登記法の条文と運用については法務省の公式情報が参考になります。

法務省:不動産登記制度について

敷地権付き区分建物の売買と移転登記:分離処分禁止の例外を知る

敷地権付き区分建物は、建物と敷地を分離して処分することができません。これを「分離処分の禁止」といいます(区分所有法22条)。しかし、例外があります。これだけ覚えておけばOKです。

分離処分が禁止される理由

マンションの区分所有者が「建物の部屋だけを売って土地の持分は持ち続ける」といったことを行うと、建物と土地の権利者がバラバラになり、権利関係が非常に複雑になります。これを防ぐために法律で一体処分が義務付けられています。

分離処分の例外となるケース

  • 規約で分離処分を認めている場合(区分所有法22条1項ただし書き)
  • 敷地が区分所有者の共有でない場合(例:全員が地上権者で土地は第三者所有)
  • 登記記録上の敷地権の表示がされる前に設定された担保権の実行

実務で特に注意が必要なのが3つ目です。敷地権の登記が入る前に、土地だけに設定されていた抵当権が競売になるケースでは、建物と土地の権利者が分離する可能性があります。これは厳しいところですね。

売買における移転登記の実務

売買が成立したら、所有権移転登記を申請します。敷地権付き区分建物では、専有部分の登記記録に対してのみ申請します。土地の持分移転登記は不要です。登記所がシステム上、土地への効力も反映します。

この「土地への移転登記は不要」という点を知らずに、土地の登記記録にも移転登記を申請しようとするケースがあります。それは余分な手間と費用になります。司法書士への依頼前に確認しましょう。

参考:マンション登記の具体的な申請様式については以下が参考になります。

法務局:登記手続きのご案内

敷地権の登記がない区分建物との違い:「敷地利用権」との混同に注意する

「敷地権の登記がない区分建物」と「敷地権付き区分建物」は、似ているようで法的な扱いが大きく異なります。混同が一番多いポイントです。

敷地利用権と敷地権の違い

用語 意味 登記の有無
敷地利用権 区分建物の所有に必要な土地を使う権利(概念) 登記あり・なし両方
敷地権 敷地利用権のうち、登記された特定のもの 必ず登記あり

つまり「敷地権」は「敷地利用権」の中でも登記された特別なものです。

登記がない敷地利用権しかない区分建物(旧分譲マンションや登記未了のケース)では、建物と土地の権利が一体化されていません。そのため売買の際には建物の所有権移転登記と土地の持分移転登記を別々に申請する必要があります。手間と費用が2倍近くになるイメージです。

敷地権の登記がない区分建物が生じる原因

  • 区分建物表題登記申請時に敷地権の申請を省略した(昭和59年以前の旧法時代のマンションに多い)
  • 後から敷地の一部が分筆・合筆され、敷地権の登記が抹消された
  • 規約で敷地権を登記しないと定めている場合

昭和59年より前に建てられた分譲マンションでは、現行の不動産登記法が施行される前のものが多く、敷地権の表示がない建物が相当数あります。築古マンションの取引では必ず登記簿を確認する習慣が必要です。

参考:区分建物の登記に関する歴史的経緯については以下が詳しいです。

法務省:登記・供託オンライン申請システム

敷地権付き区分建物の登記で実務担当者が見落としやすい3つのポイント

現場で起きやすいミスとその対策を整理します。これは使えそうです。

ポイント① 抵当権の設定範囲の確認

敷地権付き区分建物に抵当権を設定する場合、専有部分の登記記録に設定した抵当権は自動的に敷地権にも及びます。一方で、敷地権の登記が入る以前に土地だけに設定されていた抵当権(いわゆる「分離担保」)は、そのまま土地の登記記録に残り続けます。

取引前の調査では「建物登記簿だけ」「土地登記簿だけ」という片方だけの確認は危険です。建物・土地の双方の登記記録を取得して照合してください。これが条件です。

ポイント② 「専有部分の登記」と「一棟の建物の登記」の区別

区分建物の登記は「一棟の建物の表示」と「専有部分の表示」に分かれています。調査の際、謄本(登記事項証明書)を取得するときに「一棟の建物全体」の証明書を取るのか「特定の専有部分」の証明書を取るのかを間違えると、必要な情報が得られません。

特定の区分所有者の権利状況を確認するには、その専有部分の登記事項証明書(区分建物用)を取得します。全戸の状況を一覧したい場合は「一棟の建物の登記事項証明書」を取得します。それぞれ用途が違います。

ポイント③ 敷地権の割合と持分の確認

敷地権の割合は分譲時の設定によって各戸で異なります。例えば「10000分の85」のように表記されます。この割合は土地の共有持分と直結しており、固定資産税の按分や相続財産評価の計算に影響します。

固定資産税の課税明細では「土地分」と「建物分」が別々に記載されますが、土地分の計算元になっているのがこの敷地権の割合です。売買価格の土地・建物按分を計算する際にも必要な数字なので、重要事項説明書に必ず記載してください。

参考:区分建物の登記事項証明書の取得方法については以下を参照できます。

法務局:管轄のご案内と証明書取得方法