承認申請の医薬品:仕組み・流れ・注意点
医薬品の製造販売承認を受けていなくても、広告を出した段階で薬機法違反として最大200万円の罰金対象になります。
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承認申請の医薬品とは:薬機法が定める製造販売承認の基本
医薬品の承認申請とは、製薬企業が新たな医薬品を市場に出す際に、国(厚生労働大臣)に対して品質・有効性・安全性を証明するための公式な手続きです。根拠法は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、いわゆる薬機法(旧薬事法)の第14条です。
この承認は品目ごとに取得しなければなりません。同じ会社が同じ有効成分を使っていても、用法や剤形が変われば別途承認が必要になります。
審査の実務を担うのはPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)です。PMDAが審査を終えると厚生労働省に報告し、薬事・食品衛生審議会への諮問を経て正式に承認されます。つまり「承認 = 厚生労働大臣が発行する許可証」という理解が基本です。
承認された後はどうなるかというと、薬価収載という保険収載の手続きを経て初めて医療機関や薬局で販売できるようになります。承認と販売開始はイコールではありません。現行制度では承認後、原則60日以内・遅くとも90日以内に薬価収載されます。
承認に期限はありません。承認を取得した製造販売業者が整理届を提出するか、承認権限者が取り消さない限り、有効であり続けます。これはずっと有効ということですね。
なお、承認申請そのものは製造販売業の許可を持つ者のみが行えます。アイデアや研究成果があっても、この許可がなければ申請の窓口にすら立てません。
| 審査機関 | 役割 |
|---|---|
| PMDA(医薬品医療機器総合機構) | 品質・有効性・安全性の実質的な審査 |
| 厚生労働省 | 薬事・食品衛生審議会への諮問と最終承認 |
| 都道府県知事 | 一般用医薬品など一定範囲の医薬品の承認 |
医薬品の種類によっては、都道府県知事が承認権限を持つ場合もあります。たとえばかぜ薬や解熱鎮痛薬など「承認基準が定められた一般用医薬品」は、各都道府県知事が審査・承認します。東京都の場合、東京都保健医療局が窓口です。
参考:PMDAによる承認審査業務の全体像について
PMDAの承認審査業務(医薬品・医薬部外品・医療機器等の審査情報)|独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
承認申請の医薬品における開発から申請までの流れ:基礎研究〜治験の全ステップ
新薬1つが承認申請にたどり着くまでの道のりは、並大抵のものではありません。一般的に10〜15年の開発期間と、数百億円から数千億円規模の投資が必要です。
まず、出発点となるのが基礎研究です。膨大な化合物や物質の中から薬の候補となるものを絞り込む作業を「スクリーニング」と呼びます。候補物質が実際に承認を受けて薬になれる確率は約3万分の1とも言われており、この段階がいかに険しいかがわかります。
基礎研究で候補物質が絞られると、次に非臨床試験(動物試験など)が行われます。培養細胞や動物を使い、有効性・安全性・毒性を確認します。この非臨床試験のうち毒性に関するものは「GLP省令(医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令)」という国の基準に従って実施しなければなりません。毒性試験だけでも費用が10億円程度かかるケースがあります。
非臨床試験を通過すると、いよいよ人を対象とした臨床試験(治験)です。治験は以下の3フェーズに分かれています。
- ✅ フェーズ1:健康な成人を対象に安全性・薬物動態を確認(少人数)
- ✅ フェーズ2:少数の患者に投与して有効性・安全性を確認し、用法用量を決定
- ✅ フェーズ3:多数の患者で既存薬との比較試験を実施し、最終的な有効性・安全性を検証
治験は「GCP省令(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)」に厳しく規制されています。被験者の人権保護や同意取得のルール、治験審査委員会(IRB)による事前審査などが義務づけられています。
フェーズ3まで終了して初めて、製造販売承認申請にたどり着けます。結論は「新薬1つに平均484〜552億円の費用が必要」です(製薬協の国内調査、2008年価格換算)。中外製薬によれば、費用は約3,500億円に上るとする試算もあり、企業規模によって大きな差があります。
参考:新薬開発のプロセスと費用の概要(弁護士による実務解説)
新薬承認申請前に求められる実務対応とその留意点|松田綜合法律事務所(2025年11月)
承認申請の医薬品に必要な資料:CTDとPMDA審査の実務ポイント
承認申請時に提出が必要な申請資料は、「CTD(コモン・テクニカル・ドキュメント:Common Technical Document)」と呼ばれる国際共通フォーマットで作成します。日米EU(ICH)で合意された国際標準様式で、現在は電子化されたeCTDによる提出が主流です。
CTDはモジュール1〜5という5つのブロックで構成されています。
- 📁 モジュール1:申請書、添付文書案など各国固有の書類
- 📁 モジュール2:CTD全体の概要・要約(品質・非臨床・臨床)
- 📁 モジュール3:品質(製造方法、規格・試験方法、安定性など)
- 📁 モジュール4:非臨床試験報告書(毒性試験など)
- 📁 モジュール5:臨床試験報告書(治験の全データ)
審査においてPMDAは品質・有効性・安全性の観点から申請内容を精査し、追加データの提出を求めることもあります。場合によっては追加の治験が必要になり、さらに数年単位で審査が延びることもあります。これは時間がかかりますね。
