契約成立後の解除で知らないと損する手続きと注意点
手付解除の期日内でも、買主が中間金を1円でも払った瞬間にあなたは解除できなくなります。
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契約成立後の解除で「手付解除」が使えなくなる条件
不動産売買の現場では、「手付解除期日の中なら、いつでも手付を放棄して解除できる」と思っている人が少なくありません。しかし、これは半分だけ正しい認識です。
民法第557条は、手付による解除ができるのは「相手方が契約の履行に着手するまで」と定めています。つまり、手付解除期日が契約書に書かれていたとしても、それより先に相手方が「履行に着手」した場合は、その時点で手付解除の権利は消えます。
「履行の着手」とは何でしょうか?単なる準備行為ではなく、外部から客観的に確認できる形での債務の履行行為を指します。たとえば買主が中間金を支払った、売主が所有権移転登記の申請を行ったなどのケースが履行の着手に該当します。
これが原則です。
一方で、引っ越しの準備、定期預金の解約、建物の清掃作業といった行為は、判例上「履行の着手」とは認められていません。この境界線が曖昧なことが、実務上のトラブルを生みやすい点です。
重要なのは、売主・買主のどちらの着手が問題になるかです。「相手方が着手するまで」という条文の文言は、自分自身が着手していても、相手方が着手していなければ手付解除が可能であることを意味します。つまり、自分が履行の着手をしていても、相手が未着手なら手付解除はできます。
一方、相手方が着手した後は、たとえ手付解除期日前であっても解除できません。この非対称な構造が、実務担当者として理解しておくべき急所です。
実務上は、手付解除期日を具体的な日付として契約書に明記し、その日付より前に中間金の支払い期日が来ないよう日程を設計することが標準的な対応になっています。期日の設計を誤ると、当事者の一方が解除の機会を失うリスクがあります。注意が必要ですね。
不動産適正取引推進機構:手付解除期限内における中間金支払いと履行の着手の関係(判例解説)
契約成立後の解除で違約金が売買代金の20%になるケースとは
手付解除ができる期日を過ぎた後に契約を解除したい場合、選択肢は大きく変わります。
この場合に適用されるのが「債務不履行による解除」、いわゆる違約解除です。債務不履行とは、相手方が契約で定められた義務を果たさないことを指します。買主が代金を支払わない、売主が引き渡しを行わないといった状況です。
違約解除が認められると、違反側は相手方に対して違約金を支払う義務が生じます。違約金の相場は売買代金の10〜20%であり、契約書にあらかじめ明記されているのが一般的です。
これは具体的にどれほどの金額になるでしょうか?
3,000万円の物件を例に取ると、10%で300万円、20%で600万円の負担になります。これは、手付金の放棄で済む手付解除と比べて、はるかに大きな損失です。
また、宅地建物取引業者が売主の場合は、宅建業法第38条により損害賠償額の予定や違約金の合計が「売買代金の20%を超えてはならない」と法律で上限が定められています。売主が宅建業者であれば、これを超える違約金を請求されても、超過部分は無効になります。
ただし、この上限規制が適用されるのは宅建業者が売主の場合のみです。個人間の売買ではこの保護が働かないため、20%を超える違約金が契約書に記載されていた場合は、その金額が有効になる可能性があります。これは使えそうです。
さらに注意すべき点があります。違約金を支払えば当然に解除できるわけではない、という点です。違約金の定めは、相手方に債務不履行があったときに請求できるものであり、自分の都合による解除の手段ではありません。自己都合で解除したいのであれば、あくまでも手付解除の仕組みを使うか、相手方との合意が必要です。
不動産会社による違約金事例の解説:売買代金の10〜20%を中心に、アウト行動のまとめ
契約成立後の解除で「ローン特約」が使えない意外な落とし穴
住宅ローンを利用する買主にとって、ローン特約(融資利用の特約)は非常に重要な保護手段です。融資が承認されなければ、違約金なしで契約を白紙解除でき、受け取った手付金も返還されます。
しかし、ローン特約の適用には条件があります。「買主が誠実に融資申請を行ったにもかかわらず」承認されなかった場合に限られるのです。
では、買主が「誠実に申し込んだ」と認められない状況はどのようなものでしょうか?たとえば以下のようなケースです。
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 収入証明書の提出を怠った | 誠実性なし → ローン特約が使えない可能性 |
| 虚偽の書類を提出した | 誠実性なし → 解除不可・債務不履行リスク |
| 審査期日を過ぎてから申し込んだ | 特約の期限切れ → 適用対象外 |
