不動産売買の流れを図解で売主・買主・全ステップ解説
売買契約書にサインした後でも、あなたは手付金を全額取り戻せる場面があります。
不動産売買の流れ全体像を図解で確認する
不動産売買の全体の流れを把握していないと、「気づいたら期日を過ぎていた」「必要書類が揃っていなかった」という事態が起きやすくなります。まずは大きな流れを頭に入れておくことが基本です。
売主側の流れは、大きく以下のステップで進みます。
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| ① 売却相場の調査 | 国土交通省の不動産情報ライブラリ・レインズで相場確認 | 2週間〜1ヶ月 |
| ② 査定依頼 | 複数社に一括査定(訪問査定が精度高め) | 即日〜2週間 |
| ③ 媒介契約の締結 | 専属専任・専任・一般の3種類から選択 | 1〜2日 |
| ④ 売却活動 | 広告掲載・内覧対応・価格交渉 | 約3ヶ月 |
| ⑤ 売買契約 | 重要事項説明・契約書署名捺印・手付金授受 | 1日 |
| ⑥ 引き渡し・決済 | 残代金受領・抵当権抹消・所有権移転登記 | 1〜2ヶ月後 |
| ⑦ 確定申告 | 譲渡所得の申告(翌年2月16日〜3月15日) | 翌年 |
全体でかかる期間の目安は、スムーズに進んで3〜6ヶ月です。物件の条件や市場状況によっては1年近くかかることもあります。
買主側の流れも並行して知っておくと、商談の場での対応力が格段に上がります。買主は「物件探し→資金計画・事前審査→申し込み→住宅ローン本審査→売買契約→決済・引き渡し」という流れで進みます。売主側と異なり、住宅ローン審査が通るかどうかが取引全体のカギを握ります。
つまり、全体像の把握が大前提です。
参考:不動産売却の流れ7ステップ(HOME4U)
不動産売却の流れ7ステップを図解〜売ると決めてから引き渡しまで|HOME4U不動産売却塾
不動産売買の流れで絶対外せない査定と媒介契約の選び方
相場を把握せずに査定を受けると、提示された金額が適正かどうか判断できません。これが原因で、実際の市場価格より200〜300万円低い価格で売り出してしまうケースは珍しくありません。
まず相場を調べる方法ですが、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では過去の取引価格を地図で確認でき、「レインズ・マーケット・インフォメーション」では築年数・面積・駅距離などの条件を絞って成約価格を検索できます。どちらも無料です。
相場感を得たら、複数社への一括査定が次のステップです。全国に約35万社ある不動産会社のうち、不動産売買を扱える会社は約13万社。そのなかで売却を「得意」とする会社はさらに限られます。1社だけに依頼すると比較ができず、高値での売却チャンスを逃しやすくなります。
媒介契約の選択も重要な判断です。3種類の特徴を整理します。
| 種類 | 複数社との契約 | レインズ登録義務 | 進捗報告 |
|---|---|---|---|
| 専属専任媒介 | ❌ 不可 | 5日以内 | 週1回以上 |
| 専任媒介 | ❌ 不可 | 7日以内 | 2週間に1回以上 |
| 一般媒介 | ✅ 可能 | 義務なし | 任意 |
ここで注意が必要なのが「囲い込み」のリスクです。専任媒介・専属専任媒介を締結した業者が、自社の両手仲介を狙ってレインズに登録しない・他社からの問い合わせを断るという不正行為が、業界内で長年問題視されてきました。
2025年1月からは法改正により、囲い込みは宅地建物取引業法第65条に基づく指示処分の対象となりました。売主も自分の物件のレインズ登録状況を確認できるようになっています。これは知っておくべき変化です。
媒介契約の選択が条件です。物件の条件や売却スピードの優先度に応じて、どの契約形態が最適か吟味してください。
参考:2025年1月からの囲い込み規制の詳細
2025年1月から不動産取引の囲い込み規制が始まる!売主が確認できるようになったレインズの仕組みとは|SUUMOジャーナル
