令和5年 宅建問題 問9の解説です。
Aを貸主、Bを借主として甲建物の賃貸借契約が令和 5年7月1 日に締結された
場合の甲建物の修繕に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 甲建物の修繕が必要であることを、Aが知ったにもかかわらず、Aが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。
2 甲建物の修繕が必要である場合において、BがAに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず、Aが必要な修繕を直ちにしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。
3 Bの責めに帰すべき事由によって甲建物の修繕が必要となった場合は、Aは甲建物を修繕する義務を負わない。
4 甲建物の修繕が必要である場合において、急迫の事情があるときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。
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民法の規定による甲建物の修繕に関する正しい記述は以下のとおりです。
1は正しい。
借主は、賃貸物件の修繕が必要であることを知りながら、貸主が相当の期間内に修繕をしない場合、自ら修繕をすることができる。
2は誤り。
借主は、修繕の必要性を貸主に通知しただけでは、直ちに自ら修繕をすることはできない。貸主が相当の期間内に修繕をしない場合に限られる。
3は正しい。
借主の責めに帰すべき事由で修繕が必要となった場合、貸主は修繕義務を負わない。
4は正しい。
急迫の事情がある場合、借主は貸主による修繕を待たずに自ら修繕をすることができる。
大家の修繕義務
大家の修繕義務については、以下のようにまとめられます。
民法606条1項により、大家は賃貸物の使用および収益に必要な修繕をする義務を負っています。 つまり、エアコンや給湯器、ガスコンロなどの設備が故障して賃借人が正常に使用できない場合、大家は自らの費用で修理する義務があります。
修繕義務の範囲
通常の用法で使用収益が妨げられる場合が対象です。漏水や電気が使えないなどが該当しますが、軽微な破損は含まれません。修繕が不可能な場合や過大な費用がかかる場合は、修繕義務は発生しません。
修繕義務違反への対処
大家が修繕を怠った場合、賃借人は修繕を請求できます。もし大家が正当な理由なく修繕を拒否すれば、民法上の義務違反となります。賃借人は一定期間経過後に自ら修理を行い、大家に費用の償還を求めることもできます。
したがって、大家は設備の故障などに対して速やかに対応し、賃借人が賃貸物件を正常に使用できるよう修繕する義務があります。
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民法606条1項の概要
民法606条1項は、賃貸人の修繕義務について規定しています。賃貸人は、賃借人が賃貸物件を適切に使用・収益できるよう、必要な修繕をする義務を負います。
具体的には、以下のようになります。
賃貸人は、賃借人が賃貸物件を利用する上で必要な修繕をしなければなりません。
ただし、賃借人の責めに帰すべき事由で修繕が必要になった場合は、賃貸人に修繕義務はありません。
改正の内容
2020年の民法改正で、上記のただし書きが追加されました。 これは従来の判例・通説を明文化したものです。つまり、賃借人の責任で修繕が必要になった場合、賃貸人に修繕義務はないことが明確化されました。
賃借人の修繕権
さらに、改正民法607条の2では、賃借人が一定の要件の下で修繕をする権利(修繕権)が新設されました。 賃借人は以下の場合に自ら修繕をすることができ、その費用を賃貸人に請求できます。
- 賃借人が賃貸人に修繕の必要性を通知したが、賃貸人が相当期間内に修繕しない場合
- 急迫の事情がある場合