サービサー法ガイドラインの禁止行為と債務者の権利

サービサー法ガイドラインで定める禁止行為と債務者保護の仕組み

弁護士に債務処理を委任した翌日でも、サービサーから電話がかかってくることがあります。

📋 この記事のポイント
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サービサー法とガイドラインの全体像

1999年施行のサービサー法は法務大臣許可制の債権回収会社を規定。事務ガイドラインで禁止行為の具体的基準が定められています。

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ガイドラインが定める具体的な禁止行為

深夜(午後9時〜午前8時)の連絡や反復訪問、弁護士委任後の直接接触など、細かなルールが法律と事務ガイドラインで明文化されています。

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個人情報保護ガイドラインと債務者の対処法

個人情報の目的外利用や機微情報の取扱いに厳格なルールあり。違反を発見したときの通報・相談先も解説します。


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サービサー法とガイドラインの基本的な仕組みと成立背景

サービサー法(正式名称:式会社(債権回収会社)が合法的に特定金銭債権の管理・回収を行えるようになりました。この許可を受けるには資本金5億円以上であること、常務に従事する役員に弁護士が含まれることなど、厳格な要件が課されています。つまり、誰でも設立できる業態ではありません。
法律の条文だけでは実務での運用基準が曖昧になるため、法務省は「債権回収会社の審査・監督に関する事務ガイドライン」(以下、事務ガイドライン)を策定しました。これが現場レベルで債権回収会社を縛る具体的なルールとして機能しています。さらに個人情報委員会(PPC)と法務省が共同で「債権管理回収業分野における個人情報保護に関するガイドライン」も整備されており、債務者の個人データの取扱いについても細かく規定されています。
現在、法務大臣の営業許可を受けて活動している債権回収会社は国内で70社以上あります。また全国サービサー協会(一般社団法人)が会員会社のコンプライアンス強化や苦情受付を担い、業界の自主規制団体として機能しています。サービサーが取り扱ってきた債権の累積件数は1億4,000万件を超えており、私たちの身近なところにも影響が及ぶ制度です。
サービサー法が対象とするのは「特定金銭債権」と呼ばれる債権に限られます。貸付債権、ファクタリング債権、リース・クレジット契約に基づく債権など、法律に列挙された種類のもののみです。この「特定金銭債権」以外の債権を取り扱うことは、サービサーとして許可を受けていたとしても禁止されています。取り扱う債権の種類を誤ると法律違反になる、というのは実務上の重要ポイントです。
法務省:債権管理回収業に関する特別措置法関係法令等資料集(事務ガイドラインのPDFあり)

サービサー法ガイドラインが定める取立行為の具体的な禁止内容

サービサー法17条1項は、債権回収会社の業務従事者が「人を威迫し又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない」と定めています。そして事務ガイドラインが、この「威迫」と「平穏を害する言動」を具体的に定義しています。
「威迫」に当たる禁止行為には以下のようなものが挙げられています。

  • 暴力的な態度をとること
  • 大声を上げたり、乱暴な言葉を使ったりすること
  • 多人数で債務者の自宅等に押し掛け、または大勢で取り囲んで面談すること

「私生活・業務の平穏を害する言動」としては、より具体的な場面が列挙されています。

  • 正当な理由なく、午後9時から午前8時までの間に電話・FAX・メールで連絡し、または訪問すること
  • 正当な理由なく、反復または継続して電話・電報・FAX・メール・訪問を行うこと
  • 債務者等から退去を求められたにもかかわらず、その場所から退去しないこと
  • 張り紙・落書きなど、あらゆる手段で債務者の借入事実やプライバシーをあからさまにすること
  • 近隣の住民に対して、来訪目的を明らかにした上で債務者への伝言を依頼すること
  • 保険金による弁済を強要または示唆すること

