特措法とは簡単に
空家特措法の勧告を受けると固定資産税が最大6倍になります。
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特措法の定義と法的位置づけ
特措法とは「特別措置法」の略称で、現行の法制度では対応できない緊急事態や特定の問題に対処するため、期間や目的を限定して制定される法律です。通常の法律とは異なり、時間的・対象的に限定された適用範囲を持つのが特徴です。
法律の世界では「特別法優先の原則」というルールがあります。つまり特定の事項については一般法よりも特措法が優先して適用されるということですね。ただし、特措法に規定されていない事項については一般法が適用されるため、両方の法律を理解しておく必要があります。
参考)https://xn--wtsq13a09q.jp/relationship-between-general-law-and-special-law/
不動産業界で最も影響が大きいのは「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)」です。この法律は2015年に施行され、適切な管理が行われていない空き家が地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしている問題に対処するために制定されました。地域住民の生命・身体・財産を保護することが目的です。
参考)https://www.env.go.jp/content/900492746.pdf
特措法には様々な種類があります。新型コロナウイルス対応の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」、再生可能エネルギー関連の特措法、税制優遇を定めた租税特別措置法などが代表例です。
それぞれが特定の社会課題に対応しています。
参考)2月13日改正法施行!「特措法」「感染症法」ってどんな法律?…
空家特措法が不動産従事者に与える影響
空家特措法は不動産従事者の業務に直接的な影響を及ぼします。所有者に対する管理責任が大幅に増加し、適切に管理されていない空き家は地域の治安や環境に悪影響を及ぼすため、厳しい措置の対象となるからです。
参考)空家特措法の影響は?不動産業界への影響を解説|尼崎市で不動産…
特定空家等に認定される条件は4つあります。
参考)特定空家等の認定と講じられる措置 – 亀岡市公式ホームページ
- 倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
これらのうち1つ以上の要件を満たした空き家が認定候補となります。注意が必要なのは、空き家の状態だけでなく周囲の環境によっても判断が変わる点です。同程度の劣化でも、立地によって認定されるケースとされないケースがあります。
2023年の法改正で「管理不全空家等」という新しい区分が追加されました。従来は「特定空家等」のみが固定資産税の住宅用地特例(評価額を1/6等に減額)の解除対象でしたが、改正法では管理不全空家等も対象になりました。つまり、特定空家に認定される前の段階でも税制優遇を失う可能性があるということですね。
固定資産税の増加額は無視できません。住宅用地の特例が適用されると、土地部分の固定資産税評価額が200㎡まで6分の1、200㎡以上で3分の1に軽減されます。この特例が受けられなくなると、土地部分の固定資産税が最大で6倍になってしまう可能性があります。例えば年間5万円だった固定資産税が30万円になるケースもあるわけです。
痛い出費です。
参考)空き家対策特別措置法とはどんな法律? 生活への影響についても…
市町村は固定資産税等に関する情報を内部で活用できるようになりました。空き家の実態把握や所有者の特定がより効率的に行われるようになり、行政指導の対象となるスピードが早まっています。
特措法における罰則規定の実態
空家特措法には段階的な措置が定められています。市町村は所有者に対して助言、指導、勧告といった行政指導を行い、勧告しても状況が改善されない場合はさらに厳しい措置が講じられます。
参考)空家等対策特別措置法とは−NPO法人 空家・空地管理センター
具体的な罰則の内容を見ていきましょう。緊急事態宣言下で営業時間短縮や休業要請に正当な理由なく応じない事業者には、30万円以下の過料(行政罰)が科されます。緊急事態宣言発令前の「蔓延防止等重点措置」段階では20万円以下です。
参考)改正「特措法」の気になる罰則規定や、企業・個人への影響は?
