案内所届出の宅建業法手続きと違反リスク完全ガイド

案内所届出と宅建業法の義務・手続きを徹底解説

事務所の専任宅建士を案内所に「兼任」させても、届出をすれば合法だと思っていませんか?それは50万円罰金の落とし穴です。

📋 この記事の3つのポイント
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届出の要否は「契約行為の有無」と「10区画・10戸以上」で決まる

単なる案内・広告宣伝のみの場合は届出不要。ただし標識掲示は必須。「一団」の基準は全体計画で判断されるため、今回が9区画でも全体計画が10区画以上なら届出が必要です。

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届出期限は「業務開始日の11日前まで」=中10日を空ける

法律上は「10日前まで」と記載されていますが、実務上は「中10日」を空ける必要があります。6月15日開始なら6月4日が期限です。「10日前=6月5日」と誤解すると違反になります。

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専任宅建士は事務所との兼務が禁止・届出先は原則2か所

案内所の専任宅建士は、本店・支店など他の事務所の専任宅建士を兼務させることができません。届出先は免許権者と案内所所在地の都道府県知事の2か所が原則です。


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案内所届出とは:宅建業法第50条2項の基本を理解する

 

宅建業を営む会社が事務所以外の場所で営業活動をする場面は、分譲マンションのモデルルームや現地販売所など、実務では日常的に発生します。こうした「案内所等」について、宅地建物取引業法(以下、宅建業法)第50条第2項は、一定の要件を満たす場合に事前届出を義務付けています。

届出が義務付けられるのは、「契約の締結」または「契約の申込みの受付」を行う案内所です。これが大前提です。

宅建業法上の「案内所等」に該当する場所は、施行規則第15条の5の2によって次の4種類に整理されています。

区分 内容
①継続施設 事務所以外で継続的に業務を行える施設を有する場所(出張所・現場事務所等
②自社分譲案内所 宅建業者が10区画以上の宅地または10戸以上の建物を分譲する際の案内所
③代理・媒介案内所 他の宅建業者の一団の宅地建物の分譲について代理・媒介を行う案内所
④展示会等 宅建業者が業務に関して展示会その他これに類する催しを実施する場所

ここで重要なのは、「契約の申込み」の定義です。契約締結の意思を表示することが「申込み」に該当し、物件購入のための抽選申込みのような金銭の授受を伴わないものも含まれます。これは意外と広い範囲ですね。

つまり、「申込書を預かるだけ」「抽選だけ行う」という場合であっても、届出義務が発生することを理解しておく必要があります。

案内所届出の要否判断:10区画・10戸の「全体計画」に注意

「10区画・10戸以上」という基準は、一見シンプルに見えます。しかし、現場で誤解が生じやすい重要な落とし穴があります。それは、判断基準が「今回販売する戸数」ではなく、「全体の分譲計画の戸数・区画数」である点です。

たとえば、全体計画が15区画の宅地分譲のうち、最初のフェーズで8区画のみを販売する場合を考えてみましょう。「今回は8区画だから10未満、届出不要」と判断してしまう業者が現場では少なくありません。しかし正確には、全体計画が15区画以上であるため、今回の販売が8区画であっても届出義務が発生します。

全体計画が10以上かどうかで決まる、これが原則です。

不動産流通推進センターの相談回答(2018年掲載)でも、8区画の建売分譲を行う事例について「今回の分譲戸数が8区画であっても、全体計画が10区画以上であれば届出が必要」と明確に回答されています。自社の分譲計画が複数フェーズに分かれている場合は、全体の総数で判断することを必ず確認してください。

また、届出が不要なケースもあります。案内所で契約締結も申込み受付も行わず、単に物件の案内や広告宣伝のみを行う場合は、届出は必要ありません。ただし、届出が不要な場合でも、案内所への「標識(業者票)の掲示」は省略できません。取引の有無にかかわらず、案内所を開設した時点で標識掲示義務が発生します。

さらに見落としがちなのが、賃貸の取引です。宅建業法上の届出対象は売買に限らず、賃貸の代理・媒介についても、10区画または10戸以上かつ契約締結・申込みを受ける場合は届出対象となります。売買物件を扱っていないから届出不要、という判断は誤りです。

