法定相続情報証明制度の必要書類と申出の完全ガイド
相続登記の案件で「戸籍を集めたのに、法定相続情報一覧図の申出が却下された」という話を聞いたことはないでしょうか。じつは、相続登記と法定相続情報証明制度の申出では、必要な戸籍謄本の範囲が異なります。相続登記と同じ感覚で書類を揃えると、差し戻しのリスクがあります。
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法定相続情報証明制度の必要書類:5つのカテゴリ一覧
法定相続情報一覧図の交付を受けるために必要な書類は、大きく「必ず用意するもの」と「状況によって必要なもの」の2種類に分けられます。まずは必ず用意しなければならない書類を確認しましょう。
下の表は、申出時に必要となる書類の全体像です。
| カテゴリ | 書類名 | 備考 |
|---|---|---|
| 被相続人 | 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍 | 出生から死亡までの連続したもの |
| 被相続人 | 住民票の除票(または戸籍の附票) | 本籍地の記載が必要 |
| 相続人全員 | 戸籍謄本または戸籍抄本 | 被相続人の死亡後に取得したもの |
| 申出人 | 氏名・住所を確認できる公的書類 | 免許証コピー・マイナンバーカードコピー・住民票など |
| その他 | 法定相続情報一覧図(申出人が自分で作成) | A4サイズの白紙で作成 |
「必要となる可能性がある書類」としては、以下のものがあります。
- 各相続人の住民票の写し(一覧図に相続人の住所を記載したい場合)
- 委任状(代理人が申出をする場合)
- 代理人と申出人の親族関係を証明する戸籍謄本(親族が代理の場合)
- 被相続人の戸籍の附票(住民票の除票が取得できない場合の代替書類)
各書類の取得費用の目安は、戸籍謄本・抄本が1通450円程度、除籍謄本・改製原戸籍が1通750円程度、住民票が1通300円程度です。一覧図の交付申出自体は無料ですが、戸籍を揃える実費だけで数千円かかるケースが大半です。これが条件です。
なお、2024年(令和6年)3月1日から施行された「戸籍法の一部改正」により、従来は本籍地の役所まで出向く必要があった戸籍謄本が、最寄りの市区町村窓口で取得できる「広域交付制度」が始まりました。遠方の本籍地まで足を運ぶ手間が省けるため、実務上の書類収集コストが大幅に下がっています。ただし、この広域交付は兄弟姉妹の分は取得できない・郵送での請求不可など一部制限があるため、事前確認が必要です。
権威性のある参考情報として、法務局の公式ページを確認することをお勧めします。
法定相続情報証明制度の必要書類について、法務局の公式手続き案内。
法定相続情報証明制度の必要書類で最も間違いやすい「戸籍の取得範囲」
不動産実務の現場では、相続登記の経験を積んだ担当者ほど、ある思い込みにはまりやすい落とし穴があります。相続登記のつもりで被相続人の戸籍を集めると、法定相続情報証明制度の申出では差し戻される可能性があるのです。
相続登記の場合、法務局の実務上の取り扱いとして、被相続人の戸籍は「生殖可能年齢(男性15歳・女性12歳頃)から死亡まで」の戸籍で認められています。これは「その年齢以降にしか子どもが生まれないため、それ以前の戸籍に相続人が出てくることはない」という考え方に基づいています。
一方、法定相続情報証明制度の申出(単独で行う場合)では、不動産登記規則第247条第3項第2号に基づき「出生から死亡まで」の連続した戸籍が必要です。男性であれば0歳時の戸籍まで遡る必要があります。
出生時の戸籍まで遡るとなると、場合によっては明治・大正時代の古い戸籍謄本が必要になることもあります。意外ですね。
ただし、例外が1つあります。相続登記と法定相続情報証明制度の申出を同時に行う場合は、相続登記の実務ルールが適用されるため、生殖可能年齢からの戸籍で足りると取り扱われています。
整理すると、法定相続情報証明制度の申出を「単独で」行う場合は出生時からの戸籍が必要であり、相続登記と同時に申出する場合は生殖可能年齢からの戸籍でも可となります。この違いを知らずに戸籍を収集すると、不足分の再取得で余分な時間とコスト(1通あたり750円の除籍謄本など)が発生するリスクがあります。これは痛いですね。
書類収集の際には、相続登記だけで使うのか、法定相続情報証明制度の申出も同時に予定しているのかを最初の段階で判断し、必要な戸籍の取得範囲を決めてから動くのが、実務上のベストプラクティスです。
司法書士法人 不動産名義変更手続センター「法定相続情報一覧図の取得に必要な書類一覧」(出生から死亡までの戸籍と生殖可能年齢の違いについて詳細な解説があります)
法定相続情報証明制度の必要書類のうち「返却されない書類」への対処法
法定相続情報証明制度の申出では、提出した書類の多くが「一覧図の写し」の交付と同時に返却されます。しかし、すべての書類が戻ってくるわけではありません。ここが実務で見落とされやすいポイントです。
返却される書類と返却されない書類を明確に整理します。
✅ 返却される書類
- 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍(一式)
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人の戸籍謄本
❌ 返却されない書類
- 申出人の本人確認に使用した書類のコピーや写し(運転免許証のコピー、マイナンバーカードのコピー、住民票の写しなど)
これが問題になるのは、住民票の写し(原本)を申出の本人確認書類として使ってしまったケースです。住民票の写しの原本を提出すると、法務局に保管されたまま返却されません。他の相続手続き(銀行の口座解約など)でも住民票の原本が必要な場合、再取得(1通300円程度)の手間とコストが発生します。
