民泊新法と旅館業法の違い
民泊新法では180日超えで前科がつきます。
民泊新法の営業日数180日制限の影響
民泊新法(住宅宿泊事業法)における最大の特徴は、年間営業日数が180日以内に制限されている点です。
つまり年間の半分しか営業できません。
この180日という数字は、毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの期間で計算されます。1泊を1日としてカウントするため、例えば3月31日にチェックインして4月1日にチェックアウトする場合、新年度の1日分としてカウントされる仕組みです。
180日を超えて営業した場合、民泊新法での罰則はありませんが、旅館業法の無許可営業として扱われます。 これにより6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。単なる行政指導では済まず、刑事罰の対象となるため、不動産業従事者として物件を紹介する際には、この点を明確にオーナーへ説明する必要があります。
一方で旅館業法に基づく簡易宿所営業の許可を取得した場合、営業日数に制限はありません。
365日フル稼働が可能です。
投資用物件として収益を最大化したい場合、年間を通じて営業できる旅館業法の方が圧倒的に有利になります。
東京都内の一棟貸し民泊を例にすると、1泊2万円で稼働率70%を想定した場合、民泊新法では年間約252万円(180日×70%×2万円)が上限ですが、旅館業法では約511万円(365日×70%×2万円)と約2倍の差が生まれます。つまりローン返済や管理費を考慮すると、180日制限は収益性に致命的な影響を与えます。
ただし、自己利用も検討している別荘やセカンドハウスの場合は、残りの185日を自分で使えるため、民泊新法のデメリットは相対的に小さくなります。
結論は物件の目的次第です。
国土交通省の民泊制度ポータルサイトでは、住宅宿泊事業法の詳細な運用ルールが解説されています
民泊新法と旅館業法の申請手続きの違い
民泊新法は「届出制」、旅館業法は「許可制」です。どういうことでしょうか?
届出制とは、要件を満たしていれば基本的に受理される仕組みです。都道府県知事に必要書類を提出し、不備がなければ届出番号が発行されます。申請から届出完了まで約1〜3週間程度で、比較的スムーズに進みます。手数料も無料から数万円程度と、コスト面でも負担が軽いです。
一方で許可制の場合、保健所による厳格な審査と現地調査が実施されます。建築基準法や消防法、旅館業法の基準を全てクリアする必要があり、審査期間は1〜3ヶ月程度かかります。許可申請手数料も自治体によって1万円〜数万円必要です。
旅館業法の許可取得には11種類以上の書類が必要で、建築確認済証、消防法令適合通知書、営業施設の図面、構造設備の概要書など、専門的な書類が求められます。特に図面作成や消防設備の確認には建築士や消防設備士との連携が不可欠です。個人で対応するのは非常に困難なため、行政書士へ依頼するケースが大半です。
民泊新法の届出も13種類以上の書類が必要ですが、許可制ほど厳格ではありません。住宅の登記事項証明書、賃貸人の承諾書、管理組合の承諾書、図面などが主な書類です。オンラインの民泊制度運営システムを利用すれば、個人でも対応可能です。
不動産業従事者として物件を紹介する際、オーナーが「すぐに始めたい」という場合は民泊新法、「本格的な事業として展開したい」という場合は旅館業法を提案するのが基本です。
民泊新法と旅館業法の用途地域制限の違い
用途地域による営業可否の違いは、物件選定の最重要ポイントです。
つまり立地で決まります。
旅館業法で簡易宿所営業の許可を取得する場合、営業できる用途地域は以下に限定されます。
• 第一種住居地域
• 第二種住居地域
• 準住居地域
• 近隣商業地域
• 商業地域
• 準工業地域
第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域などの住居専用地域では、旅館業法による営業は原則として認められません。住環境の保全を目的とした建築基準法の制限があるためです。相続した実家が閑静な住宅街にある場合、旅館業法での活用は困難です。
一方、民泊新法の場合、工業専用地域を除く全ての用途地域で営業可能です。住居専用地域でも届出を行えば民泊営業ができるため、立地の選択肢が圧倒的に広がります。
ただし注意点があります。各自治体の条例により、民泊新法でも営業日数や営業区域がさらに制限される場合があります。例えば札幌市では、小中学校等の敷地から100m以内や住居専用地域では、条例により営業日数が制限されることがあります。京都市では住居専用地域での営業を1月15日〜3月15日の60日間に制限する条例が存在します。
物件を紹介する際には、まず用途地域を調べて営業可能性を確認します。次に自治体の条例を確認して制限内容を把握します。
この順番が基本です。
用途地域は市区町村の都市計画課や建築指導課で確認できます。条例については保健所や観光課に問い合わせる必要があります。
民泊新法と旅館業法の建築基準法上の違い
建築基準法における用途変更の要否が、両者の大きな違いです。
意外ですね。
民泊新法の届出住宅は、建築基準法上の用途が「住宅」のままで営業できます。
そのため用途変更の確認申請は不要です。
既存の戸建住宅やマンションの一室をそのまま民泊として届け出ることができるため、建築関連の手続きが大幅に簡略化されます。
