強制代執行立ち退き手続きと費用負担の実態

強制代執行立ち退き手続流れ費用

強制執行にかかる費用80万円は、あなたが全額立て替えなければなりません。

この記事の3ポイント要約
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債務名義など3つの書類が必須

判決・和解調書などの債務名義、執行文、送達証明書がなければ強制執行は開始できません

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費用は原則賃借人負担だが貸主が立替

ワンルームでも60万円、ファミリータイプでは100万円超の費用を貸主が先に支払い、後日請求します

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申立てから断行まで4~6週間

催告から断行まで約1ヶ月、動産保管が必要な場合はさらに1ヶ月の期間を要します


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強制代執行立ち退きに必要な3つの書類

強制代執行を開始するには、民事執行法に基づく3つの書類が必須です。この3つがなければ、たとえ賃借人が家賃を何ヶ月滞納していても、法的に立ち退きを強制できません。

参考)立退きの強制執行を実現する方法と成功のポイント|立退き専門サ…

まず1つ目は債務名義です。これは裁判所が発行する判決や和解調書を指します。明渡請求を認める判決、または裁判所での和解が成立した和解調書が代表例です。債務名義がなければ、強制執行の入口にすら立てません。

2つ目は執行文です。これは判決等に基づいて強制執行をすることの許可を示す文書で、「債権者は、債務者に対して、この債務名義により強制執行をすることができる。

」という内容が記載されています。

債務名義を取得した裁判所の書記官に申立てを行い、債務名義の末尾に付与してもらう必要があります。

参考)強制執行と債務名義|コラム|国際弁護士をお探しなら栗林総合法…

3つ目は送達証明書です。債務名義が債務者に正式に送達されたことを証明する書類で、これがないと強制執行は認められません。

参考)強制執行の流れとは?申請に必要な費用についても解説します|ベ…

これら3つに加えて、執行官や執行補助者への予納金(金銭)を裁判所に納める必要もあります。

つまり書類が揃えばOKというわけではありません。

強制代執行立ち退き費用の内訳と負担者

強制執行にかかる費用は、法律上原則として債務者、つまり賃借人の負担です。

民事執行法第42条にも明記されています。

しかし実際には、貸主が全額を立て替えて支払い、手続き後に賃借人へ請求する仕組みになっています。

参考)プロが解説!入居者を強制退去させる時、費用は誰が負担する? …

具体的な費用の内訳を見てみましょう。

訴訟段階の費用

強制執行段階の費用

ワンルームマンションであっても、トータルで60万円ほどはかかると見込んでおく必要があります。ファミリータイプなら100万円を超えることも珍しくありません。滞納家賃を含めると、貸主の損失は相当な額になります。

費用を相手方に請求することは可能ですが、相手方の資産状況によっては支払われないこともあります。

必ず回収できるものではありません。

参考)強制退去執行までの流れ|賃貸トラブルへの対処法や立ち退きにか…


費用負担の法的根拠と回収方法について(杉並総合法律事務所)

強制代執行立ち退き申立てから断行までの期間

強制執行の申立てから催告までは約2週間かかります。その後、断行日は引渡期限(催告があった日から1か月を経過する日)の数日前に指定されるのが一般的です。

催告の際、執行官は借主が在宅している場合、断行日までに任意退却することが望ましいこと、任意退却しない場合には家財道具等を搬出して貸主に建物を引き渡すことなどを説明します。公示書を建物に貼り、借主に対して断行日や注意事項を記載した催告書を交付します。

断行の際に即日売却できない目的外動産がある場合、保管場所にて保管することになり、その処理のためにさらに1か月かかります。

まとめると、申立てから断行までは概ね4〜6週間です。目的外動産の保管が必要となる場合は、さらに4週間の期間が見込まれます。つまり全体で約2〜3ヶ月の期間が必要ということですね。

家賃滞納から強制執行完了までを見ると、さらに長期化します。家賃の滞納が約2〜3カ月続くと督促状が届き、そこから訴訟、判決、強制執行と進むため、退去の強制執行が実施されるまでは約5〜7カ月ほどかかるケースが多いのです。

参考)立ち退きの強制執行とは?拒否・居座り後に退去させられるまでの…

強制代執行立ち退き成功のための即決和解活用法

当事者間で立ち退きについて合意ができている場合、即決和解(訴え提起前の和解)を活用すると効率的です。この制度のメリットは、当事者の合意について債務名義(和解調書)を取得できることです。

通常の契約書と異なり、相手方が契約を守らなかった場合には、裁判所の力を借りて契約内容を実現(強制執行)することができるという効果があります。つまり合意の段階で将来の強制執行に備えた準備ができるということですね。

