赤道とは簡単に言うと「公図に残る無地番の国有道路」のこと
あなたが「普通の敷地」と思って進めた売買案件に、実は国有地の赤道が含まれていて建築確認が下りないケースが実在します。
赤道とは簡単に言うと何か?定義と読み方をまず整理する
不動産の現場で「赤道(あかみち)」という言葉を耳にしたとき、地球を一周する赤道と混同して一瞬戸惑う方もいるかもしれません。しかしこの用語は、まったく別の意味を持つ不動産固有の専門用語です。
不動産用語としての赤道とは、道路法の適用を受けない法定外公共物のうち、道路として機能していたまたは機能していた可能性がある土地のことを指します。読み方は「あかみち」または「あかどう」で、どちらも現場で使われています。なぜ「赤」という字が使われているかというと、法務局に備え付けられている公図において、かつてこの種の土地が赤色で着色されていたことに由来します。現在の公図では必ずしも赤く塗られているわけではなく、地番が記載されていない(無地番の)土地として表示されています。
「里道(りどう)」や「赤線(あかせん)」とも呼ばれており、これらはすべて同じものを指す同義語です。つまり赤道とは簡単に言えば、昔から地域の人々が通り道として使ってきた細い道で、道路法という法律の管理対象外になった国有地のことです。
歴史的な背景を一言で言うと、明治時代に作られた旧公図に起源があります。
赤道が生まれた歴史的背景と里道・青道との違い
赤道がなぜ日本中の土地に残っているのか、その理由を知っておくことは実務に直結します。
明治9年(1876年)、太政官達第60号によって道路は「国道・県道・里道」の3種類に分類されました。その後、大正8年(1919年)に旧道路法が施行され、すべての道路がいったん国の所有物となりましたが、重要な里道だけが市町村道に指定され、それ以外の小さな農道・路地・けもの道は道路台帳に登録されないまま取り残されました。この「取り残された里道」こそが赤道です。公図上では赤く塗って区別したため、「赤道」と呼ばれるようになったのです。
その後、平成12年(2000年)4月1日に地方分権一括法が施行され、国から各市区町村へ無償で譲渡されました。そのため、現在は道路としての機能が残っている赤道は市区町村の管理、道路としての機能が失われているものは財務省(財務局)の管理となっています。
ここで混同しやすい「青道(あおみち)」との違いも整理しましょう。
| 名称 | 旧公図での色 | 内容 | 管轄 |
|---|---|---|---|
| 赤道(あかみち) | 赤色 | 農道・里道など旧来の道路 | 市区町村 or 財務局 |
| 青道(あおみち) | 青色 | 用水路・水路・河川敷 | 市区町村 or 財務局 |
どちらも地番なし・国有地という点は共通です。赤道が原則として「道路跡」、青道が「水路跡」という点が最大の違いです。それだけ覚えておけばOKです。
なお、赤道は一般的に幅が1.8m以下の細い土地であることが多く、現地を歩いても見た目では判断がつきにくい場合があります。建物の敷地の中に知らないうちに入り込んでいることも珍しくありません。
公図における「赤道と青道」とは|i不動産ブログ(赤道・青道の基本と払い下げ手続きの概要を確認できます)
赤道が不動産取引に与える具体的な影響と建築確認の関係
赤道を見落とすと、取引完了後に大きな問題が発覚するリスクがあります。これは実務の核心部分です。
まず押さえるべき重要な点は、赤道は建築基準法上の道路にはあたらないということです。建築基準法では、建物を建てる土地は「幅員4m以上の道路に2m以上接していること(接道義務)」が必要と定められています。赤道は道路法の適用を受けない法定外公共物のため、この「道路」にカウントされません。
つまり、赤道にしか接していない土地は接道義務を満たさない再建築不可物件になりかねないのです。痛いですね。
また、赤道が敷地のど真ん中を横切っているケースでは、そのまま建物を建てることができません。建物の位置を避けて計画することも難しい場合が多く、払い下げによって自分の土地にしてからでないと建築確認申請が進められない状況になります。
