一部事項証明書の手数料と取得方法を宅建業者向けに解説

一部事項証明書の手数料・取得方法と宅建業務での使い分け

全部事項証明書しか取っていないと、マンション1棟で手数料が1通1,800円以上になることがあります。

📋 この記事の3つのポイント
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一部事項証明書とは?

登記記録のうち必要な区・番号の情報だけを指定して取得できる証明書。全部事項証明書より手数料が安くなる場合があり、マンション物件では特に有効です。

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手数料の基本と節約術

窓口請求は1通600円(50枚超で100円加算)。オンライン請求なら窓口交付490円・郵送520円。さらに登記情報提供サービスなら331円で内容確認が可能です。

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宅建業務での使い分け方

物件調査・重要事項説明・公的提出書類など、場面ごとに「一部事項証明書」「全部事項証明書」「登記情報提供サービス」を使い分けると、コストと時間を同時に削減できます。

一部事項証明書とは:全部事項証明書との違いを宅建業務で整理する

 

登記事項証明書には大きく分けて複数の種類があり、宅建業務でよく登場するのが「全部事項証明書」と「一部事項証明書」です。この2つの違いを正確に把握しておくことは、業務の効率化とコスト管理の両方に直結します。

全部事項証明書は、対象の不動産に関する過去から現在までのすべての登記情報が記録された証明書です。所有権の移転履歴、抵当権の設定・抹消の経緯、表題部の変など、その不動産の「履歴書」をまるごと取得できます。

一方、一部事項証明書(いちぶじこうしょうめいしょ)は、登記記録のうち「特定の区・番号に関する事項のみ」を指定して証明するものです。たとえば「甲区〇〇番の所有権に関する事項だけ」「乙区の特定の抵当権に関する事項だけ」というように、必要な部分だけを抜き出して取得できます。旧来の「登記簿抄本(しょうほん)」に相当する書類です。

これが特に重要になるのが、区分所有マンションの物件調査です。規模の大きなマンションでは、1棟の建物全体に関するすべての共有者情報・権利関係が1冊の登記記録に収まっています。全部事項証明書で取得すると、他の住戸の所有者情報まで含まれてしまい、書類が100ページを超えることも珍しくありません。つまり全部事項証明書が大きなデメリットになる場面があるわけです。

一部事項証明書であれば、対象住戸の区・番号だけを指定することで、必要な情報に絞ったコンパクトな証明書を取得できます。つまり全部事項証明書が基本、とは必ずしも言えない、ということですね。

種類 記載内容 主な用途
全部事項証明書 過去から現在まで全履歴 売買・ローン・登記申請全般
現在事項証明書 現在有効な事項のみ 現況確認(抹消済み情報不要の場合)
一部事項証明書 指定した区・番号の事項のみ マンション特定住戸の確認など
閉鎖事項証明書 閉鎖された登記記録 土地の沿革調査など

参考:登記事項証明書の種類については法務省・法務局の案内も確認してください。

法務局|各種証明書請求手続(法務省)

一部事項証明書の手数料一覧:窓口・オンライン・登記情報サービスで比較

手数料が安い方法を知らないまま毎回窓口で600円払っているのは、積み重なると意外な出費になります。取得方法によって手数料は変わります。これが原則です。

令和7年(2025年)4月1日施行の登記手数料令改正により、手数料体系が一部変更されました。現在の主な手数料は下表のとおりです。

取得方法 手数料(1通) 備考
📌 窓口(書面請求) 600円 50枚超で50枚ごとに100円加算
📮 郵送(書面請求) 600円 別途切手・封筒が必要
💻 オンライン請求・郵送受取 520円 郵送料不要・証明力あり
💻 オンライン請求・窓口受取 490円 最寄りの法務局で受取可能
🖥️ 登記情報提供サービス 331円 証明力なし・閲覧のみ(令和8年4月以降330円)

ここで注意が必要なのは、登記情報提供サービス(https://www1.touki.or.jp/)で取得できる情報は「閲覧」と同等であり、法的な証明力がない点です。登記官の認証文・公印が付されていないため、裁判所・官公庁への提出や、登記申請の添付書類としては使用できません。

