地役権設定登記の必要書類と手続きを完全解説
地役権設定登記を進めた後、要役地の所有者には登記識別情報が一切届かない。
地役権設定登記の必要書類一覧|承役地・要役地の役割別まとめ
地役権設定登記の必要書類を調べると、「双方が揃えるものが同程度ある」と思っている方が多いようです。しかし実際には、書類の準備負担は承役地の所有者(登記義務者)に大きく偏っています。これを事前に把握しておかないと、打ち合わせの段階で相手方に余計な手間をかけさせてしまうことになります。
承役地の所有者(登記義務者)が準備するものは以下のとおりです。
| 書類名 | 備考 |
| — | — |
| 登記識別情報通知(または登記済権利証) | 承役地を取得したときに発行されたもの |
| 印鑑証明書 | 発行後3ヶ月以内のもの |
| 実印 | 印鑑証明書と一致するもの |
| 本人確認書類 | 運転免許証、マイナンバーカードなど |
印鑑証明書は3ヶ月以内が条件です。取得のタイミングを間違えると再取得が必要になります。
要役地の所有者(登記権利者)が準備するものは比較的シンプルで、住民票と認印で対応できるケースがほとんどです。
双方で共同して準備・作成するものは次の書類です。
- 地役権設定契約書(登記原因証明情報):目的・範囲・存続期間・対価などを明記する
- 登記申請書:法務局所定の様式にしたがって作成する
- 地役権図面:承役地の一部に設定する場合のみ必要(全部の場合は不要)
- 委任状:司法書士など代理人に依頼する場合に添付する
契約書の記載に漏れがあると、後のトラブルの原因になります。目的(通行・通水・眺望など)と範囲(承役地の全部か一部か)は必ず具体的に記載してください。「通行」と書くだけでは足りず、「徒歩・車両のいずれで通行できるか」「使用できる時間帯はどうか」まで詰めておくことが実務上の常識です。
書類が揃った後の申請は、承役地の所在地を管轄する法務局に対して行います。申請先が要役地の管轄ではない点も、よく確認が必要なポイントです。
参考:地役権設定登記の書類構成と実務の詳細(名古屋の司法書士事務所)
地役権設定登記の手続きの流れ|契約から登記完了まで4ステップ
書類が揃ったとしても、手続きの順序を把握していないと、書類の有効期限が切れたり、申請のタイミングがずれたりするミスが起きます。流れを体系的に押さえておくことが、スムーズな登記完了への近道です。
ステップ1:地役権設定契約書を締結する
口頭での合意だけでは後からトラブルになります。「昔からの慣習」で済ませているケースも多いですが、書面化しておかなければ、土地所有者が変わった瞬間に権利の主張が難しくなります。地役権設定契約書には、当事者の表示・対象土地の特定・目的・範囲・対価の有無・存続期間の有無を記載します。
なお、存続期間や地代(対価)は地役権設定登記の「登記事項」ではありません。つまり、契約書に書いても登記簿には反映されず、第三者への対抗力を持たないということです。対価の定めは当事者間の約束にとどまる点を意識しておく必要があります。
ステップ2:必要書類を収集・作成する
上記の書類一覧を参考に、承役地所有者を中心に書類を整えます。印鑑証明書の有効期限(3ヶ月以内)は特に注意が必要です。
ステップ3:法務局へ登記申請する
承役地の所在地を管轄する法務局へ、要役地所有者と承役地所有者が共同で申請します。原則として単独申請はできません。ただし、地役権設定を命じる確定判決があれば、要役地所有者が単独で申請することが可能です。これは実務でも活用できる例外規定です。
ステップ4:登記完了・権利の確定
通常、申請から数日から1週間程度で審査が完了し、登記識別情報通知などの完了書類が発行されます。登記が完了した時点で、地役権は第三者にも対抗できる権利として確定します。たとえばその後に承役地が売却されて所有者が変わったとしても、「ここを通らせてもらう権利があります」と新所有者にも主張できるようになります。
対抗力を持つことが、登記を行う最大の目的です。
参考:地役権設定の手続きの流れと費用シミュレーション(司法書士によるガイド)
https://amagasaki-shiho.com/地役権設定の完全ガイド
地役権図面が必要になる条件|不動産登記の見落としがちなポイント
「地役権設定登記には地役権図面が必要」というのは半分正しく、半分間違いです。地役権図面が必要になるかどうかは、地役権を設定する範囲によって変わります。これを知らないまま手続きを依頼すると、不要なコストや工数が発生する可能性があります。
図面が不要なケースは、承役地1筆の全体に地役権を設定する場合です。この場合は申請書の「範囲」欄に「全部」と記載するだけで済みます。公図や地積測量図から境界が明確なので、別途図面を提出する必要がありません。