不動産流通推進センター:案内所等の設置に伴う宅建業法第50条第2項の届出についてのQ&A(全体計画の考え方、兼務禁止など実務に直結する内容を解説)

案内所届出の期限と届出先:「中10日」の計算ミスは50万円罰金のリスク

届出期限について、宅建業法の条文や試験テキストでは「業務を開始する日の10日前まで」と記されています。ところが実務の現場では「11日前までに提出」という表現が正確です。なぜこの差が生じるのでしょうか。

これは「中10日」という計算方法によるものです。届出日の翌日を起算点として10日間を数えるため、業務開始日との間に中10日を空ける必要があります。つまり6月15日に業務を開始する場合、「10日前=6月5日」ではなく「6月4日」が提出期限となります。1日のズレで違反になることもあるため注意が必要です。

郵送で届け出る場合は「必着」が条件となる自治体がほとんどです。「発送日=届出日」という扱いにはならないため、余裕を持って送付する必要があります。

届出先は、原則として次の2か所です。

同一の場合(例:甲県知事免許の業者が甲県内に案内所を設置する場合)は1か所への届出で足ります。

なお、令和6年(2024年)5月25日以降、国土交通大臣免許業者が案内所等の届出をする際の「都道府県経由事務」が廃止されています。これは令和3年の宅建業法改正による変です。従来は大臣への届出を都道府県知事経由で行うルールでしたが、現在は大臣(地方整備局等)へ直接届け出ることができます。法改正前の知識のまま実務を行っている方は要注意です。

免許の種類 届出先
都道府県知事免許 免許権者の知事 + 案内所所在地の知事(同一知事なら1か所)
国土交通大臣免許 国土交通大臣(地方整備局へ直接)+ 案内所所在地の都道府県知事

届出書に記載すべき事項は、所在地・業務内容・業務を行う期間・専任の宅地建物取引士の氏名の4項目です。このうち専任宅建士の変更が生じた場合は、変更内容を書き直した届出書を再提出する必要があります。

宮城県公式ウェブサイト:50条2項(案内所)の届出について(届出書様式・提出部数・届出期限など実務的な手続きを確認できる)

専任宅建士の設置義務:事務所との兼務は絶対にできない

契約行為(申込みまたは締結)を行う案内所には、「成年者である専任の宅地建物取引士」を1名以上設置しなければなりません。これが原則です。

ここで実務上の大きな誤解が起きやすいポイントがあります。事務所の専任宅建士は案内所の専任宅建士を兼務できない、という点です。

本店や支店に登録している専任宅建士を案内所に「兼務」として配置することは、宅建業法上禁じられています。案内所の開設期間中は、その案内所専用の専任宅建士を別途確保する必要があります。

「うちの支店の専任宅建士を週末だけ案内所に出向させればいい」という対応は違法です。この点を見落として案内所を運営してしまっているケースは実務でも散見されます。痛いですね。

では、複数の宅建業者が同一の案内所で業務を行う場合はどうなるのでしょうか。同一物件について、売主業者と媒介・代理業者が同じ場所で業務を行う場合は、いずれかの業者が専任宅建士を1名以上置けば要件を満たします。ただし、複数業者が異なる物件を取り扱う不動産フェア等では、業者ごとに1名以上の専任宅建士が必要です。

案内所の設置期間は最長1年間です。1年を超えて継続する場合は、期限が切れる11日前までに新規の届出を行う必要があります。「届け出た期間が終了しても業務を継続している」という状態は無届け営業になります。これは法的リスクが大きいところですね。

週末だけ契約担当者が出張して申込みを受け付けるような「別荘の週末案内所」なども届出対象です。週1日しか開かない場所でも、申込みや契約締結を行う以上は専任宅建士の設置と届出が必要です。

佐賀県公式ウェブサイト:契約の申込受付等を行う案内所等を設置する場合の手続き(専任宅建士の兼務禁止など実務上の注意点が確認できる)