一方で、内容確認・物件調査・事前リサーチのフェーズでは331円(令和8年4月以降は330円)で必要な情報をすぐに確認でき、非常にコスト効率が高いといえます。これは使えそうですね。

たとえば、1か月に50件の物件調査を行う宅建業者が、毎回窓口で600円の全部事項証明書を取得していた場合と、登記情報提供サービス(331円)で事前確認してから必要な場面でのみ正式な証明書を取得した場合では、月単位でのコスト差が大きくなります。50件すべて窓口取得なら30,000円、登記情報提供サービスとの使い分けで大幅な削減が見込めます。

また、マンションなど枚数が多くなる物件では、50枚超の加算手数料も考慮が必要です。全部事項証明書が100枚になる物件では、窓口取得で600円+100円(50枚超分)=700円となります。一部事項証明書で指定した住戸の情報のみを取得すれば、50枚以内に収まるケースが多く、600円で済みます。これが条件です。

参考:法務省 登記手数料の最新情報

法務省|登記手数料について(令和7年4月1日~)

参考:登記情報提供サービスの利用料金一覧

法務省|登記情報提供サービスの利用料金等一覧

一部事項証明書の取得方法:窓口・オンラインの申請手順と記載のポイント

取得方法は3つあります。窓口・郵送・オンラインです。宅建業務では、調査件数が多いほどオンライン請求のメリットが大きくなります。

🏢 窓口での取得方法

法務局の窓口では、「登記事項証明書交付申請書」に必要事項を記載して提出します。一部事項証明書を申請する場合は、申請書の「□一部事項証明書(何区何番事項)」の欄にチェックを入れ、必要な区(甲区・乙区)と番号を具体的に指定します。収入印紙600円を貼って提出すれば、その場で交付されます。収入印紙は法務局窓口または近隣の郵便局で購入できます。

土地の場合は「地番」、建物の場合は「家屋番号」が必要です。住所とは異なる場合があるため、事前に固定資産税納税通知書や登記情報提供サービスで確認しておくとスムーズです。管轄外の法務局でも申請可能になっているため、業務上アクセスしやすい最寄りの法務局を利用できます。

💻 オンラインでの取得方法(推奨)

法務省の「登記・供託オンライン申請システム」(https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/)を利用します。初回は利用者登録が必要ですが、一度登録すれば24時間申請が可能になります(メンテナンス時間を除く)。手順はシンプルで、ログイン→「不動産証明書請求」を選択→地番・家屋番号の入力→証明書の種類で「一部事項証明書」を選択→受取方法(郵送か窓口受取か)の選択→手数料の電子納付、という流れです。

受取を窓口にすれば490円、郵送ならば520円です。申請後、指定した法務局で受け取るか、自宅・事務所への郵送が選べます。郵送の場合は速達指定も可能で、翌日〜3日程度で届くことが多いです。

📮 郵送での取得方法

法務局のウェブサイトから申請書をダウンロードして印刷し、収入印紙600円を貼って郵送します。返信用封筒(切手貼り付け済み)を同封する必要があります。到着まで3日〜1週間程度かかるため、急ぎの業務には向きません。ただし、オンライン環境が整っていない場面では有効な手段です。

参考:申請書の書式は法務局のウェブサイトから入手可能です。

法務局|登記事項証明書・各種証明書の請求手続(法務省)

宅建業務における一部事項証明書の使いどころ:場面別の使い分けガイド

「どの場面でどの証明書を使うか」が整理できると、コスト削減と業務スピードの両立ができます。証明書の使い分けが原則です。

✅ 物件調査・事前確認フェーズ

売買・賃貸の媒介を受けた際の初期調査段階では、登記情報提供サービス(331円)が有効です。法的な証明力は不要で、現時点の所有者・抵当権の有無・地番の確認ができれば十分です。迅速に情報を把握できる点でも優れており、業務の入口として積極的に活用できます。

✅ 重要事項説明書の作成・確認フェーズ

重要事項説明書に登記情報を記載する段階では、正式な登記事項証明書が必要です。このフェーズでオンライン請求(窓口交付490円または郵送520円)を活用するのが効率的です。

