抵当権者とは意味や役割を解説

抵当権者とは債権保全の担保権

抵当権を設定される前に全額回収できると考えていると後順位で1円も回収できないリスクがあります。

この記事の3ポイント要約
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抵当権者の基本的な立場

債権者が債権保全のため不動産に担保設定し優先弁済を受ける権利を持つ者で、金融機関や保証会社が該当します。

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抵当権設定者との違い

抵当権者は債権者側で債権回収の権利を持ち、抵当権設定者は債務者側で不動産を担保提供する立場です。

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順位と配当の関係

登記の先後で優先順位が決まり、先順位が全額回収した残りから後順位が配当を受ける仕組みです。

抵当権者の定義と基本的役割

 

抵当権者とは、債権者が債権を保全する目的で、債務者または第三者の所有する不動産に抵当権を設定したときの債権者側の立場を指します。具体的には、住宅ローンを提供する銀行や信用金庫などの金融機関、保証会社、ノンバンクといった貸付を行う機関が抵当権者となるケースが大半です。

抵当権者の最大の特徴は、債務者が約束通りに返済できなくなった場合に、担保となっている不動産を競売にかけて、その売却代金から他の債権者に優先して弁済を受けられる点にあります。

つまり優先弁済権です。

この優先弁済権があるからこそ、金融機関は数千万円単位の住宅ローンを個人に対して融資できるのです。担保がなければ、貸し倒れのリスクが高すぎて大口の融資は困難になります。抵当権という制度が不動産取引と金融の円滑化を支えているということですね。

不動産業に従事する方にとっては、売買物件の登記簿謄本(登記事項証明書)を確認した際、乙区欄に記載されている「抵当権者」の欄を見る機会が日常的にあるはずです。この欄に記載されている名義人が、その不動産に対して抵当権を持っている債権者、つまり抵当権者にあたります。

実務では、物件の引き渡しまでに抵当権を抹消する必要があるため、抵当権者である金融機関と事前に連絡を取り、抹消書類の準備や稟議のスケジュールを確認することが重要です。抵当権者との連携がスムーズにいかないと、決済日に間に合わず取引全体が延期になるリスクもあります。

三井住友トラスト不動産の用語集では、抵当権者の定義や抵当権設定者との関係について詳しく解説されています。

抵当権者と抵当権設定者の違い

不動産実務でよく混同されやすいのが、抵当権者と抵当権設定者の違いです。

結論は明快です。

抵当権者は「お金を貸した側」、抵当権設定者は「お金を借りた側で不動産を担保に提供した者」です。

住宅ローンを例にとると、借入人Aさんが銀行Bから3000万円を借りて自宅マンションを購入した場合、銀行Bが抵当権者、Aさんが抵当権設定者となります。Aさんが返済を滞らせた場合、銀行Bはマンションを競売にかけて売却代金から優先的に債権を回収できます。

ここで注意したいのは、抵当権設定者と債務者は必ずしも同一人物とは限らない点です。債務者本人が担保となる不動産を所有していない場合、親族などの第三者が自分の不動産を担保に提供することがあります。

このような第三者を物上保証人と呼びます。

物上保証人は債務者ではないため、金銭の返済義務は負いません。しかし、債務者が返済不能になれば、担保提供した不動産は競売にかけられ、物上保証人は不動産を失うリスクがあります。

つまり物的有限責任です。

不動産業の現場では、売主が物上保証人であるケースも散見されます。たとえば、子どもの事業資金のために親が自宅を担保提供しているような場合、子どもの事業が破綻すれば親の自宅が競売対象となり得ます。売却時にはこうした背景も含めて確認することが重要ですね。

実際の登記簿では、債務者欄と抵当権設定者欄が異なる名義になっていることで物上保証の存在が判明します。こうした物件は権利関係が複雑になりがちなため、慎重な調査が求められます。

抵当権者の順位と配当の仕組み

複数の抵当権が同一不動産に設定されている場合、抵当権者の優先順位は登記の先後によって決まります。最初に登記された抵当権が第1順位(一番抵当)、次が第2順位(二番抵当)となり、番号が若いほど優先的に配当を受けられます。

競売で不動産が売却されると、その売却代金はまず執行費用や公租公課に充てられ、残額が抵当権者に順位に従って配当されます。第1順位の抵当権者が全額回収できた場合のみ、残余金が第2順位以降に配当される仕組みです。