不動産売買の流れで重要事項説明と売買契約当日の注意点
売買契約当日は、おおむね2〜2.5時間かかるのが一般的です。そのうち約1時間は、宅地建物取引士が行う「重要事項説明」に充てられます。ここが取引の核心部分です。
重要事項説明書には、物件の権利関係・法令上の制限・取引条件・契約解除の規定などが詳細に記載されています。説明を聞き流してサインすると、後から「知らなかった」では通りません。
重要事項説明の後、売買契約書の読み合わせが行われ、売主・買主双方が署名捺印して契約が成立します。この時点で買主から売主へ「手付金」が支払われます。手付金の相場は売買代金の5〜10%です。3,000万円の物件なら150〜300万円が目安です。
ここで多くの方が誤解しているのが、手付金の扱いです。
売主が契約をキャンセルしたい場合は受け取った手付金を「倍返し」する必要があります。一方、買主が自己都合でキャンセルする場合は手付金が没収されます。ただし、ローン特約(住宅ローン解除特約)が契約に盛り込まれている場合、住宅ローン審査に落ちたことを理由にする解約は、手付金の没収なしで契約解除が可能です。
痛いですね。この区別を把握していないと、依頼者から「なぜ手付金が戻ってこないのか」とクレームを受けるケースがあります。
また、売主には「告知義務」があります。物件に雨漏り・シロアリ被害・心理的瑕疵(過去の事故・事件など)があることを知りながら告知しなかった場合、買主から「契約不適合責任」を問われ、損害賠償請求や契約解除を求められます。告知すること自体でリスクを回避できる、という考え方が基本です。
告知義務違反には期限があります。たとえば賃貸取引における心理的瑕疵の告知義務期間の目安はおおむね3年ですが、売買取引では明確な年数基準がなく、「買主の判断に影響を与えうる事実」は原則として告知する必要があります。厳しいところですね。
参考:不動産売却時の告知義務と心理的瑕疵について
不動産売却時に注意すべき告知義務と心理的瑕疵について解説|家売りの教科書
不動産売買の流れで決済・引き渡し当日に確認する全手順
引き渡し・決済当日は、売主・買主・不動産会社担当者・司法書士が金融機関などに集まって手続きを進めます。この日に行われる内容を知らずに臨むと、予想外の出費や書類不足で手続きが止まるリスクがあります。
当日の流れは以下の順序で進みます。
- 登記関連書類の確認(司法書士が主導)
- 買主の住宅ローン実行(融資金が買主口座へ入金。所要時間は約5分)
- 残代金の受け取り(売主へ振り込みまたは現金で支払い)
- 仲介手数料の残額支払い(売買契約時に50%、引き渡し時に残り50%)
- 抵当権抹消手続き(売主負担、司法書士費用1〜2万円が目安)
- 所有権移転登記(買主負担、司法書士費用3〜10万円が目安)
- 鍵・書類の引き渡し
決済は金融機関で行われ、ローン実行から残代金受け取りまでの一連の流れは通常1〜2時間以内で完了します。スムーズに進む場合がほとんどですが、抵当権抹消書類の不備や境界確定書類の不足があると、手続きが当日ストップする可能性があります。事前の書類確認が必須です。
なお、2024年7月の法改正により、仲介手数料のルールが変わった点も見落とせません。売買価格が800万円以下の「低廉な空家等」については、売主・買主それぞれから最大33万円(税込)まで仲介手数料を受領できる特例が適用されるようになりました。従来は400万円以下の物件が対象でしたが、空き家対策の観点から対象が拡大されています。
これは使えそうです。空き家を多く扱う不動産会社にとっては収益面で重要な変更です。
引き渡し後は物件に関わる鍵・設計図書・建築確認済証・設備の説明書類なども漏れなく買主へ渡します。マンションの場合は管理規約・使用細則も必須です。鍵の渡し忘れは後日トラブルになります。これだけは例外なく確認してください。
参考:2024年7月改正・低廉な空き家等の媒介手数料特例
不動産取引に関するお知らせ(低廉な空家等の媒介手数料上限改定)|国土交通省
不動産売買の流れで確定申告と3,000万円控除を正しく活用する