通常の新薬の場合、審査期間の中央値はおよそ12ヶ月前後とされています。ただし特別な制度を使うと審査が短縮されます。
PMDAへは承認申請の前に「事前相談制度(対面相談・RS総合相談など)」を活用することが推奨されています。特に承認実績のないベンチャー企業やスタートアップにとっては、事前相談でPMDAの審査方針を把握することが、承認取得の近道になります。相談を活用すれば問題ありません。
また、一般用医薬品(OTC薬)の場合、医療用医薬品と異なり都道府県知事が承認権限を持つケースがあります。東京都への申請では、申請書の提出部数(通常3部、条件によって変動)や手数料の支払い方法(2025年1月以降はキャッシュレス決済も対応)など、細かい実務ルールも確認が必要です。
参考:申請手続きの詳細(東京都保健医療局のガイド)
承認申請の医薬品に関する特例制度:迅速承認・条件付承認・先駆的指定とは
通常の承認審査には長い時間がかかります。しかしすべての医薬品が同じ道筋をたどるわけではありません。これが基本です。
緊急性や希少性に応じていくつかの特例制度が設けられており、審査の迅速化や承認条件の緩和が認められています。
条件付承認制度は、患者数が少ない希少疾患など、大規模な治験の実施が困難なケースで適用されます。検証的臨床試験の成績なしで承認が認められる代わりに、承認後の使用成績調査や適正使用措置が条件として課されます。早期に治療薬を使えるようにするための制度です。
先駆的医薬品指定制度(先駆け審査指定制度)は、世界に先駆けて日本で開発された画期的な医薬品を指定し、審査期間を最短6ヶ月まで短縮することを目指す制度です。対象は、既承認薬と異なる作用機序で重篤疾患に対して極めて高い有効性が期待される医薬品です。
希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)指定は、患者数が少ないために開発が進みにくい疾患の治療薬に対して、開発支援・促進を行う制度です。優先審査の対象となります。
特例承認は緊急時の制度です。生命や健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病・感染症が発生した場合に、外国ですでに承認されている医薬品を国内で迅速に使用できるようにするための制度です。承認申請資料の大幅な省略が認められ、審査手続きも簡素化されます。
記憶に新しい例としては、新型コロナウイルス感染症治療薬「レムデシビル(ベクルリー)」があります。2020年5月、米国での緊急使用許可(EUA)に基づき、日本では特例承認が適用されました。この時点で世界で初めて正式承認された国が日本ということになります。意外ですね。
| 制度名 | 主な対象 | メリット |
|---|---|---|
| 条件付承認 | 希少疾患・大規模治験困難な医薬品 | 検証試験なしで承認可能(承認後条件付き) |
| 先駆的医薬品指定 | 世界初・革新的医薬品 | 審査期間を最短6ヶ月に短縮 |
| オーファンドラッグ指定 | 患者数の少ない希少疾患薬 | 優先審査・開発費補助など |
| 特例承認 | 緊急時に必要な感染症治療薬等 | 資料省略・審査手続き簡素化 |
参考:先駆け審査指定制度の詳細(厚生労働省)
承認申請の医薬品と薬機法違反リスク:広告規制・未承認表現・罰則の実態
医薬品の承認申請制度を理解するうえで切り離せないのが、薬機法の広告規制です。ここは特に実務で見落とされやすいポイントです。
薬機法第68条は、承認(または認証)を受けていない医薬品・医療機器の名称、製造方法、効能、効果または性能に関する広告を、「何人も」してはならないと定めています。「何人も」という点が非常に重要です。製造販売業者だけでなく、広告代理店、メディア、アフィリエイター、インフルエンサー、さらにはライターまでも規制の対象に含まれます。
具体的な罰則は以下のとおりです。
- 🚨 未承認医薬品の広告(薬機法68条違反):2年以下の懲役または200万円以下の罰金
- 🚨 虚偽・誇大広告(薬機法66条違反):2年以下の懲役または200万円以下の罰金(さらに課徴金も)
- 🚨 無許可・無承認での製造販売(薬機法12条・24条違反):3年以下の懲役または300万円以下の罰金
2021年の薬機法改正で、違反広告に対して課徴金制度が導入されました。課徴金は「違反期間中の対象商品の売上額の4.5%」が基本で、200万円の罰金を大きく超えることもあり得ます。痛いですね。
たとえば「このサプリは血糖値を下げる」「脂肪燃焼効果がある」など、一般食品や健康食品に医薬品的な効能効果の表現を付けた時点で、未承認医薬品の広告として薬機法違反に該当する可能性があります。正式な承認を取得していない製品については、その効能を一切うたうことができません。
ここで見落とされがちな視点があります。テナントや入居者が薬機法に抵触する広告を掲出しているケースで、不動産オーナーや管理会社が「知らなかった」では済まない場面も出てきています。賃貸物件の掲示板やサイネージなどを通じて違反広告が拡散されないよう、契約内容や管理ルールの整備が求められます。これは使えそうです。
違反を防ぐためには、テナント・入居者が取り扱う製品の承認取得状況、広告表現のチェック体制について事前に確認する仕組みを設けることが有効です。承認番号の有無を確認するだけでも一定のリスク回避になります。PMDAの公式サイトでは、承認を受けた医薬品の情報を無料で検索できます。
参考:未承認医薬品の広告規制と罰則(薬機法違反の実態)
健康食品・サプリメント広告のチェックポイント(薬機法)|薬事法ドットコム
参考:PMDAで承認医薬品を検索できる公式ページ
承認情報の検索|独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)

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