法務局の公式案内によると、「住民票記載事項証明書(住民票の写し)の原本を他の手続に使用するためにお手元に控えておきたい場合は、登記所には原本とコピーの両方を提出し、コピーには”原本と相違ない旨”を記載して申出人の記名をする」という対応が案内されています。
つまり原本とコピーを一緒に出せば原本は戻ってくる、ということですね。
実務上は、住民票の写しの原本を提出するのではなく、最初から「運転免許証の表裏コピー(原本と相違ない旨を記載し記名したもの)」または「マイナンバーカード表面のコピー(同様の記載・記名あり)」を使うことで、原本の取られ損を防げます。これは使えそうです。
返却されない書類についての公式情報。
法定相続情報証明制度の必要書類作成で間違えやすい「一覧図への記載ルール」
必要書類を揃えるだけでなく、申出人が自ら作成する「法定相続情報一覧図」も申出書類の一部です。この一覧図の記載方法にも、現場で誤解されやすいルールがいくつかあります。
①相続放棄した人の記載
「相続放棄した人は一覧図に書かなくていい」と思っている方は少なくありません。しかし、これは誤りです。法定相続情報一覧図は戸籍上の法定相続人を明らかにする書類であるため、たとえ相続放棄が完了していても、その相続人の氏名・生年月日・続柄は一覧図に記載する必要があります。つまり、相続放棄の事実を一覧図で証明することはできません。相続放棄した人がいる場合は、別途「相続放棄申述受理証明書」を手続き先に提出することになります。相続放棄した人も記載するが原則です。
②住所の記載は「任意」だが記載することを強く推奨
相続人の住所を一覧図に記載するかどうかは、申出人の任意です。ただし、住所を記載しておくと、相続登記や金融機関での手続きで相続人の住民票の写しが不要になる場合があります。結果として、後続の手続きがスムーズになります。
住所を記載する場合は、相続人全員の住民票の写しが必要書類に追加されます。この住民票は申出後に返却されますので、記載あり・なしを状況に応じて判断してください。
③一覧図はA4・下部5cmを空白にする
一覧図はA4サイズの縦向き白紙で作成します。重要なのは、用紙の下部5cmを空白にしておくことです。この部分には法務局が登記官の認証文を挿入するため、ここに何かを書いてしまうと差し戻しの対象になります。
手書きでもパソコン作成でも可ですが、記載内容の続柄は戸籍に記載された表現(「長男」「長女」など)と一致させる必要があります。「子」という記載も可能ですが、相続税申告など一部の手続きでは「子」の記載だと対応できないケースがあるため、基本的には戸籍通りの続柄で記載するのが無難です。
法務局ではさまざまな家族構成に対応した一覧図の記載例をホームページで公開していますので、初めて作成する場合は必ず参照してください。
法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」(家族構成別のテンプレートと記載例が確認できます)
法定相続情報証明制度の最新アップデートと不動産実務への活用
法定相続情報証明制度は、2017年5月の開始から段階的に利用範囲が拡大してきました。不動産実務に関わる方であれば、最新の制度変更を把握しておくことが重要です。
2024年4月1日:法定相続情報番号による添付省略が可能に
令和6年4月1日から、相続登記の申請書の「添付情報欄」に「法定相続情報番号」を記載するだけで、法定相続情報一覧図の写し(証明書の原本)の添付を省略できるようになりました。この番号は交付された法定相続情報一覧図の写しの右上に記載されている識別番号です。
これは大きなアップデートです。一度取得した一覧図の番号を控えておけば、次の登記申請では原本を持参する必要がなくなります。複数の不動産について相続登記をする場合などに、特に実務上の効率が上がります。
ただし、注意点があります。この省略が可能なのは、法定相続情報一覧図に記載されている情報の範囲内に限られます。一覧図作成後に法定相続人が亡くなって数次相続が発生した場合など、一覧図に記載されていない情報が必要になるケースでは、別途書類の提出が求められます。
2024年3月1日:戸籍謄本の広域交付制度スタート
前述の通り、最寄りの市区町村窓口で他の自治体の戸籍謄本が取得できる「広域交付制度」が始まりました。ただし、兄弟姉妹分の戸籍は取得不可・郵送・代理人申請は不可という制限があります。また、一部コンピュータ化されていない古い戸籍は対象外のケースもあります。書類収集の計画段階で確認しておくのが安心です。
申出先の法務局は4カ所から選べる
申出ができる登記所(法務局)は次の4つの地を管轄するいずれかです。①被相続人の本籍地、②被相続人の最後の住所地、③申出人の住所地、④被相続人名義の不動産の所在地。この中で最も利便性の高い法務局を選択することで、当事者の移動コストを最小化できます。
なお、一覧図の写しは申出日の翌年から起算して5年間保管されます。この間であれば申出人は何度でも無料で再交付を受けられます。ただし、再交付を申し出られるのは当初の申出人(または委任された親族・有資格者)に限られ、当初の申出をした法務局にのみ申し出ることができます。この点は忘れやすいですね。
制度を利用するメリットが大きいケースと少ないケース
法定相続情報一覧図は、手続き先の窓口が複数にわたる場合(複数の銀行口座 + 相続登記 + 相続税申告など)には大きな効率化効果があります。戸籍の束を何度も提出・返却待ちするサイクルが不要になり、複数の手続きを並行して進めることができるためです。
一方、相続財産が1つの銀行口座のみで手続き先が1カ所しかない場合には、一覧図の作成と申出にかかる手間(書類作成・法務局への申出・1〜2週間の交付待ち)を考えると、直接その窓口に戸籍を持参する方が早く終わることも多いです。これが条件です。
最新の制度アップデートに関する公式情報。
法務局「法定相続情報番号の提供による相続登記等における法定相続情報一覧図の添付省略について」(令和6年4月1日施行の変更点が掲載されています)

弁護士×税理士と学ぶ ”争族”にならないための法務と税務【令和6年民法・税法・登記法版】