不動産売買の流れの最終ステップは確定申告です。売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、翌年2月16日〜3月15日の間に申告する必要があります。
見落としがちな点として、会社員で普段確定申告をしていない売主も例外ではありません。「給与天引きだから自分には関係ない」という思い込みが損失につながります。確定申告の失念が条件です。
申告しなかった場合には延滞税が課されます。本来の納税期限から2ヶ月間は約7%、2ヶ月超は約14%の税率で延滞税が加算されます。数百万円の譲渡所得があれば、延滞税だけで数十万円規模の損失になりえます。
一方で、知っておくと大きく得する特例があります。
- 🏠 3,000万円特別控除:マイホームを売却した場合、売却益から最大3,000万円を控除できる制度です。課税対象をゼロに抑えられるケースも多く、活用度が高い特例です。
- 📉 軽減税率の特例:売却した不動産の所有期間が10年超の場合、長期譲渡所得として税率が軽減される制度です(通常20.315%→14.21%に引き下げ)。
- 🔄 譲渡損失の繰越控除:売却で損失が出た場合は、その損失を翌年以降3年間、給与所得などと損益通算できます。3年間の間は損失がない年でも確定申告が必要です。
譲渡所得の計算式は以下のとおりです。
取得費には、購入時の仲介手数料・登記費用・固定資産税の精算金なども含められます。正確に算出するほど課税額を抑えられます。購入時の売買契約書を保管しておくことが原則です。
申告書類として必要になるのは、売買契約書・登記簿謄本・購入時の契約書・仲介手数料の領収書などです。e-Taxを使えばオンラインで申告が完結するため、期間中に忘れず手続きを行いましょう。
つまり、確定申告も売買の流れのうちです。引き渡しが終わったからといって完全に完了ではない点を、依頼者への説明時に必ず含めるようにしてください。
参考:不動産売却後の確定申告・3,000万円控除についての詳細解説
【図解あり】不動産売却の流れ・手順について徹底解説|ナカジツの「住まいのお役立ち情報」
不動産従事者が図解で押さえるべき売買の流れ「見えないリスク管理」
これは検索上位記事にはない視点です。不動産従事者として売買の流れを「図解で説明できる」だけでなく、流れの各ステップに潜む「見えないリスク」を依頼者に先回りして説明できるかどうかが、プロとしての差別化につながります。
たとえば、住宅ローンの本審査で落ちる確率は約5〜6.9%です。事前審査は通っているのに本審査でNGになるケースには、審査期間中の転職・新たなローン申込み・クレジットカード延滞などが影響します。これを事前に買主へ伝えておかないと、売買契約後にローン解除特約の発動という事態になり、売主側の期待が大きく裏切られることになります。
売主側にも見落とされがちなリスクがあります。それは、専任媒介契約を結んだにもかかわらず売却活動が実質的に進んでいないケースです。専任媒介契約では、不動産会社は2週間に1回以上の報告義務を負っています。この報告が形骸化していたり、レインズへの登録が遅れていたりする場合は、売主が自分でレインズの登録状況を確認することが今やできるようになっています。
報告内容が薄いと感じたら、問い合わせ件数・内覧件数・成約事例の比較といった具体的な数値を不動産会社に求めるとよいでしょう。これが条件です。
また、「買取保証」や「リースバック」といった特殊な売却手法を選ぶ場合は、仲介売却と比べて売却価格が市場価格の60〜80%程度になるリスクがある点も依頼者に伝える必要があります。スピード重視か価格重視かによって最適な手法が変わるため、依頼者の事情をヒアリングした上で選択肢を提示することが重要です。
意外ですね。このような細かなリスク説明こそが、後々のトラブル防止と顧客満足度の両立につながります。
不動産売買の流れを「図解で説明できる」だけでなく、流れの中のリスクをプロとして先んじて伝えること。それが不動産従事者としての本当の付加価値です。