図面が必要なケースは、承役地1筆の一部にだけ地役権を設定する場合です。たとえば、隣地の東側3メートル幅の通路部分だけに通行地役権を設定するような場合は、その範囲を特定するための地役権図面(B列4番サイズ)を作成・提出しなければなりません。
地役権図面は司法書士が作成することも可能ですが、現地での測量が必要な場合は土地家屋調査士への依頼が必要になります。土地家屋調査士の報酬は案件によって異なりますが、測量費用を含めると数万円の追加コストになることも珍しくありません。費用感は事前に確認しておくのが無難です。
一部設定の場合は図面が必須です。
また、要役地については原則として「1筆(または数筆)の土地全体」を要役地とする必要があります。一筆の土地の一部だけを要役地にしたい場合は、先に分筆登記をしておく必要があります。承役地は一部でよいが、要役地は全部でなければならない、という非対称な扱いを覚えておきましょう。
参考:地役権図面の要否と作成方法について(イクラ不動産)

地役権設定登記の登録免許税と費用の全体像|1,500円の定額制を正しく理解する
地役権設定登記の費用を大きく誤解しているケースがあります。所有権移転登記や抵当権設定登記のように「固定資産税評価額に税率をかける」という計算方法だと思い込んでいると、実際の請求額を見てびっくりします。
地役権設定登記の登録免許税は次の計算式で決まります。
土地の評価額は一切関係ありません。承役地が1筆なら1,500円、3筆にまたがるなら4,500円です。葉書(はがき)1枚の料金を少し上回る程度の金額で、物件価格が億単位であっても変わりません。定額制が条件です。
一方、司法書士への依頼報酬は別途かかります。相場は3万円〜6万円程度が目安で、地役権設定契約書の作成・法務局への申請代理・登記完了後の謄本取得などが含まれます。事前に事務所ごとの報酬体系を確認しておくと安心です。
| 費用項目 | 金額の目安 |
| — | — |
| 登録免許税 | 1,500円 × 承役地の筆数 |
| 登記事項証明書取得費 | 1筆あたり500円(完了後) |
| 司法書士報酬 | 3万円〜6万円程度 |
| 土地家屋調査士費用(図面が必要な場合) | 数万円〜(測量内容による) |
合計で見ると、標準的なケース(承役地1筆・司法書士依頼)では6万円〜7万円前後が現実的な目安です。登録免許税が格安である分、専門家費用が全体の大半を占める構造を理解しておきましょう。
登録免許税は定額なので計算は簡単です。
費用の全体像を把握しておくことで、依頼主に対して正確な費用説明ができ、余計なトラブルを未然に防ぐことができます。
地役権設定登記の実務上の注意点|登記識別情報・抵当権・対価の扱いを整理する
実務に携わる中で、「知っていれば問題なかった」という場面が地役権登記には多くあります。特に混乱しやすい3つのポイントを整理します。
① 地役権者(要役地所有者)には登記識別情報が通知されない
これは実務で意外に見落とされる点です。地役権設定登記が完了した後、「要役地の所有者に登記識別情報通知が届かない」という事態が起きます。これは不具合ではなく、制度上の仕様です。
不動産登記法21条では、登記識別情報は「申請人自らが登記名義人となる場合」に通知されます。地役権設定登記では、登記簿に記録されるのは承役地の登記簿のみです。地役権者(要役地所有者)は登記名義人にはならないため、識別情報は通知されません。登記完了後に依頼者から「通知が届かない」と問い合わせが来た場合でも、慌てずに制度的な理由を説明できるようにしておきましょう。
② 承役地に抵当権がある場合の取り扱い
承役地に既存の抵当権が登記されている状況で新たに地役権を設定する場合、「抵当権者の承諾が必要ではないか」と考える方もいます。しかし実際には、地役権設定登記の申請そのものに抵当権者の承諾書は不要です。厳しいところですね。
ただし、逆のケース——要役地に抵当権設定登記がされた後に地役権を抹消する場合——では、抵当権者が利害関係人となるため、抵当権者の承諾書が必要になります。設定時と抹消時で取り扱いが異なる点に注意が必要です。
参考:抵当権と地役権の関係についての詳細解説(司法書士実務ノート)

③ 対価(地代)と存続期間は登記事項ではない
地役権設定契約書に「月額1万円の通行料を支払う」「契約期間は20年」と明記したとしても、それらは登記簿には記録されません。不動産登記法第80条が定める絶対的登記事項は「要役地の表示」「設定の目的」「範囲」の3つのみです。
存続期間や地代は当事者間の債権的な約束にとどまり、第三者への対抗力を持ちません。たとえば承役地が売却されて新しい所有者になった場合、「毎月1万円を払ってもらう約束がある」という主張は登記だけでは通用しません。対価に関するルールは、別途覚書や公正証書で補強しておくことが実務上の知恵です。
つまり、登記事項は3つだけ覚えておけばOKです。
地役権の登記事項に関する法的根拠は下記を参照してください。

