住生活基本計画と国土交通省が示す住まいの指針と新計画

住生活基本計画と国土交通省の住宅政策を徹底解説

今の家が「国の基準を満たしていない」と知っても、補助金はもらえないケースが大半です。

📋 この記事の3つのポイント
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住生活基本計画とは?

住生活基本法に基づいて国土交通省が策定する、日本の住宅政策の最上位計画。おおむね5年ごとに見直され、補助金・税制・建築基準など私たちの暮らしに直結する施策の根拠になる。

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現行計画(2021〜2030年)の8つの目標

DX推進・災害対策・子育て・高齢者・セーフティネット・脱炭素・空き家対策・住生活産業の発展という8つの目標を軸に、「量から質へ」の住宅政策転換を推進している。

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2026年新計画のポイント

令和8年度〜令和17年度を計画期間とする新計画が2026年3月に閣議決定予定。相続空き家の拡大・高齢単身世帯の急増・カーボンニュートラルを踏まえ、住宅ストックの「質向上と循環」が新たな柱となる。


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住生活基本計画とは国土交通省が策定する住宅政策の根拠

 

「住生活基本計画」という名前を聞いて、難しそうな官公庁の文書だと感じる方は多いでしょう。ところが、この計画は住宅ローン減税・省エネ補助金・空き家対策など、私たちが日々の住まい選びで使う制度の「根拠文書」になっています。住まいに関して何らかの公的支援を受けたい、あるいは今後の不動産市場を読みたいと考えるなら、この計画の中身を知っておくことは避けて通れません。
計画の法的根拠は「国土交通大臣が住生活の安定確保・向上促進に関する基本的な計画の案を作成し、閣議決定を求めることが義務付けられています。つまり、任意で作る文書ではなく、法律が国に「作れ」と命じている計画です。これが重要です。
計画には3つの特徴があります。
– 閣議決定される国家計画:内閣総理大臣と全閣僚が合意した政府の最重要方針であり、予算・税制・法律改正を動かす力を持つ
– 計画期間は10年:現行計画は令和3年度(2021年)〜令和12年度(2030年)が対象
– おおむね5年ごとに見直し:社会情勢の変化に追いつくため、住生活基本法第15条第6項により中間での新が定められている
策定プロセスも法律で規定されており、「社会資本整備審議会住宅宅地分科会」という専門家・有識者の会議で議論し、全都道府県知事の意見を聴取した上で計画案を仕上げます。国民向けにパブリックコメントも実施されるため、一般の声も反映される仕組みになっています。
これが基本です。次に、計画が実際にどんな数値目標を持っているかを見ていきましょう。
国土交通省の住生活基本計画(全国計画)概要ページ。
国土交通省|住生活基本計画(全国計画)公式ページ

住生活基本計画の8つの目標と居住面積水準の数字

現行の住生活基本計画(2021年3月19日閣議決定)は、「3つの視点」と「8つの目標」で構成されています。この構造を知ることで、国がどこにお金と制度を集中させているかが見えてきます。

視点 目標番号 目標の内容
社会環境の変化 目標① 「新たな日常」やDXに対応した新しい住まい方の実現
社会環境の変化 目標② 頻発・激甚化する災害への対応と被災者住まいの確保
居住者・コミュニティ 目標③ 子どもを産み育てやすい住まいの実現
居住者・コミュニティ 目標④ 多様な世代が支え合い高齢者等が安心して暮らせるコミュニティ形成
居住者・コミュニティ 目標⑤ 住宅確保要配慮者が安心して暮らせるセーフティネット機能の整備
住宅ストック・産業 目標⑥ 脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成
住宅ストック・産業 目標⑦ 空き家の適切な管理・除却・利活用の一体的推進
住宅ストック・産業 目標⑧ 居住者の利便性を向上させる住生活産業の発展

この8目標と密接に関係するのが「居住面積水準」です。意外ですね。実は住生活基本計画は、単なる政策方針だけでなく、「国民が最低限どれだけの広さで暮らすべきか」という具体的な数値基準も定めています。
居住面積水準には2種類あります。一つ目は「yuudoukyojuumenokijuntokeisanhouhou.html”>誘導居住面積水準」で、豊かな住生活のために目指すべき広さです。都市の集合住宅なら4人家族で95㎡、郊外一戸建てなら125㎡が目安とされています。
つまり「4人家族で50㎡以下」の住宅は、国の基準では「最低水準未満」ということになります。数字だけ覚えておけばOKです。
国土交通省|住生活基本計画における「水準」について(PDF)

住生活基本計画が示す空き家対策と省エネ基準の深刻な実態

住生活基本計画を読み解く上で、もっとも現実的に私たちの生活に関わるのが「住宅ストック」をめぐる数字です。この数字を知ると、国がなぜここまで既存住宅の改修と循環に力を入れているか、その理由がはっきりします。
まず空き家問題です。居住目的のない空き家(いわゆる「その他空き家」)は、過去20年間で約182万戸から約386万戸(令和5年時点)に膨らんでいます。東京都内の住宅が約430万戸と言われているので、それに匹敵するほどの空き家が全国に眠っているイメージです。
2021年策定の現行計画では、2030年度までにこの数を400万戸程度に抑えることを目標に掲げました。再利用できるものは50万戸活用し、老朽化した危険空き家は20万戸を除却するという具体的な方針です。
次に省エネ基準の問題です。これが特に深刻です。
– 日本の住宅ストック全体(約6,240万戸)のうち、新耐震基準を満たすもの(約4,050万戸)の中でも、省エネルギー基準を達成していないストックが約3,450万戸を占める
– つまり、日本の住宅の半数以上が「断熱性能が国の基準に届いていない」状態
3,450万戸がどれくらいの規模かというと、日本全国の世帯数約5,400万世帯の6割強にあたります。これは想像以上の規模です。
厳しいところですね。しかし、これが逆に「省エネ住宅への改修補助金」「グリーン住宅ポイント」「長期優良住宅制度」といった制度の充実につながっており、知っている人はリフォーム時に大きな経済的メリットを得ています。

