取引主任者と専任の取引主任者の違い
取引主任者の重要事項説明と記名押印の違い
取引主任者(現在の制度名では宅地建物取引士に相当)は、売買・賃貸の場面で「重要事項説明」を行い、重要事項説明書や契約成立後に交付する書面に記名押印する役割を担います。重要事項説明書の交付・説明や書面の記名押印は、宅建業法上、取引主任者が行うべき中核業務として位置づけられています。
一方で、ここが誤解されやすいのですが、「専任かどうか」で重要事項説明の“作業そのもの”が変わるわけではありません。専任でない取引主任者でも、取引主任者としての職務(重要事項説明や書面の記名押印)は行えます。つまり、違いの本質は“業務範囲”ではなく、“事務所が免許要件を満たすために誰を置くか”という設計にあります。
このため現場では、次のようなズレが起きがちです。
- 「取引主任者がいる=専任も足りている」と思い込む
- 説明ができる人材はいるが、専任の人数要件を満たしていない
- 兼業者や外部協力者を“名義だけ”専任にできると誤解する
重要事項説明の品質を上げる観点でも、専任の有無より「社内で日常的に説明・契約書面のチェックが回る体制か」のほうが差になります。専任の人数要件を満たすための配置と、実務の繁忙に合わせた説明担当の配置は、同じ人である必要はありますが、同じ発想で考えると破綻しやすいので分けて設計するのが安全です。
取引主任者の設置義務と専任の取引主任者の5分の1の違い
専任の取引主任者が重要になる理由は、宅建業者に「事務所・案内所等ごとに、一定数の専任の取引主任者を置く義務」があるからです。人数の基準は、事務所なら「業務に従事する者(業務従事者)の5分の1以上」、案内所等は「1人以上」が原則とされています。
さらに実務で効くポイントとして、業務従事者数は営業だけでなく、一般管理部門や補助的事務の担当者も含まれるとされます。つまり「営業は4人だから専任1人でOK」と短絡できず、バックオフィスを含めてカウントすると不足していた、という事故が起きます。
現場でありがちなカウントの落とし穴を、簡易チェックとして整理します。
- 事務所の「業務従事者」を部署名で除外してしまう(総務・経理など)
- パート・アルバイトをゼロ扱いしてしまう(実態により要確認)
- 別拠点(支店)を同一事務所扱いしてしまう(事務所ごとの要件)
- 新規採用・退職が多い時期に「月次で見直していない」
人数要件は、売上や案件数と無関係に“形式的に”問われます。だからこそ、繁忙期・閑散期ではなく「人員構成が変わった瞬間」に不足しやすいのが特徴です。専任の管理は、営業管理よりも人事・総務寄りの運用に落とし込むと事故率が下がります。
取引主任者の専任性(常勤・専従)と兼業の違い
専任の取引主任者の要件の核心は「専任性」です。専任性とは、当該事務所・案内所等に常勤し、かつ宅建業の業務に従事する状態をいい、別の勤務先があるなど、一般的な営業時間に事務所勤務ができない場合は専任性が認められません。実務で言うと、「名義貸し」「週1出勤」「他社のフルタイム勤務者を置く」といった形は原則としてアウトになります。
実際に、取引主任者証の交付を受けていても、広告会社など別の勤務先がある人を“自社の専任”にすることはできない、という考え方が示されています。専任は「免許要件を満たすために、いつでも必要対応できる状態で事務所にいること」が前提だからです。
ここは、採用実務でも揉めやすいところです。面接で「宅建持ってます」を聞いた瞬間に安心せず、専任にできる勤務形態かを必ず確認してください。
- 勤務地:その事務所に通勤可能か(距離・時間・生活実態)
- 勤務時間:営業時間帯に常勤できるか
- 兼業:他社の雇用契約・役員就任・個人事業の稼働がないか
- 実態:給与支払・社会保険・出勤記録など“説明可能な証拠”があるか
「在宅勤務(テレワーク)」が広がったことで、常勤の考え方は業界横断で揺れていますが、専任性は“実態”で見られやすい領域です。説明できない状態(実質別仕事が本業、事務所にほぼいない等)は、形式上の雇用契約があってもリスクになります。
取引主任者の不足と2週間以内の措置の違い
専任の取引主任者が不足したとき、現場が最も困るのは「いつまでに直せばいいか」です。退職などにより既存の事務所等が要件を満たさなくなった場合、2週間以内に必要な措置をとる義務があるとされています。つまり、欠員が出た瞬間から“猶予は最大14日”と捉えて動く必要があります。
ここでいう「必要な措置」は、単純に採用するだけではありません。現実には次の選択肢を組み合わせます。
- 既存社員の中から専任にできる人を配置換えする
- 事務所の業務従事者数(配置)を見直して分母を調整する
- 早期採用(紹介会社・同業ネットワーク)を走らせる
- 重要事項説明の回し方(担当者)と、専任の“要件充足”を切り分ける
- 案内所等の運営形態を見直す(設置義務の対象を増やさない)
意外と盲点になるのが、「重要事項説明が回っているから大丈夫」という思い込みです。専任不足は、説明ができる・できない以前に“事務所を開設して営業してよいか”の条件に関わります。監督行政庁の目線では、専任不足はコンプライアンス上の重大なサインになりやすいので、社内で“緊急対応のトリガー”を決め、退職予定が出た時点で前倒しで動くのが安全です。
取引主任者の独自視点:人員カウントと内部統制の違い
検索上位の解説は「業務の違い」「5分の1」「常勤専従」に集約されがちですが、現場の事故はもっと地味なところで起きます。それが「人員カウントの内部統制(社内の仕組み)」です。専任不足は、知識不足というより“更新されない台帳”から発生します。
内部統制として効果が出やすい運用を、独自視点として提案します。
- 人員変更(入社・退職・異動)を起点に、必ず「業務従事者数」と「専任数」を自動再計算するルールを作る
- 事務所単位で「専任が不足すると何が止まるか」を見える化し、経営会議で共有する
- 採用要件に「専任可否チェック(常勤・専従・兼業)」を組み込み、現場判断にしない
- 専任者本人に“名義だけではない責任”を説明し、重要事項説明書・契約書の品質管理(誤記・漏れ防止)の責任範囲を明確にする
特に、業務従事者数に管理部門が含まれるという整理は、営業主導の組織ほど見落としがちです。総務・経理・受付・契約管理などが増えるほど分母が増え、ある日突然「専任が足りない」状態になります。ここを“気合い”で回すと、短期的には穴埋めできても、更新・監査・行政対応の局面で説明が破綻します。
専任の取引主任者は、現場のスター選手というより「事務所運営のライセンス条件を満たすキーパーソン」です。だからこそ、属人的に抱えず、台帳・チェック・証憑の三点セットで運用するのが、長期的に最もコストが下がるやり方になります。
取引主任者の役割(重要事項説明・書面への記名押印)と、専任の取引主任者の義務(事務所等ごとの設置・5分の1・専任性・不足時の期限)は、同じ資格者が担うことが多いだけで、論点は別物です。制度の違いを「業務」と「免許維持」の2つに分けて捉えると、採用・配置・退職時の判断が速くなり、余計な行政リスクを避けられます。
【専任性(常勤・専従)と兼業不可の考え方、2週間以内の措置】
【取引主任者の業務(重要事項説明・書面の記名押印)と、専任の位置づけ(常勤専従・5人に1人)】
大阪府宅建業免許申請サポートセンター:取引主任者と専任の取引主任者の違い

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