標識掲示義務と様式:届出不要の案内所でも標識は必須

「届出が不要なら何もしなくていい」と考えるのは間違いです。標識は必須です。

宅建業法第50条第1項は、宅建業者が業務を行うすべての場所に対して標識(業者票)の掲示を義務付けています。届出の要否にかかわらず、案内所を設置した時点で標識の掲示義務が生じます。

標識の様式は、案内所の種別と契約行為の有無によって異なります。自社分譲か代理・媒介かによっても変わるため、以下を参考にしてください。

場面 契約行為あり 契約行為なし
一団の宅地建物分譲(売主) 様式第10号 様式第10号の2
一団の宅地建物分譲(媒介・代理) 様式第11号の2 様式第11号の3
宅地建物の所在地(現地) 様式第11号

注意すべきは「誰が標識を掲示するか」です。売主業者が媒介・代理を他の宅建業者に依頼し、その宅建業者が案内所を設置した場合、案内所に掲示する標識は「案内所を設置した業者(媒介・代理業者)」のものとなります。売主業者の標識を案内所に掲げる必要はありません。一方、物件が所在する現地(宅地建物の所在地)には「売主業者」の標識を掲示します。この2つを混同しないようにすることが大切です。

また、媒介・代理業者が案内所を設置した場合の標識(様式第11号の2等)には、売主である宅建業者の商号または名称と免許証番号を記載しなければなりません。記載漏れにも注意が必要です。

標識の掲示義務に違反した場合は、監督処分として指示処分の対象となるほか、宅建業法第83条に基づき50万円以下の罰金が科される可能性があります。「貼り忘れ」という些細なミスが、監督処分や罰金刑につながる可能性がある点をしっかり認識しておきましょう。

東京都住宅政策本部:宅地建物取引業法第50条第2項の届出(様式・届出期限・電子申請方法など手続き全般を確認できる)

案内所届出の違反リスクと実務上の独自チェックポイント

案内所届出に関する違反は、「知らなかった」では済まされない厳しい法的リスクをはらんでいます。宅建業法違反に対する主な罰則を整理しておきましょう。

違反行為 罰則・処分
届出義務違反・虚偽届出 50万円以下の罰金
専任宅建士の設置義務違反 50万円以下の罰金
標識の掲示義務違反 指示処分・50万円以下の罰金
法人が違反行為を行った場合 両罰規定により法人も罰金の対象

罰則は業者だけでなく、行為を行った担当者個人にも科されます。両罰規定という仕組みがあり、違反した従業員だけでなく、会社(法人)も同様の罰金刑を受けることがあります。これは使えそうな知識ですね。

実務で見落とされやすいポイントとして、以下の3点を特に意識してください。

  • 🔴 全体計画の区画数・戸数の確認:今回の販売数だけで10未満と判断しない。必ず設計図書や開発許可の内容から全体計画の規模を確認する。
  • 🔴 「中10日」計算の徹底:業務開始日から逆算して11日前を期限として社内スケジュールに落とし込む。郵送の場合は到着に2〜3日の余裕を持たせる。
  • 🔴 専任宅建士の人員確保を早めに行う:案内所開設が決まった段階で、その案内所専用の専任宅建士を確保する動きを始める。届出直前になってから探すと、間に合わないケースがある。

令和7年(2025年)4月1日以降、東京都をはじめ各自治体でeMLIT(国土交通省手続業務一貫処理システム)を利用した電子申請が可能となっています。電子申請を利用するにはGビズIDプライム(またはメンバー)アカウントが必要で、取得には2週間程度かかる場合があります。電子申請を活用したい場合は、事前にGビズIDを取得しておくことが重要です。

案内所届出手続きは、一度体制を整えてしまえば比較的スムーズに行えます。社内でチェックリストを作成し、案内所開設の意思決定から届出完了までのフローを標準化しておくと、担当者が変わっても安定した運用が可能になります。業務フローの整備が最大のリスクヘッジです。

サポート行政書士法人:宅地建物取引業法第50条第2項の届出とは?(届出先・電子申請・書類作成代行サービスの概要を確認できる)

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