住生活基本計画と国土交通省が推進する住宅セーフティネットの現状

住生活基本計画の目標⑤にある「住宅確保要配慮者」という言葉は、実は私たちが思う以上に広い範囲の人を指しています。これが大事です。
住宅確保要配慮者とは、収入の低い方だけでなく、高齢者・障害者・子育て世帯・外国人・DV被害者・犯罪被害者・生活困窮者なども含まれます。現行計画の数字を見ると、その規模が分かります。
– 生活保護受給世帯:約164万世帯
– 障害者手帳所持者等:約593万人
– 在留外国人:約293万人
これだけ多様な世帯が「住宅確保に困難を抱える」状態にある中で、国は「住宅セーフティネット登録制度」を設け、民間の空き家・空き室を居住支援協議会が設立されている市区町村の人口カバー率を現状の約4割から9割へ引き上げるという目標が示されました。これは使えそうです。賃貸物件を貸し出す側(家主)にとっては、入居者確保の観点から居住支援協議会との連携が新たな選択肢になります。家主が「訳あり入居者」を受け入れやすくなるよう、家賃債務保証制度の整備なども同時に進められています。
また、2026年新計画では高齢期の暮らしを支える住宅供給数を108万戸から150万戸へ拡大する目標も設定されました。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や、バリアフリー賃貸住宅への需要が今後ますます高まることが読み取れます。
国土交通省|住生活基本計画(全国計画)公式ページ

住生活基本計画の令和8年度新計画で変わる住宅市場の方向性

2026年3月に閣議決定が見込まれる新たな住生活基本計画(令和8年度〜令和17年度)は、現行計画からいくつかの重要な転換を行います。今からその方向性を把握しておくと、住まいの選択や投資判断で先手を打てます。
新計画の計画期間は令和8年度(2026年)から令和17年度(2035年)の10年間です。視点の枠組みも「住まうヒト・住まうモノ・住まいを支えるプレイヤー」の3つに整理されました。
新計画で特に注目すべき変化は以下の通りです。
– 🏚️ 相続空き家への踏み込んだ対策:都市部における「使用目的のない空き家」は約95万戸(令和5年時点)とされており、相続空き家の管理負担・管理不全化・処分の機運醸成が明示された
– 🌿 省エネ性能の数値目標引き上げ:住宅の省エネ性能を示すBEI(建物省エネ指数)の平均値を現状の約1.3から1.0(基準値ちょうど)まで引き上げる目標が設定された
– 💰 住宅の資産価値評価の普及:住宅資産価値を評価するローン取扱機関の比率を現状27%から35%に高める目標が入り、「家を売るときに性能が値段に反映される」市場への転換が加速する
– 🤝 二地域居住の制度的後押し:地方への移住や二地域居住を支援する環境整備が明示。交通費補助や税制上の配慮も検討対象に入っている
つまり新計画は「新築を建てる」から「今ある住宅を賢く活用・改修・継承する」への大転換を、より具体的な数値目標で後押しする内容です。既存住宅市場やリフォーム市場が今後の政策の恩恵を受けやすくなるということでもあります。
既存住宅取引とリフォーム市場の合計規模は現状16.9兆円ですが、新計画では2035年までに20兆円規模への拡大を目標としています。この市場拡大の波をどう活かすかは、知っているかどうかの差が大きいです。
住宅新報(まとめ記事)|国土交通省:住生活基本計画改定案、2050視野に指標と工程示す

住生活基本計画と国土交通省の脱炭素目標があなたの住宅コストを変える理由

「住宅の省エネ基準」と「脱炭素政策」は、住生活基本計画の中でも今後最もお金に直結するテーマです。これを知らないと、数十万〜数百万円単位の損につながる可能性があります。
現行計画のデータで確認した通り、日本の全住宅ストックのうち省エネ基準を達成していない住宅は約3,450万戸に及びます。日本全国の住宅の相当数が断熱性の低い「寒い家」「暑い家」です。この状況を改善するため、国は2025年4月から新築住宅の省エネ基準適合を原則義務化しました。
義務化前と後では何が変わるか、という点が実は読者にとって重要です。

  義務化前(〜2025年3月) 義務化後(2025年4月〜)
新築住宅の省エネ性能 任意(努力義務) 原則適合義務
住宅ローン減税の優遇 性能に関わらず一定 省エネ性能の高低によって借入限度額に差
既存住宅への影響 大きな差なし 性能の低い既存住宅は売却時に価値が低く評価されやすい

新計画ではこの流れをさらに加速させ、住宅のBEI(建物省エネ指数)平均値を1.0まで引き上げる目標を設定しています。現状の平均1.3という数値は「まだまだ基準に届いていない住宅が多い」ことを意味しています。
住宅性能の高い家は将来の売却価格に違いが出る時代が来ます。つまり省エネリフォームは「快適さ」だけでなく「資産価値維持」の意味を持ちます。省エネ改修を検討している場合は、国や自治体の補助金(こどもエコすまい支援事業の後継制度など)を活用することで費用を大幅に抑えられます。リフォームを検討する際は「住宅省エネ2024キャンペーン」の後継施策を国土交通省のホームページで最新情報を確認してみてください。
省エネ基準が条件です。この1点を押さえておくだけで、補助金の取りこぼしを防げます。
国土交通省|住生活基本計画(全国計画)本文PDF(令和3年3月閣議決定)

老後の住まいの探し方―週刊東洋経済eビジネス新書No.229