即決和解が特に有効なのは、以下のようなケースです。

  • 立ち退き交渉がまとまり、期日と条件について合意できた場合
  • 分割払いでの家賃支払いに合意したが、不履行のリスクに備えたい場合
  • 立ち退き料の支払いと引き換えに退去する約束ができた場合

立ち退き交渉では、立ち退き料の支払いや敷金の返還、退去までの賃料の免除などの条件を提示しつつ、話し合いでの円満な解決を目指すことが重要です。そうした交渉が成立した際に、即決和解で債務名義を確保しておけば、万が一約束が守られなかった場合でも、再度訴訟を起こす必要がありません。

参考)立ち退きに応じなかった際の強制執行の流れ

ただし、立ち退きを拒否しているという理由だけでは、強制執行を実施することはできません。

規約違反や契約解除の正当な理由が必要です。

強制代執行立ち退きで不動産従事者が陥る失敗例

強制執行には意外な落とし穴が存在します。典型的な失敗例を知っておくことで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。

失敗例①:管理会社に丸投げして長期化

立ち退き交渉を管理会社に任せきりにした結果、6ヶ月かかったケースがあります。「出て行かない」と言った借主が一人いて、その方だけ残して交渉を進めた結果、最後は退去に応じたものの立退き料が一番高くなりました。専門家への丸投げは一見楽に見えますが、交渉のタイミングや判断を誤ると費用も期間も膨らみます。

参考)立退き交渉の成功例と失敗例

失敗例②:集団交渉に応じてしまった

複数の賃借人が団結して集団で交渉を申し入れてきた場合、これに応じてしまうと時間がかかります。各世帯との賃貸借契約は期間も賃料条件も個別なので、「お話し合いも個別でお願いします」と明確に伝えるべきです。4世帯のうち何世帯かは提示額で納得しても、巻き込まれたお陰で時間がかかってしまうことがあります。

失敗例③:競売物件の立ち退きトラブル

競売で物件を取得したものの、前の所有者や賃借人がかたくなに立ち退きを拒否するケースがあります。債務者と居住者が異なる場合、すでに貸借人が居住しており、改装や別の入居者を招くための立ち退きに同意しないという事態も起こります。競売物件では引渡命令および強制執行の手続きが必要になる前提で、費用と期間を見積もる必要があります。

参考)安く買ったはいいけれど……競売物件のリスクと失敗例 – 不動…

これらの失敗を避けるには、規約違反の改善を第一に求め、立ち退き交渉を拒否せず、立ち退きに応じるための条件を事前に考慮しておくことが重要です。強制執行は最終手段であり、できる限り任意の退去を促す姿勢が成功の鍵となります。


立退き交渉の成功例と失敗例の詳細分析

強制代執行立ち退きで注意すべき賃借人の権利保護

強制執行を進める上で、不動産従事者が見落としがちなのが賃借人の権利保護です。貸主側の立場を過剰に利用すると、逆に法的トラブルに発展するリスクがあります。

参考)立ち退き交渉のポイントと成功事例の紹介

借地借家法は賃借人を強く保護しており、貸主側から立ち退きを求める場合には「正当事由」が必要です。家賃滞納などの契約違反がある場合は別ですが、貸主の都合だけで立ち退きを求めることはできません。

参考)立ち退き請求に必要な正当事由とは?判例や立ち退きの流れも紹介…

正当事由が認められるのは以下のようなケースです。

  • 建物の老朽化が著しく、安全上の問題がある
  • 貸主自身が建物を使用する必要性が高い
  • 都市再開発計画などの公共性の高い理由がある
  • 十分な立ち退き料を提示している

過去の判例では、都市再生緊急整備地域に指定されていることや空室率95%という状況を踏まえ、再開発計画の具体性と必要性が認められたケースがあります。ただし、借主が営業を継続する必要性も考慮され、十分な金銭補償があれば移転可能と判断されました。

一方で、8か月分の家賃滞納があった事例でも、敷金の充当をめぐる誤解と経緯、支払能力の存在などを理由に、信頼関係の破壊にあたらないと判断され、正当事由が認められなかったケースもあります。滞納があれば必ず立ち退きが認められるわけではありません。

強制執行を回避したい賃借人側は、規約違反を改善し、立ち退き交渉を拒否せず、立ち退きに応じるための条件(立ち退き料の支払い、敷金の返還、退去までの賃料免除、引っ越し代など)を考慮することが重要です。

不動産従事者としては、強制執行に進む前に、これらの条件を丁寧に提示し、円満解決を目指す姿勢が求められます。強制執行後は立ち退き料を受け取れず、強制退去の費用も請求される可能性があることを賃借人に説明することで、任意退去を促すことができます。


立退きの強制執行を実現する方法と成功のポイント(立野木法律事務所)