一方で旅館業法の場合、建築基準法上の用途を「旅館又はホテル」に変更する必要があります。ただし2019年6月の建築基準法改正により、200㎡未満の建物については用途変更の確認申請が不要になりました。以前は100㎡未満が基準でしたが、規制緩和により200㎡未満に引き上げられたのです。
つまり延床面積が200㎡を超える物件で旅館業を始める場合、用途変更の確認申請と完了検査が必要になります。この手続きには建築士による図面作成、構造計算、消防設備の設計などが必要で、費用は数十万円から場合によっては100万円以上かかります。
期間も2〜4ヶ月程度必要です。
例えば延床面積250㎡の一戸建てを旅館業に転用する場合、まず建築士に依頼して用途変更の設計図書を作成します。次に特定行政庁に確認申請を提出し、審査を受けます。工事完了後に完了検査を受けて検査済証の交付を受ける必要があります。
厳しいところですね。
不動産業従事者として物件を紹介する際、延床面積が200㎡を超える場合は、用途変更の費用と期間をオーナーに明確に説明することが重要です。場合によっては民泊新法での運営を提案する方が現実的なケースもあります。
国土交通省の建築基準法改正に関するページでは、用途変更に関する詳細な情報が掲載されています
民泊新法と旅館業法の消防設備要件の違い
消防法による設備要件も、両者で異なる部分があります。
厳密には異なります。
民泊新法の場合、消防法施行令別表第一(五)項イに該当する「旅館、ホテル又は宿泊所」として扱われます。
必要な消防設備は以下の通りです。
• 自動火災報知設備(延床面積に応じて)
• 誘導灯
• 消火器
• スプリンクラー設備(一定規模以上)
ただし特例があります。家主居住型で、民泊として使用する部分が建物全体の半分以下かつ50㎡以下の場合、民泊部分への消防用設備等の設置は不要です。一般住宅に求められる住宅用火災警報器の設置で済みます。
使えそうです。
旅館業法の簡易宿所の場合も、消防法上は同じく「旅館、ホテル又は宿泊所」に分類されるため、基本的な設備要件は民泊新法と同等です。しかし建物の規模や構造によって、より厳格な設備が求められる場合があります。
特に注意すべきは、3階建以上または延床面積200㎡以上の建物です。この場合、竪穴区画や内装制限などの追加要件が発生します。木造3階建の戸建住宅を旅館業に転用する場合、準耐火構造への変更や避難階段の設置が必要になるケースがあり、大規模な改修工事が必要です。
消防設備の設置には、消防設備士による設計と施工が必要です。設備費用は物件規模によりますが、小規模物件で30万円〜、中規模で100万円〜、大規模になると数百万円かかる場合もあります。
物件を紹介する際は、事前に所轄消防署に相談して必要な消防設備を確認することが必須です。設備投資の見積もりを取得し、収支計画に反映させる必要があります。
民泊新法と旅館業法の収益性比較と不動産業者の視点
収益性の観点から、どちらの法律を選択すべきかを分析します。
結論は目的次第です。
旅館業法のメリットは、365日営業可能による収益最大化です。東京23区内の一棟貸し物件(延床面積80㎡)で比較すると、1泊単価2万円、稼働率60%の場合、旅館業法では年間約438万円(365日×60%×2万円)の売上が見込めます。一方、民泊新法では年間約216万円(180日×60%×2万円)と半分以下です。
ローン返済が月20万円(年間240万円)、管理費・光熱費等が年間60万円と仮定すると、旅館業法なら年間138万円の利益が残りますが、民泊新法では年間84万円の赤字です。
厳しいですね。
ただし民泊新法にもメリットがあります。
手続きが簡単で初期コストが低い点です。
旅館業法の許可取得には、行政書士費用20〜50万円、建築士費用(用途変更が必要な場合)50〜100万円、消防設備工事費50〜200万円など、初期投資が高額になります。民泊新法なら届出費用数万円、最低限の消防設備投資30〜50万円程度で始められます。
さらに住居専用地域での営業可能性は、立地の選択肢を広げます。閑静な住宅街の物件は賃料が比較的安く、外国人観光客に人気の「日本の日常」を体験できる環境として需要があります。
不動産業従事者として、以下の基準で法律を使い分けることが重要です。
投資目的で収益重視の場合:旅館業法
別荘・セカンドハウス兼用の場合:民泊新法
- 住居専用地域も選択肢に含める
- 180日は民泊、残り185日は自己利用という提案
- 初期コストを抑えたい顧客に適している
物件紹介時のトラブル回避策として、以下を顧客に必ず説明することが求められます。
• 180日を超えて営業した場合の刑事罰リスク
• 用途地域と条例による営業制限
• 近隣住民への説明義務(多くの自治体で条例化)
• 賃貸物件の場合、賃貸人の承諾が必須
• 分譲マンションの場合、管理規約の確認が必須
特に賃貸物件や分譲マンションの場合、無断で民泊を始めると契約違反や規約違反となり、契約解除や損害賠償請求のリスクがあります。不動産業者として、物件契約時に民泊利用の可否を必ず確認する体制を整えることが重要です。
厚生労働省の「民泊サービスと旅館業法に関するQ&A」では、旅館業法の詳細な解釈が掲載されています

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