| 故意に審査を引き延ばした | 誠実性なし → 解除不可・違約金発生の可能性 |
「ローン特約があれば安心」という思い込みが、大きなリスクを生む場面があります。
とくに気をつけたいのが、特約の「期限」です。ローン特約には必ず期限が設定されており、その期日までに融資不承認の事実を売主に書面で通知しなければなりません。期日を1日でも過ぎると特約の効力が失われ、白紙解除の権利が消えます。
また、仲介業者を通じた口頭での「ローン落ちました」という連絡だけでは不十分なケースもあります。確実を期すには、内容証明郵便などの書面で売主に直接通知し、融資不承認の証明書を添付することが推奨されます。
ローン特約の通知期限の管理は、仲介業者にとっても重要な実務上の責任です。通知漏れや期日管理のミスは、買主への説明義務違反につながるリスクもあります。書類管理の徹底が条件です。
三井住友トラスト不動産:ローン特約に基づく解除の条件と誠実申請義務(法律アドバイス)
契約成立後の解除で仲介手数料はどうなるか・独自視点での整理
契約が成立後に解除された場合、仲介手数料をどう扱うかは、実務上の大きな論点です。
一般的な認識では「売買契約が成立したら仲介手数料が発生する」と理解されていますが、解除の原因によって取り扱いが異なります。
まず、ローン特約による白紙解除の場合は、「契約自体が最初からなかったとみなす」扱いになるため、仲介手数料は返還対象になります。これは実務上の慣行として定着しており、媒介契約書にも「ローン特約で解除の場合は手数料を請求しない」と明記されているケースが多数あります。
一方、売主または買主の一方的な事情による手付解除・違約解除の場合は、状況が変わります。判例では「売買契約の成立によって仲介業務は完了している」として、仲介手数料の請求権が残ると判断されることもあります。つまり、手付解除によって売買が白紙に戻っても、仲介業者への手数料支払い義務が消滅するとは限りません。
厳しいところですね。
実務での注意点は2つあります。
- 自社が締結した媒介契約書に、解除時の手数料取り扱いが明記されているかどうかを確認する
- 記載がない場合や解釈が曖昧な場合は、解除前に顧客とトラブルにならないよう事前に説明する
また、合意解除(売主・買主双方の話し合いによる解除)の場合は、違約金の有無や金額も含めて合意内容を書面に起こし、双方が署名・押印することが必須です。口頭での合意だけでは、後から「言った・言わない」のトラブルになりやすいのが実態です。
なお、合意解除の覚書には最低限、解除の合意日・手付金の処理・仲介手数料の返還有無・違約金の有無と金額・解除の効力発生日の5項目を明記しておくのが実務的な目安です。
弁護士による解説:売買解除後の仲介業者の報酬請求権について(判例ベース)
契約成立後の解除で契約不適合責任を問われるタイムリミット
2020年4月の民法改正で「瑕疵担保責任」が廃止され、新たに「契約不適合責任」が導入されました。この変更は、不動産売買の実務に大きな影響を与えています。
契約不適合責任とは、引き渡した物件が「契約の内容に適合しない」場合に売主が負う責任です。雨漏り・シロアリ被害・土壌汚染・用途違反など、契約時の説明と実態が異なる場合が対象になります。
旧来の瑕疵担保責任との最大の違いは、買主が行使できる権利の幅です。
旧法では損害賠償と解除のみでしたが、新法では次の4つの権利が明確に認められています。
つまり、買主にとって選択肢が大幅に増えました。
では、解除権を行使できる期限はいつまでかという点が実務上の核心です。
民法では「買主が不適合を知った時から1年以内に通知」することが必要とされています。ただしこれは「解除する」という意思表示の期限ではなく、「不適合の事実を売主に通知する」期限です。この点の理解が不正確な担当者が多いため、注意が必要です。
| 区分 | 期限 |
|---|---|
| 不適合の通知期限 | 不適合を知った時から1年以内 |
| 損害賠償請求権の消滅時効 | 権利行使可能時から5年 または 引き渡しから10年 |
| 契約解除権の行使 | 消滅時効内 |
ただし、実際の契約書では「引き渡しから3ヶ月以内」または「引き渡しから1年以内」と特約で短縮されているケースが大半です。売主が宅建業者でない個人の場合でも、こうした免責特約は有効になります。売主が宅建業者である場合は、特約で2年未満に短縮できません。
契約不適合責任に基づいて解除を認める条件として、「不適合が軽微でないこと」が求められる点も重要です。些細な不具合を理由に解除を求めても、裁判所では認められないケースがあります。これが原則です。
SUUMO:不動産売買の契約解除の方法・全7パターンと手付金・違約金の解説
東京都住宅政策本部「不動産取引の手引き」:契約を解除するときの公式ガイド

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