5人に1人の確率で問われる宅建士設置義務のリスクと正しい対策
専任宅建士が退職した翌日から、あなたの会社は法律違反状態です。
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5人に1人の確率が意味する宅建業法上の設置義務とは
不動産業に携わっていれば「5人に1人」という数字は日常的に耳にするはずです。これは宅地建物取引業法第31条の3で定められた、専任の宅地建物取引士(宅建士)の設置比率のことです。正確には「宅建業に従事する者5人につき1人以上の割合で、成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならない」と定義されています。
たとえば事務所の従業員が10人であれば専任宅建士は2名以上、16人なら4名以上が必要です。計算方法は、従業者数を5で割り、端数を切り上げた数になります。これが原則です。
重要なのは「各事務所ごと」という点です。本社に宅建士が複数在籍していたとしても、支店に専任宅建士が不在であれば、その支店は設置義務違反となります。支店の規模が小さくても例外はありません。
さらに、ここでいう「従業者」の範囲にも注意が必要です。宅建業に実際に従事している人物は、雇用形態に関係なく原則としてカウントされます。ただし、アルバイトや短時間パートについては「宅建業に従事していない」と判断される場合もあるため、自治体ごとの運用確認が必要です。意外ですね。
従業者数の増減に合わせて、必要な専任宅建士の人数も変わります。社員を1人採用するだけで、突然、要件を満たさなくなるケースもあります。「気づいたら違反していた」という状態になりやすいのが、この規定の怖いところです。
参考:宅建業法第31条の3の設置基準と違反時の具体的なリスクを解説しています。
5人に1人ルールで見落としがちな「専任性」の3つの条件
宅建士を1人配置すれば要件をクリアできる、と単純に考えている不動産会社は多いです。しかし実際には、その宅建士が「専任」の要件を満たしているかどうかが厳しく問われます。要件を満たさない場合は「置いているつもりで、実は置いていない」状態になってしまいます。
専任性の要件は大きく3つに整理できます。
| 要件 | 内容 | NGになりやすいケース |
|---|---|---|
| 常勤性 | その事務所にフルタイムで常駐していること | 他社でも役員・正社員として登録されている |
| 専従性 | 宅建業務に専念していること | 昼間に別業種の業務を兼業している |
| 成年要件 | 成年者(18歳以上)であること | 成年被後見人・被保佐人に該当する場合 |
特に注意が必要なのは「常勤性」と「専従性」です。たとえば、他社でも役員として登録されている宅建士を専任扱いにしている場合、東京都や神奈川県では専任性が認められません。一方、埼玉県では「非常勤役員」という形であれば認められるケースもあるなど、都道府県ごとに運用が異なります。つまり自治体への事前確認が原則です。
副業についても厳しい視点があります。専任の宅建士が平日昼間に別業種のアルバイトをしている場合は、専従性を欠くと判断される可能性があります。夜間・休日の単発バイト程度なら問題ないとされることが多いですが、グレーゾーンが多いため慎重に判断する必要があります。
テレワーク勤務の場合も要注意です。遠隔地から業務を行う場合は原則として常勤性が認められないとされています。営業時間中に確実に対応できる実態があることを、行政に対して説明できる体制を整えておきましょう。
また、宅建士証の住所変更や勤務先変更手続きを怠っていると、免許申請・更新の際に書類不備で受理されないケースもあります。資格証の管理は定期的に確認しておくことが大切です。
参考:専任の宅建士に関するルールと、常勤性・専従性の具体的なNG事例を詳しく解説しています。
専任の宅地建物取引士に関するルールの確認 – 宅建免許クイック東京
5人に1人が退職した後に生じる「2週間ルール」の厳しい現実
専任宅建士が退職・休職した場合、2週間以内に補充しなければ宅建業法違反となります。これが「2週間ルール」です。聞いたことはあっても、実際にその厳しさを体感しているケースは少ないかもしれません。
2週間というのは、退職日を起算日として計算します。求人を出して、面接して、採用して、宅建士証の変更届を出して、というプロセスを考えると、非常にタイトなスケジュールです。2025年現在、不動産業界は深刻な人手不足が続いており、有資格者の確保はさらに難しくなっています。
万が一2週間以内に補充できなかった場合、まず「指示処分」の対象となり、さらに改善が見られない場合は「業務停止処分」(最大1年間)に発展するおそれがあります。業務停止期間中は一切の新規取引ができません。痛いですね。
業務停止処分を受けた場合、処分内容は国土交通省および各都道府県の情報サイトで公表されます。会社名・違反内容・処分期間がすべてオープンになるため、業界内での信頼を一気に失います。処分が解除された後も、取引先や顧客からの信頼回復には相当な時間がかかります。