区分所有マンションの場合、確認が必要なのは対象住戸の権利部(甲区・乙区)です。このケースでは一部事項証明書を選択することで、50枚超加算のリスクを避けつつ、必要な情報だけを取得できます。一部事項証明書が条件として有効な場面です。

✅ 登記申請の添付書類として提出する場合

住所変更登記・抵当権抹消登記・相続登記などで添付書類として提出が求められる場合は、正式な登記事項証明書(全部事項または指定の一部事項)が必要です。登記情報提供サービスのPDFデータは使用できません。発行後3か月以内を目安に提出するよう求められるケースが多いため、申請スケジュールに合わせて取得タイミングを計ることが重要です。

✅ 金融機関や官公庁への提出書類として使う場合

融資の際に金融機関が求める場合や、宅建業免許申請・更新の際に行政庁へ提出する場合も、法的な証明力のある正式な登記事項証明書が求められます。登記情報提供サービスのデータでは代用できないため注意が必要です。

場面 推奨する書類 推奨取得方法
初期の物件調査・確認 登記情報提供サービス オンライン(331円)
重要事項説明書の作成 一部または全部事項証明書 オンライン請求(490〜520円)
登記申請の添付書類 全部事項証明書(正式) オンライン請求
金融機関・行政庁への提出 全部事項証明書(正式) オンライン請求または窓口
マンション特定住戸の確認 一部事項証明書 オンライン請求(490〜520円)

参考:登記情報提供サービスの証明力に関する詳細は公式サイトで確認できます。

登記情報提供サービス|サービス概要(一般財団法人民事法務協会)

宅建業者が見落としがちな手数料の落とし穴:枚数加算・令和7年改正・令和8年改定

「いつも通り」の手数料設定で処理していると、改正後に気づかず余計な支出が発生していることがあります。痛いですね。宅建業務では手数料の変化に敏感でいる必要があります。

📌 50枚超の加算手数料

登記事項証明書は、1通の枚数が50枚を超える場合、超えた枚数50枚ごとに100円が加算されます。窓口・オンライン問わず適用されます。大規模マンションや共同担保が多い物件では、全部事項証明書の取得時にこの加算が発生する可能性があります。たとえば100枚になる物件なら、50枚超の50枚分で100円が加算されて700円になります。一部事項証明書で必要な区・番号だけを指定すれば、枚数を圧縮して600円に抑えられるケースが多いため、積極的に活用する価値があります。

📌 令和7年(2025年)4月1日施行の手数料改正

登記手数料令等の一部を改正する政令(令和7年政令第33号)により、2025年4月1日から手数料体系が変わりました。窓口請求(書面)による登記事項証明書の600円は据え置きとなりましたが、オンライン請求の手数料が変更されています。

  • オンライン請求・郵送送付:旧500円 → 新520円(20円値上げ)
  • オンライン請求・窓口交付:旧480円 → 新490円(10円値上げ)

この値上げは「ごくわずか」と感じるかもしれませんが、月に100件以上取得する業者であれば、年間で数千円単位の影響になります。経費処理でオンライン請求の単価を設定している場合は、必ず更新しておきましょう。

📌 令和8年(2026年)4月1日からの登記情報提供サービス料金改定

令和8年(2026年)4月1日から、登記情報提供サービスの利用料金も変更されます。指定法人手数料が1件あたり11円から10円に引き下げられる影響で、以下のように変わります。

  • 全部事項情報(不動産・商業法人):現行331円 → 330円(1円値下げ)
  • 所有者事項情報:現行141円 → 140円(1円値下げ)

変化は微小ですが、制度変更として把握しておくことが重要です。業務で使用する手数料管理表や経費計上ルールは、適宜最新の料金に合わせて更新する習慣をつけておくと、あとから混乱しません。

参考:令和7年4月1日からの手数料改正の詳細は法務省PDFで確認できます。

法務省|各種証明書等の手数料が変わります(令和7年4月1日施行)

参考:手数料改正に関する詳細解説

登記事項証明書も値上げ!令和7年4月1日で変わる登記手数料(kloff.jp)

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