ここで重要なのは、後順位の抵当権者が配当を受けられないケースが実際に多いという現実です。たとえば、評価額3000万円の不動産に第1順位で2500万円、第2順位で1000万円の抵当権が設定されている場合を考えましょう。競売では市場価格の7割程度で落札されるのが一般的なため、売却代金は2100万円程度になります。

この2100万円から執行費用や税金を差し引くと、第1順位の抵当権者でさえ全額回収できない可能性があります。第2順位の抵当権者には1円も配当されないことになるわけです。

不動産担保ローンを提供するノンバンクなどは、この後順位リスクを理解した上で、第1順位の残債務や不動産の実勢価格を精査して融資可否を判断します。実務では、第1順位の残債が物件価値の5割以下であれば第2順位でも融資を検討する、といった基準を設けている金融機関もあります。

また、共同抵当といって、複数の不動産に同時に抵当権を設定するケースもあります。この場合、代価の配当という複雑なルールが適用され、後順位抵当権者の保護が図られる場面もあります。

順位の変更は抵当権者同士の合意と登記で可能ですが、実務上は後順位抵当権者にとって不利になるため、順位変更の合意が得られるケースは限定的です。順位の重要性は実務で常に意識すべきポイントですね。

抵当権者と根抵当権者の実務上の違い

抵当権者と似た概念に根抵当権者があります。両者は担保権を持つ点では共通していますが、担保する債権の範囲に大きな違いがあります。

通常の抵当権は特定の1回限りの債権を担保します。たとえば住宅ローン3000万円という特定の貸付に対して設定され、完済すれば抵当権は消滅します。一方、根抵当権は極度額という上限を設定し、その範囲内で発生する不特定多数の債権を継続的に担保します。

具体的には、企業が銀行と継続的な取引関係にあり、運転資金として1000万円を上限に何度も借入と返済を繰り返すような場合、根抵当権が活用されます。極度額1000万円で根抵当権を設定しておけば、その範囲内で自由に借入が可能になります。

根抵当権者は、元本確定前であれば被担保債権の範囲内で優先弁済を受けられますが、元本確定後は通常の抵当権者と同様の扱いになります。元本確定は、債務者や根抵当権設定者の破産、競売申立などの事由で発生します。

不動産業の実務では、事業用物件に根抵当権が設定されているケースが多く見られます。売買に際しては、根抵当権者との間で極度額全額の弁済または担保の差し替えを行い、根抵当権抹消の合意を得る必要があります。

根抵当権付き物件の取引では、現時点の借入残高だけでなく、極度額全体が潜在的なリスクとして存在します。売却前に根抵当権者である金融機関に現在の借入状況を照会し、抹消に必要な金額を正確に把握することが不可欠です。

北花田司法書士事務所の解説では、抵当権と根抵当権の登記上の違いや実務上の注意点が詳しく説明されています。

抵当権抹消と抵当権者の協力義務

住宅ローンを完済した後、抵当権は自動的には消滅しません。抵当権抹消登記という手続きを行わなければ、登記簿上に抵当権の記録が残り続けます。この抹消登記を行う際には、抵当権者の協力が必須です。

抵当権者は完済を受けた後、抹消登記に必要な書類一式を債務者に交付する義務があります。具体的には、登記済証または登記識別情報、抵当権解除証書、委任状、資格証明書などです。これらの書類を受け取った債務者側が法務局で抹消登記を申請します。

抹消登記の登録免許税は不動産1個につき1000円です。土地と建物であれば合計2000円になります。司法書士に依頼する場合は、報酬として5000円から1万5000円程度が相場です。

ここで注意したいのは、抹消登記に法的な期限はありませんが、放置すると実務上のリスクが生じる点です。たとえば、完済から何年も経過した後に不動産を売却しようとした場合、当時の抵当権者である金融機関が合併や組織変更をしていると、抹消手続きが煩雑になります。

また、抵当権者から交付された書類を紛失してしまった場合、再発行手続きに時間と費用がかかります。金融機関によっては、完済から一定期間経過後は書類の再発行に応じない方針を取っているケースもあります。

不動産業の現場では、売買契約の決済日に同時に抵当権抹消を行うのが一般的です。売主が売却代金でローンを完済し、その場で抵当権者から抹消書類を受け取り、司法書士が即座に抹消登記を申請する流れです。この一連の手続きをスムーズに進めるため、事前に抵当権者である金融機関と綿密に打ち合わせを行う必要があります。

抹消書類の準備には金融機関内部での稟議が必要になるため、決済日の2週間から1か月前には連絡を入れておくのが望ましいですね。抵当権者の協力が得られないと取引全体が停滞してしまうため、早めの調整が鉄則です。


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