特に重要なのが「弁護士委任後の直接接触禁止」です。サービサー法18条8項は、債務者が弁護士または弁護士法人に債務処理を委任し、その旨の通知があったときは、正当な理由がない限り、債務者に直接訪問や電話をして弁済を要求してはならないと定めています。弁護士へ委任する通知を出すだけで、サービサーからの直接連絡を法的に止められるということです。これは多くの債務者が知らない重要なルールです。
また、「偽りその他不正の手段」の使用も明確に禁じられています(サービサー法18条4項)。例えば、残存債務額を実際よりも多く偽ることや、消滅時効の援用という正当な抗弁権が存在しないかのように債務者を誤解させる言動は、すべて違法です。時効が成立している可能性がある場合でも、債権回収会社が「時効はない」などと言い切るのは法律違反にあたります。
さらに、サービサー法18条6項・7項では、借り換えによる弁済資金の調達要求と、家族などへの弁済要求についても規制があります。クレジットカードで物品を購入させ古物商に売却させる方法など、債務額を増加させる手段での弁済資金調達を促すことは禁止です。また、内縁配偶者や同居している族に対して、本人に代わって弁済することをみだりに要求することも禁じられています。
貸金業法及びサービサー法に基づく取立行為の規制(禁止行為の詳細一覧)

サービサー法ガイドラインにおける個人情報保護の厳格なルール

個人情報保護の分野でも、サービサーには一般企業よりも厳しいルールが課されています。個人情報委員会と法務省が共同で策定した「債権管理回収業分野における個人情報保護に関するガイドライン」(令和6年3月改訂)がその根拠です。
このガイドラインで特に重要なのが「機微(センシティブ)情報」の取扱いに関する規定です。機微情報とは、本人の信条、社会的身分、病歴、労働組合への加盟、本籍地、保健医療、性生活などに関する情報を指します。債権回収会社は、法令に基づく場合や本人の同意がある場合などの限られた例外を除き、機微情報の取得・利用・第三者提供を原則として行ってはならないとされています。
利用目的の制限も厳格です。例えば、債権の管理回収目的で取得した債務者の情報を、名簿化して債務状況リストとして販売することは明確に禁止されています。これは「利用目的の達成に必要な範囲を超えた利用」として違法と判断されます。
個人情報の不適正利用も禁じられています。例えば、債権回収目的で収集した個人情報を、違法な行為を営む探偵業者へ提供することや、違法な回収行為を行うことが予見される第三者へ債権に係る個人情報を提供することも、禁止行為に含まれます。
本人の同意取得にも特別なルールがあります。サービサーが本人の同意を得る際は、原則として書面によることが求められています。包括的な同意(他の契約条項と一体化した形での同意)ではなく、個人情報の取扱いに関する項目を明確に区別した形での同意でなければなりません。債権者としての立場を利用して同意を強いることも許されません。
また、個人データの保存期間については、法定帳簿の保存期間(5年間)が定められており、目的が達成された後は速やかに消去・返還することが求められます。たとえば、債権の買取査定のために個人データを取得したが、結局債権を譲り受けなかった場合、その個人データは速やかに破棄することが求められます。厳格なルールが設けられているということです。
個人情報保護委員会:債権管理回収業分野における個人情報保護に関するガイドライン(令和6年3月版)

サービサー法違反を見分ける方法と不正業者への対処法

債権回収会社を名乗る業者から連絡があったとき、それが本物のサービサーかどうかを確認することが最初のステップです。サービサーとして業務を行うには、法務大臣の営業許可が必須です。まず法務省のホームページにある「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」を確認する、これが基本です。
この一覧には、許可番号・営業許可年月日・商号・代表者・本店所在地・電話番号が掲載されています。相手業者の名前や電話番号がこの一覧に存在しない場合は、サービサー法違反が確実に疑われます。現実に、法務大臣の認可を受けた債権回収会社の名称に類似した名前を使って架空の債権を請求する悪質業者が存在しており、法務省もホームページ上で注意を呼びかけています。

