登記事項証明書 重要事項説明 添付
登記事項証明書の重要事項説明の添付の基本
重要事項説明(35条書面)は、契約成立までの間に、宅地建物取引士が書面を交付して説明する制度です。国交省資料でも、制度趣旨は「権利関係や取引条件が複雑な不動産取引で、調査不足のまま契約すると紛争や不測の損害につながるため、専門家に説明義務を課す」という整理になっています。したがって「登記事項証明書を添付しないと違法」というより、説明の根拠として登記情報をどう扱い、相手方の理解をどう担保するかが本質です。
登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)は、重要事項説明で説明すべき「登記された権利の種類・内容、登記名義人」等の裏付けとして最も使われます。実務では、重要事項説明書の該当欄に登記記録を転記し、さらに「別添の登記事項証明書」を添付して整合性を示すパターンが多いです(添付自体は“説明の補助資料”としての意味合いが強い)。
一方、登記情報の扱いには落とし穴があります。登記は万能ではなく、登記に公信力がないことは基礎知識ですが、それでも実務上は「登記簿の記載を一応真正と信じて取引するのが通常」という裁判例の整理があり、調査・説明の基本線として登記情報を中心に据えるのが合理的です(説明の説得力と、後日の紛争予防の両面)。【参考:全日みらい研究所の記事内で最高裁判決の趣旨として紹介】
誤解しやすいポイントは、「登記事項証明書を添付=調査義務を尽くした」と短絡しないことです。添付していても、読み合わせや重要部分の説明が薄いと、トラブル時に“形式だけ”と評価されかねません。
また、売買だけでなく賃貸でも、登記を見ない・見落とすことによる調査義務違反が問題になりやすい点は押さえておくべきです。賃貸借でも、差押登記などを見落としたまま仲介して賃借人に損害が出た場合、仲介業者の責任が争点になり得ることが指摘されています。だからこそ、重要事項説明における登記事項証明書の「添付」は、単なる添付資料ではなく、説明プロセスの中核として位置付けた方が安全です。
登記事項証明書の重要事項説明の別紙参照
重要事項説明書の記載でよくある運用が、「詳細は別添の登記事項証明書を参照」とする“別紙参照”です。所有者が多い、住所が長い、抵当権や根抵当権の記載が複雑、乙区が多数など、35条書面の紙面に転記し切ると読みづらくなる場面では、別紙参照は現実的な選択になります。実務記事でも、詳細を別添参照としつつ、登記簿に記載された所有者全員の氏名・住所等を説明する運用が紹介されています。
ただし、別紙参照は「書いて添付すればOK」ではありません。実務解説では、別添の登記事項証明書を買主に提示し、内容を読み合わせすることが重要で、これを省略すると重要事項説明義務違反となり、行政処分の対象となる可能性もあるとされています。ここは上司チェックでも突っ込まれやすいポイントなので、社内標準の説明手順(提示→該当箇所を指差し→口頭説明→質疑→確認)を用意しておくと強いです。
別紙参照を採る場合の実務上のコツは、次のように「書面上のリンク」を明確にすることです。
- 重要事項説明書の該当項目(例:権利部(甲区)所有者、権利部(乙区)担保権等)の欄に「別添登記事項証明書参照」と明記。
- 別添側にも付箋やマーカーで参照箇所(甲区・乙区)を示す。
- 説明時に「どの権利を説明したのか」を口頭だけで終わらせず、チェックリストで記録に残す。
特に「乙区をどこまで説明したか」は、事故が起きると焦点になります。抵当権、根抵当権、差押、仮差押、処分禁止の仮処分など、買主の意思決定を左右する事項が並び得るため、「読める人だけ読めばいい」では済みません。読み合わせの際は、権利の種類と効力(例:担保権の存在、実行リスクの一般論)を“わかる言葉”に翻訳するのが重要事項説明の価値です。
■制度の根拠(重要事項説明・書面交付制度の概要)
国土交通省「重要事項説明・書面交付制度の概要」(第35条の位置づけ、制度趣旨、トラブル例の整理)
登記事項証明書の重要事項説明の取得のタイミング
登記事項証明書は、取得した瞬間から“古くなる”資料です。特に契約直前に、差押・仮差押・仮処分などが入る可能性がゼロではありません。実務解説でも、午後契約なら午前中、午前契約なら前日午後に登記記録を見る慎重さが必要という趣旨が述べられています(登記所に行かずとも確認しやすい現代ほど、直前確認が求められる、という発想)。
「何日前までの登記事項証明書ならOKか」は、現場でよく出る質問です。賃貸の重要事項説明に関するQ&A形式の実務記事では「1か月前に取得した登記事項証明書でも直ちに問題とは言い切れないが、契約直前に再確認するのが望ましい」という趣旨で、調査義務・善管注意義務の観点から慎重運用が推奨されています。つまり、期限の“正解”を探すより、トラブル時に説明できる運用設計(いつ、誰が、何を確認したか)を優先すべきです。
実務でよく採用される「安全寄りの運用例」は次の通りです。
