登記簿確認義務と宅建業者
登記簿の確認義務と重要事項説明の基本
宅建業者にとって「登記簿(登記事項証明書)を確認する」という行為は、単なる事務作業ではなく、重要事項説明の品質を支える根幹です。国土交通省の資料でも、宅地建物取引業者は契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士に重要事項を記載した書面を交付して説明させる義務があると整理されています。
重要事項説明の中には「物件に関する権利関係の明示」が含まれ、登記された権利の種類・内容等を説明すべき項目として示されています。
つまり、登記簿の確認は「説明すべき事項を、説明できる状態に整える義務」に直結し、結果として宅建業者の調査・説明義務の中核を構成します。
実務で誤解が多いのは、「登記簿を取って、所有者と抵当権を読み上げればOK」という発想です。登記事項は、重要事項説明書の記載の裏付けである一方、登記簿が示すのは“登記記録上の状態”に過ぎません。
参考)賃貸借契約時の重要事項説明に使用する、登記事項証明書について…
愛知宅建業免許.comでも「登記記録に記録された事項」として、登記された権利の種類・内容および登記名義人等を確認し、売主・貸主の権限に注意を払う趣旨が説明されています。
登記簿の情報を起点に「この取引で何がリスクか」を抽出し、買主・借主の判断材料に変換するのが、宅建業者側の仕事です。retpc+1
登記記録に記録された事項の読み方(所有者・権利・名義)
重要事項説明で扱う「登記記録に記録された事項」は、端的に言えば“誰がどんな権利を持ち、どんな担保や制約が乗っているか”です。
愛知宅建業免許.comでは、登記された権利の種類及び内容を確認することで、登記簿上の所有者、所有権以外の権利(例:抵当権等)の有無、権利者が誰かを明らかにする趣旨が述べられています。
この「権利の棚卸し」が曖昧だと、重説は形式を満たしても、実質的には危険な説明になります。
現場での具体的な読み方(最低限の観点)を、売買・賃貸の両方に使える形に整理します。
- 登記名義人:売主(貸主)本人か、相続・法人・代理の可能性があるかを仮説として立てる。
- 所有権以外の登記:抵当権・根抵当権・地上権・賃借権(登記されるケース)などが残っていないかを確認する。
- 抹消予定:決済で抹消する予定でも、重要事項説明の時点で存在する権利は説明対象になり得るため、抹消条件(金融機関、抹消書類、同時履行)を言語化する。
ここで重要なのは、登記簿を「現在の状態の記録」として読むだけでなく、「決済時点でどうなるべきか」まで逆算して読むことです。
重説が“点の説明”にとどまると、買主は安心できず、逆に“線の説明(契約→決済でどう整えるか)”になると、クレームや紛争の芽が減ります。
登記簿の確認義務と調査のタイミング(直近・契約・決済)
登記簿確認で最も事故が起きやすいのは、「登記簿を取った事実」ではなく「登記簿を取った日付」です。重要事項説明は契約成立までの間に行う制度設計であり、説明内容は“その時点での重要事項”として意味を持ちます。
そのため、登記事項証明書の取得が古いと、契約直前に入った仮登記、差押え、担保追加などを取り逃がすリスクが現実に発生します。
さらに、契約から決済まで期間が空く取引ほど、契約後変動(追加融資、相続発生、差押え等)の可能性が上がるため、決済前にも再確認を組み込むのが安全です。
実務フローとしては、少なくとも次の3点をセットで管理すると事故が減ります。
- 重説作成日(登記事項証明書の取得日を記録し、重説に反映する)。
- 契約日(契約当日の朝などに差分を確認できる体制を作る)。
- 決済日(決済当日に最終確認し、抹消・移転の段取りと整合させる)。
この「複数回確認」は手間ですが、重要事項説明が紛争を防止し購入者等に十分理解して契約締結の機会を与えるために、宅建業者に説明義務を課しているという制度趣旨とも整合します。
結局、登記簿確認義務は“1回確認して終わり”ではなく、“変動を前提としたリスク管理”として再設計するのが合理的です。
登記簿だけでは足りない注意点(公信力・本人確認)
あまり知られていない落とし穴として、「登記簿確認をしているのに、事故が起きる」典型があります。原因は、不動産登記に公信力がない点を、実務のチェックリストに落とし込めていないことです。
愛知宅建業免許.comでも、不動産登記には公信力が認められておらず、登記は対抗要件を与えるにすぎないため、登記だけを調べても業者としての義務を果たしているとは言えないケースがあると注意されています。
つまり、登記名義人を確認しても「真の権利者か」「処分権限があるか」は別問題になり得ます。
そこで、登記簿確認とセットで“本人確認・権限確認”を厚くするのが現場の現実解です。
- 売主本人の本人確認(身分証、住所の整合、対面確認の質)。
- 法人の場合の権限確認(代表者事項、決裁プロセス、実印の管理状況)。
- 代理・相続・共有の場合の権限確認(委任状、遺産分割、共有者同意など)。
さらに、重説の説明としても「登記に公信力がない」ことを前提に、買主側が何を安心材料として判断できるのか(本人確認や決済条件)を合わせて伝えると、説明の納得度が上がります。
登記簿を“正解の証明書”として扱うのではなく、“調査の入口”として扱う感覚が、宅建業者の安全運転に直結します。
登記簿確認義務と宅建業者の独自視点(差分管理チェック)
検索上位記事では「登記簿を取る」「抵当権を見る」までは丁寧でも、運用としての“差分管理”に踏み込むものは多くありません。そこで独自視点として、登記簿確認義務をチーム運用に落とすための「差分管理チェック」を提案します。
重要事項説明は制度上、契約成立までの間に書面を交付して説明する枠組みであり、説明の正確性は取得時点の情報に依存します。
ならば、確認の品質は「取得した登記事項証明書の内容」だけでなく、「いつ取得し、どの時点と突合したか」のログで担保するのが合理的です。
差分管理の具体策は、次のようにシンプルな運用から始めるのが現実的です。
- 契約前チェックで、前回取得分との差分(受付・原因・日付・新規担保の有無)だけを確認する。
- 決済前チェックで、抹消予定の担保が“残っているのが正常”なのか、“増えているので異常”なのかを判定する。
この運用は、現場の引継ぎ(担当変更、急な休み、分業)に強く、結果として重要事項説明の安定供給につながります。
また、差分管理があると、買主から「本当に最新ですか?」と聞かれた時に、取得日と確認日を根拠として即答でき、説明の信頼性が上がります。
【制度趣旨や重要事項説明の根拠の確認(国交省PDF)】
国土交通省「重要事項説明・書面交付制度の概要」:重要事項説明の義務(契約成立までの間に書面交付して説明)や、登記された権利の種類・内容等が説明項目に含まれる点が整理されています。
【登記記録に記録された事項の解説(実務向け)】
愛知宅建業免許.com「重要事項説明の内容|登記記録に記録された事項」:登記名義人・登記された権利の見方、不動産登記に公信力がない点など、登記簿確認の注意点がまとまっています。

やさしい登記簿の読み方・調べ方: 「不動産登記簿」「商業登記簿」のポイントがわかる