必要な立ち入り調査を拒否した場合も20万円以下の過料が科されます。これらは刑事罰ではなく行政罰ですが、金銭的なペナルティーであることに変わりはありません。
改正特措法では、都道府県知事が営業時間短縮や休業要請などに正当な理由なく応じない事業者に対して「命令」を出せるようになりました。つまり単なる「お願い」から強制力のある「命令」に変わったということですね。
空家特措法の場合、行政指導の流れは次のようになります。
改善命令が出された場合、期限内に対応しないと行政代執行の対象となります。行政代執行とは、行政が強制的に建物を解体するなどの措置を取り、その費用を所有者に請求することです。
解体費用は数百万円に及ぶこともあります。
法律家団体からは罰則規定に対する懸念も表明されています。特措法改正によって新設される罰則は、緊急事態宣言下または蔓延防止等重点措置下で発せられる都道府県知事の時短・休業等の措置命令に違反した事業者等が対象となっており、営業の自由との兼ね合いが議論されています。
参考)2021年2月1日付、法律家6団体「特措法等改正案の罰則規定…
不動産特定共同事業法との違いと使い分け
不動産業界には「不動産特定共同事業法(不特法)」という別の特措法も存在します。これは複数の投資家から資金を募り、その出資金で不動産を取引・運用し、得られた収益を配当する事業の仕組みを定めた法律です。
参考)不動産特定共同事業法(不特法)|用語集|不動産クラウドファン…
不特法の目的は2点です。
参考)【2026年最新】不動産特定共同事業法(不特法)とは?
- 会社が投資家から出資された資金をもって不動産の売買や賃貸できるようにすること
- 投資家が不動産会社の倒産等により不測の損害を受けることから保護すること
不動産クラウドファンディングなどの事業主の適切な業務運営を確保し、投資家の利益を保護することが狙いです。出資額を小口化することで、一般投資家でも不動産投資に参加できる仕組みを作っています。
空家特措法と不特法では対象が全く異なります。空家特措法は既存の空き家の管理や活用を促進し、地域の生活環境を守ることが目的です。一方、不特法は新たな不動産投資スキームを規制し、投資家保護を図ることが目的です。
不動産従事者としては、両方の法律を理解しておく必要があります。空き家の活用提案をする際には空家特措法の知識が必須ですし、投資型の不動産商品を扱う場合は不特法の規制を遵守しなければなりません。どちらの法律も違反すると業務に支障が出るため、定期的に最新情報をチェックすることが重要です。
特措法適用時の実務対応ポイント
空家特措法の適用を受けないためには、日常的な物件管理が不可欠です。定期的な巡回点検を実施し、建物の劣化状況や周辺環境への影響を確認しましょう。月に1回程度の頻度で、外観チェックや敷地内の清掃を行うのが基本です。
管理不全空家と認定されるリスクを回避するには、具体的な行動が必要です。屋根や外壁の破損を発見したら速やかに修繕する、雑草が生い茂る前に除草作業を行う、ゴミの不法投棄を防ぐため敷地を施錠するといった対策が有効です。
所有者やクライアントへのアドバイスも重要な業務です。特定空家認定のリスクを説明する際には、固定資産税が最大6倍になる可能性を具体的な金額で示すと理解しやすくなります。例えば「現在の固定資産税が年間10万円であれば、特例解除後は60万円になる可能性がある」といった形です。東京ドーム1つ分の敷地なら影響額は数千万円規模にもなります。
売却や賃貸、解体など複数の選択肢を提示することも大切です。空き家を放置するリスクとコストを比較し、最適な活用方法を一緒に考えましょう。解体する場合は補助金制度を利用できる自治体もあるため、事前に調査してから提案すると喜ばれます。
市町村の空き家対策窓口との連携も効果的です。助言・指導の段階で相談すれば、改善方法についてアドバイスをもらえることがあります。
早めの対応が原則です。
国土交通省の空家等対策関連情報ページでは、空家特措法の施行状況調査結果や参考資料が公開されています。最新の法令や運用指針を確認する際の参考リンクとして活用できます。
不動産従事者としてクライアントに提供できる付加価値は、法的リスクを事前に回避するための情報提供です。特措法の存在を知らずに空き家を放置しているオーナーは少なくありません。定期的な情報提供を通じて信頼関係を構築すれば、将来的な売買仲介や管理受託につながる可能性もあります。
記録を残すことも忘れないでください。点検日時、実施内容、発見した問題点、対応措置などを写真付きで記録しておくと、万が一行政から指導を受けた際の証拠資料になります。スマートフォンのメモアプリや写真フォルダで管理すると便利です。
助かります。
特措法は社会情勢に応じて改正されることがあります。2021年の新型コロナ特措法改正、2023年の空家特措法改正など、数年おきに重要な変更が行われています。業界団体からの情報や専門家のセミナーに参加して、常に最新の知識をアップデートしましょう。
法改正には必ず理由があります。