補充が間に合わない場面で絶対にやってはいけないのは「退職した宅建士の名前だけを登録に残す」ことです。これは名義貸しに該当し、業務停止どころか免許取消・100万円以下の罰金・懲役刑にまで発展しうる重大な違反行為です。
現実的な対策としては、採用活動の記録(求人票・面接記録など)を保存しながら自治体に相談し、補充見込みと対応計画を提示することで、監督官庁への説明責任を果たしやすくなります。補充が難しい場合は、従業者数を一時的に削減して要件を満たす方法も選択肢の一つです。
参考:専任宅建士の退職時の対応フローと行政処分リスクを、宅建業法に基づいて詳しく解説しています。
【2025年最新版】専任宅地建物取引士が退職・不足した場合の対応|RESUS社会保険労務士事務所
5人に1人という比率が誘発する「名義貸し」の実態と罰則
「5人に1人」の設置義務を満たすために、実態を伴わない名義上の専任登録をする行為が「名義貸し」です。不動産業界では後を絶たない問題でもあります。
名義貸しが発生しやすいのは、専任宅建士の急な退職直後や、急ピッチで社員数を増やしたタイミングです。「2週間以内に補充しなければ違反になる」という焦りから、退職済みの宅建士の名前をそのまま登録に残したり、実際には勤務していない外部の宅建士に名義だけ提供してもらったりするケースが生まれます。
名義貸しが発覚する経路は、主に3つあります。
- 🔍 行政の立ち入り検査:出勤簿・雇用契約書・勤務実態が細かく確認される。専任登録されているのに月数日しか出勤していない等の矛盾があれば即座に指摘される。
- 📣 従業員からの内部通報:実態のない宅建士が高額報酬を受け取っているなど、不公平感を持った社員からの匿名通報が増加。コンプライアンス意識の高まりとともにリスクが増している。
- 📝 顧客・取引先からの指摘:重要事項説明の場に専任宅建士が来ない、契約書の印鑑だけ別人というケースで顧客が不審を持ち行政に相談するケースも増えている。
発覚した場合の処分は非常に重いです。宅建士側には登録消除(+5年間の再登録不可)または最長2年間の事務禁止処分、会社側には免許取消または業務停止処分が科されます。さらに悪質な場合は刑事立件され、100万円以下の罰金や懲役刑が課された実例もあります。前科がつくことで、その後の業界内での活動にも支障が生じます。
名義貸しとは一線を画した「紛らわしいグレーケース」にも注意が必要です。たとえば、専任宅建士が外回りで事務所に不在になりがちな場合や、業務委託契約の宅建士に実務を任せているケースなど、外見上は名義貸しと誤解される状況があります。適法であっても、勤務記録・業務日誌・雇用契約書を整備して実態を証明できる状態にしておくことが重要です。
参考:名義貸しの種類・発覚経路・処分内容を詳しくまとめています。
5人に1人の確率を維持するための採用・育成の独自アプローチ
設置義務を安定的に守るうえで、最も確実な方法は「辞めない職場をつくること」です。採用を続けるだけでは根本的な解決にはなりません。しかし現実には、採用と育成の両面から並行して取り組む必要があります。
まず採用面では、対象者の幅を広げる視点が有効です。宅建士合格者に占める女性比率は令和5年度時点で35%を超え、年々増加しています。内勤・管理部門・重要事項説明業務などへの多様な登用を進めることで、採用候補者の母数を増やせます。また、定年後も宅建士として活躍するシニア・ミドル層の再雇用も即戦力になります。厚生労働省の「高年齢者雇用安定助成金」を活用すれば、人件費の一部を補助してもらうこともできます。
育成面では、社内から宅建士を生み出す仕組みを整えることが長期的なリスクヘッジになります。受験料補助・合格報奨金・社内勉強会の開催など、会社全体で取り組む文化をつくると合格率が上がります。ただし一点注意があります。資格手当は割増賃金の計算基礎に含める必要があり(労働基準法第37条)、未算入の場合は未払賃金リスクが生じます。これは意外と見落とされているポイントです。
採用活動を進める際に、求人票・スカウト送付履歴・面接記録などの証跡を残しておくことも重要です。万が一補充が2週間に間に合わなかった場合でも、「積極的に採用活動を行っていた証拠」があれば、行政との交渉において有利に働く可能性があります。
もう一つ、独自の視点として「退職前兆の早期察知」があります。宅建士が退職を検討するサインとして、有給消化の急増・業務への関与度の低下・資格証の更新手続きの遅れなどが挙げられます。これらに気づいた段階でフォローを始めることで、突然の欠員リスクを下げられます。代替候補者の把握も日頃から行っておくと、有事の際に動きやすくなります。
宅建業法の設置義務をクリアしつつ、安定した事業継続のためには、採用・育成・定着の三位一体で取り組む体制が不可欠です。「5人に1人」というルールは、単なる法的要件ではなく、会社の経営基盤そのものに直結している数字と捉えるべきでしょう。
参考:不動産業界の採用・人材育成、専任宅建士の確保に関する実務的な解説が掲載されています。
専任宅地建物取引士が退職・不足した場合の対応と採用アプローチ|RESUS社会保険労務士事務所

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