- 売買:重要事項説明の実施日(または前日)に再取得し、説明書・売買契約書案の記載と突合。
- 賃貸:少なくとも重説日前後で最新を確認し、特に店舗・事業用は差押等の有無を意識して直前確認を厚めに。
- 共有・相続・法人:名義の変動が起きやすいので、説明当日に再確認する。
ここで意外に見落とされるのが「登記事項証明書の誤記」です。全日みらい研究所の記事では、登記事項証明書の表題部に訂正の記載があり、地積測量図と数値が食い違ったため法務局に照会したところ、記載ミスが判明して訂正された事例が紹介されています。登記は公的資料なので“正しい前提”で扱いがちですが、実務的には「おかしいと思ったら照会する」姿勢が、結果的に買主の信頼と社内評価を守ります。
■添付書類の実務ポイント(誤記・公図・地積測量図の注意など)
全日みらい研究所「売買重要事項の調査説明~添付書類」(登記事項証明書の誤記例、各添付書類の説明ポイント)
登記事項証明書の重要事項説明のネット
登記事項証明書の取得手段は複数あり、法務局窓口だけでなく、オンライン申請で取得する運用も一般化しています。一般向け解説でも「法務局に行かずにパソコンから申請することもできる」と説明されており、実務でもスピード重視でオンラインを選ぶ場面は増えています。
ネット取得(いわゆる“ネット謄本”)を重要事項説明書に添付する運用も見られます。実務記事では、重要事項説明書にネット取得の登記情報を添付するケースが増えているという指摘があり、狙いは「証明力そのもの」よりも「契約時点の所有者等を確認した根拠」としての利用だと整理されています。つまり、添付の目的が“証明書としての効力”なのか、“調査・説明の裏付け”なのかを社内で言語化しておくと、運用がブレにくくなります。
ネット運用の注意点は、紙よりもむしろ「説明と保管」です。国交省資料では、重要事項説明書は法文上「書面」の交付が必要で、電子メールなどの電磁的方法による交付は認められていない(当時の整理)とされています。現場では電子化が進んでいても、説明書面の交付方法・保管方法が制度要件や監督実務とズレると、別のリスクが生まれます。登記事項証明書の取得がネットでも、最終的に重要事項説明の“書面交付”要件を満たす形で運用するのが基本線です。
また、ネット取得でありがちな事故が「取得日時の記録が残らない」「どの版(どの時点の情報)を添付したかが曖昧」になることです。そこで、次のようなオペレーションが効きます。
- 取得日時(少なくとも取得日)を重要事項説明書の備考・社内チェックシートに残す。
- 添付する登記事項証明書に、案件番号・物件名を付記して紛れを防止する。
- 説明の場で、甲区・乙区・共同担保目録など、見た箇所を明確に示しながら読み合わせする。
登記事項証明書の重要事項説明の独自の添付
検索上位で語られやすいのは「添付するか」「別紙参照は可か」「取得日はいつか」ですが、現場で差がつくのは“添付の中身の設計”です。つまり、登記事項証明書をただ添付するのではなく、説明の品質を上げるために「何を同梱し、どう説明するか」をテンプレ化すると、ミスも再発も減ります。
独自視点として提案したいのは、登記事項証明書の添付を「重説の論点別パッケージ」にするやり方です。全日みらい研究所の記事でも、登記事項証明書に加え、公図、地積測量図、さらには“土地上に建物の登記記録がないことを示す返却された申請書”など、説明の補助になる資料を添付し、どう説明すべきかが述べられています。ここから逆算して、次のように“論点ごとに添付”すると説明が強くなります。
【論点別・添付パッケージ例】
- 権利関係(私法)📄
- 登記事項証明書(甲区・乙区)
- 共同担保目録がある場合は該当ページも
- 説明ポイント:所有者、持分、担保権、差押等の有無
- 境界・面積🗺️
- 地積測量図(確定測量か、作成年月日が古いか)
- 公図(「地図」か「地図に準ずる図面」か)
- 説明ポイント:復元能力、現況との差が起きる可能性
- 建物の履歴・地下埋設など🏠
- 閉鎖建物図面・閉鎖登記簿(該当する場合)
- 説明ポイント:地下室等の有無確認の意義(共同住宅等で重要)
さらに、添付資料の“読み方”を、顧客向けに1枚でまとめると効果があります。たとえば「甲区=所有者」「乙区=担保・差押等」「表題部=表示(地番・地目・地積など)」を絵文字付きで示し、読み合わせ時に同じ順番で説明するだけで、理解度とクレーム耐性が上がります(説明が毎回ぶれない)。
最後に、登記事項証明書の添付は「買主・借主のため」だけでなく、「説明した証拠を残す」意味が大きい点を社内で共有しておくと、運用が強固になります。国交省資料でも、重要事項説明に関する苦情・紛争相談が一定数あること、説明不備が紛争原因になることが示されており、説明の再現性(誰が見ても同じ説明ができる状態)を作ることが実務の守りになります。紙を添付するだけでなく、“説明の筋道”を添付する、という発想がポイントです。