さらに、土地の売買においても赤道の存在は重要な告知事項です。赤道が敷地に含まれているにもかかわらずそれを開示しなかった場合、契約不適合責任に問われるリスクがあります。買主から損害賠償を請求されることも理論上は否定できません。
建築確認との関係で言えば、赤道が敷地内を通っていると分筆登記や建築確認申請の段階で発覚することが多いです。取引が完了した後のタイミングで発覚すると、手戻りが大きくなります。実務家として、公図の確認は取引の早い段階でおこなうことが基本です。
敷地の中に赤道(あかみち)が通っている場合|アイ設計(建築設計事務所が解説する赤道と建築基準法の実例)
赤道の払い下げ手続きと費用の目安を簡単に理解する
赤道が敷地内に存在している場合、その解決手段が「払い下げ(はらいさげ)」です。払い下げとは、国有地または市区町村の財産を民間に売却してもらうことを指します。
払い下げの一般的な流れは以下のとおりです。
- 📋 公図を取得し、赤道の存在を確認する(法務局窓口またはオンライン申請)
- 🏛️ 管轄の市区町村または財務局に問い合わせて、道路としての機能の有無を確認する
- 📐 土地家屋調査士に測量を依頼し、境界を確定する
- 📝 用途廃止(公用廃止)の申請をおこなう(機能がない場合)
- 🤝 赤道に隣接する土地所有者の承諾書を取得する
- 💴 払い下げ申請書を提出し、売買価格の確定・土地代の納付をおこなう
- 📑 土地表題登記・所有権保存登記を申請して完了
費用の目安ですが、測量事務所に払い下げ手続き一式を依頼した場合、40万円前後がかかるケースが多いとされています。土地の面積や隣接する土地所有者の人数、測量の難易度によって変動します。
なお、土地の代金そのものは市区町村によって計算方法が異なります。たとえばある市では「地価公示価格(または固定資産税路線価÷0.7)×1/2×実測面積」で算出する例があります。市街地のど真ん中にある赤道は、1坪あたりの単価が高くなることもあります。
また、払い下げを受けた土地はそれまで登記がされていない場合がほとんどですので、土地表題登記は取得から1ヵ月以内に申請しなければならないことも覚えておきましょう。これは必須です。
赤地(あかち)とは?払い下げの手順と費用目安|HOME4U(払い下げの各ステップと費用感が体系的にまとめられています)
赤道と相続税評価の関係──不動産実務家が知っておきたい独自視点
赤道は不動産売買だけでなく、相続税の土地評価においても見逃せない要素です。この点は比較的知られていない視点であり、実務家として差がつくポイントでもあります。
国有地である赤道は本来、相続税の評価対象にはなりません。つまり、土地の中に赤道が通っている場合、赤道部分は評価から除外されるのが原則です。
一体評価と分割評価のどちらを選ぶかが重要で、判断基準は主に2点あります。
- 払い下げが可能で、赤道と隣接する自分の土地が一体的に利用されている場合 → 一体評価(赤道込みの評価額から払い下げ相当額を控除する)
- 払い下げが受けられない、または赤道によって土地が物理的に分断されている場合 → 赤道を境界として分割評価
どちらが有利かはケースバイケースですが、広大地の場合は一体評価のほうが相続税を抑えられることが多いとされています。具体例を挙げると、相続税評価額が9,900万円の土地に赤道が通っており、払い下げ価格が100万円だった場合、最終評価額は「9,900万円−100万円=9,800万円」となります。
問題は、この判断を誤ると相続税が高額になってしまう点です。不動産に精通していない税理士が評価してしまい、数百万円単位で過払いが発生してしまったケースは実際に存在します。過払いが判明した場合でも、相続開始から5年10ヵ月以内であれば更正の請求によって還付を受けることが可能です。知ってると得する話です。
不動産従事者として、相続案件でお客様の土地を調査する際は公図を必ず確認し、赤道の有無を税理士に早めに情報共有することが、結果としてお客様の利益につながります。
不動産の赤道とは|相続した土地に赤道がある場合の不動産評価|佐藤和基税理士事務所(赤道が通る土地の相続税評価の考え方と一体評価・分割評価の判断基準が解説されています)
【事例14】敷地内に赤道が通っている宅地の相続税評価|税理士法人チェスター(払い下げ価格控除の具体的な計算事例が確認できます)