  • 法務省の許可一覧に社名があるか確認する
  • 身分証明書(顔写真付き)の提示を求める:サービサー法は業務従事者に顔写真付きの身分証明書の携帯を義務付けています
  • 訪問・電話の時間帯をチェックする:午後9時〜午前8時の接触は禁止(正当な理由がない限り)
  • 弁護士委任通知を出すことを検討する:通知後はサービサーからの直接連絡が法的に禁止されます

サービサー法に違反する行為が疑われた場合の対処法は、大きく3つあります。
第1の窓口は「全国サービサー協会」です。電話番号は03-3221-6771(受付:平日10時〜12時、13時〜16時)で、苦情・相談を受け付けています。書面での申し入れも可能で、専用の「苦情申出・相談申込書」がホームページからダウンロードできます。
第2は「法務省(法務大臣)への申告」です。債権回収会社に対する監督権限は法務大臣が持っており、法律違反が認められれば業務改善命令や最悪の場合には許可取消しという不利益処分が行われます。実際に2022年にはジャパントラスト債権回収が法務省から業務改善命令を受けています。
第3は「弁護士への相談」です。サービサーによる違法な取立行為が繰り返される場合、弁護士から「受任通知」を送ることで直接の取立てを止めることができます。消滅時効が成立している可能性がある借金についても、弁護士や司法書士が内容を精査した上で時効援用の手続きを進めることができます。
法務省:債権回収会社と類似の名前をかたった業者による架空の債権の請求への注意

サービサー法ガイドラインで見落としがちな「消滅時効」と法定帳簿のポイント

サービサー法のガイドラインを理解する上で、多くの人が見落としがちな論点が「消滅時効」です。消費者金融からの借金を例にとると、最後の返済日や取引日から原則5年が経過すると消滅時効が成立する可能性があります(商法522条)。
重要なのは、時効は「援用」しなければ自動的には消滅しないという点です。援用とは、「時効が成立しているので支払義務を拒否する」と意思表示することを指します。この援用をせずに、業者から「残金があります」などと連絡を受けてうっかり「分かりました、少し待ってください」などと言ってしまうと、債務を承認したこととみなされ、時効が新(リセット)されてしまう場合があります。これは大きな法的リスクです。
事務ガイドラインは、債権回収会社が消滅時効の援用という正当な抗弁権について「存在しない」または「行使できない」かのような言辞を弄することを明確に「偽りその他不正の手段」として禁止しています。つまり、サービサーが「今さら時効なんて使えない」などと言ったとしても、それ自体がガイドライン違反の可能性があるということです。
もう一つ注目すべきルールが「法定帳簿」に関する規定です。債権回収会社は、取り扱う債権ごとに所定の法定帳簿を作成・保存することが義務付けられており、その保存期間は原則5年間です。帳簿には、債務者名・債権の種類・債権金額・利息や賠償金の率・弁済状況・弁護士等への委任の有無などが詳細に記載されなければなりません。
この帳簿は、法務省による立入検査の際に業務の適法性を確認するための資料となります。帳簿の内容が不正確だったり、適切に保存されていなかったりすると、業務改善命令の対象になる可能性があります。言い換えると、債権回収会社に対して情報開示を求めた際、帳簿内容と実際の請求内容に食い違いがあれば、それは交渉において重要な証拠になり得ます。
消滅時効の可能性がある借金については、安易に支払いを約束したり、「承認します」「少し待ってください」などと伝えたりする前に、弁護士や法律の専門家に相談することが得策です。時効援用が認められた場合は、サービサーに対して債権の証書の返還を求める権利もサービサー法に明記されています(サービサー法15条2項)。

よくある場面 知らないとどうなる? 知っていると?
サービサーから「払います」と言ってしまう 時効が更新(リセット)される可能性 時効援用を検討できる
弁護士に委任後も電話が来る 法律上禁止された行為と知らずに応答 受任通知で直接連絡を停止できる
深夜に電話・訪問を受ける 黙って受け入れてしまう ガイドライン違反として通報・記録できる
架空の債権回収業者と思われる接触 詐欺被害に遭う 法務省の許可一覧で即座に確認できる

全国サービサー協会:自主規制規則(業界の自主ルール全文)