宅地建物取引業協会連合会の契約書を正しく使う実務ガイド
全宅連の書式を「とりあえずダウンロードして使えばOK」と思っていると、あなたが知らないうちに50万円以下の罰金リスクを抱えた契約書を交付していることがあります。
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宅地建物取引業協会連合会(全宅連)の契約書式の種類と選び方
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(以下、全宅連)は、宅建協会会員向けの業務支援サイト「ハトサポ」を通じて、実務で使える契約書式を無料で提供しています。書式の数は80種類以上にのぼり、すべて最新の法令に対応したものが随時更新されています。
全宅連が提供する主な契約書式は、大きく分けると売買系・賃貸借系・媒介系の3カテゴリです。それぞれに用途に応じた複数の書式があり、間違った書式を使うと「37条書面に記載すべき事項の漏れ」につながり、行政処分の対象となるリスクがあります。これは原則として必須です。
主な書式の種類は以下のとおりです。
| カテゴリ | 書式名 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 売買 | 不動産売買契約書(一般仲介) | 土地・戸建の一般仲介売買 |
| 売買 | 区分所有建物売買契約書(敷地権型) | マンション等の区分所有建物 |
| 賃貸 | 住宅賃貸借契約書 | アパート等の住宅賃貸 |
| 賃貸 | 事業用賃貸借契約書(事務所) | 事務所・テナントの賃貸 |
| 媒介 | 専任媒介契約書 | 売主との専任媒介契約 |
| 重説 | 重要事項説明書(土地建物売買用) | 戸建・土地の売買重説 |
| 重説 | 重要事項説明書(区分所有建物売買用) | マンション売買の重説 |
書式の選択ミスで起きやすいのが「マンション取引で土地建物用の売買契約書を使ってしまう」というパターンです。区分所有建物には敷地権に関する記載が必要であり、土地建物用の書式ではその欄が存在しないため、37条書面として不完全になります。まず書式の対象物件を確認することが基本です。
全宅連のハトサポにアクセスするには、宅建協会会員としてのユーザー名とパスワードが必要です。非会員はダウンロードできない仕組みになっており、各都道府県協会の窓口で認証情報を取得することができます。
宅地建物取引業協会連合会の契約書と37条書面の関係・記載事項の注意点
全宅連の売買契約書は、宅建業法第37条が定める「37条書面」を兼ねるように設計されています。つまり、全宅連書式の売買契約書に正確に記載して交付すれば、別途37条書面を作成する必要はありません。これは使えそうです。
ただし、「兼ねる」ためには、37条書面の必須記載事項がすべて埋まっていることが条件です。37条書面に記載しなければならない主な事項は以下のとおりです。
- 当事者の氏名・住所
- 宅地建物の特定に必要な表示(所在・地番・構造・面積等)
- 売買代金または交換差金の額と支払時期・支払方法
- 宅地建物の引渡し時期
- 移転登記の申請時期
- 代金・交換差金の融資のあっせんに関する定め(融資利用の場合)
- 契約の解除に関する定め
- 損害賠償額の予定または違約金に関する定め
- 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め
- 契約不適合責任(瑕疵担保)の内容・期間に関する定め
- 租税公課の負担に関する定め
実務上よく見落とされるのが「移転登記の申請時期」と「天災等による損害負担の定め」です。これらは書式の標準条項として印刷されていますが、空欄になっている部分の記入を忘れるケースが後を絶ちません。行政処分の事例でも、37条書面の記載事項不備は毎年一定数の指摘を受けています。厳しいところですね。
37条書面の交付義務に違反した場合、宅建業者には50万円以下の罰金が科せられる可能性があります(宅建業法第83条)。さらに、行政庁から業務停止処分を受けるリスクもあります。金額だけでなく、業務停止となれば実質的な営業損失は数百万円規模になることも珍しくありません。
国土交通省「重要事項説明・書面交付制度の概要」(PDF)37条書面に関する行政解釈が確認できます
宅地建物取引業協会連合会の契約書と電子化・押印廃止への対応
2022年5月18日、改正宅建業法が施行され、重要事項説明書(35条書面)と契約書(37条書面)への宅地建物取引士の押印義務が廃止されました。記名のみで有効となり、直筆署名も不要です。これは意外ですね。
さらに同時に、これらの書面の電磁的交付も全面解禁されました。つまり、全宅連書式の契約書をPDFやクラウドシステムで送付し、相手方の承諾があれば紙の交付は不要になったということです。電子化が条件です。
全宅連はこの法改正に対応し、独自の電子契約システム「ハトサポサイン」を2022年11月にリリースしました。ハトサポサインの主な特徴は以下のとおりです。
- ハトサポWeb書式作成システムで作成した契約書データをそのまま電子契約に使用できる
- チケット方式の料金体系で、月額固定費なし(使用した分だけ費用が発生)
- 賃貸借・売買どちらの契約にも対応
- 宅建業法の要件を満たした電子署名が可能
電子契約の導入にあたり、実務上で注意すべき点が1つあります。相手方(売主・買主・貸主・借主)の事前承諾が必要であり、承諾なしに電子書面のみを交付することは法律違反です。承諾の取得方法は書面でも口頭でも構いませんが、後日のトラブルに備えて書面か電子メールで記録を残しておくことが現場のベストプラクティスとなっています。
なお、電子契約においても宅地建物取引士の記名は必要です。ただし宅建業者側の電子署名は義務ではなく、宅建士の氏名を電磁的記録として残すことで要件を満たします。つまり押印廃止ということです。
全宅連「不動産実務セミナー:デジタル社会のIT重説と電子契約」案内ページ(ハトサポサインの実務解説)
宅地建物取引業協会連合会の契約書における公簿取引の落とし穴と特約記載の実務
全宅連の「不動産売買契約書(一般仲介)」は、土地の対象面積を公簿(登記簿面積)として確定し、実測清算を行わない場合に使用する書式として設計されています。この点を理解せずに使うと、後から大きなトラブルになりかねません。
公簿取引とは、登記簿に記載された面積をそのまま売買対象面積として契約する方法です。実際に測量して面積を確認する実測売買とは異なり、後日実測した結果と面積の差があっても、原則として代金の増減精算は行いません。
しかし判例では、公簿と実測の面積差が「契約で想定していた程度を超える」と評価された場合、契約不適合責任を追及されるリスクがあります。たとえば、登記簿面積が200㎡(約60坪)の土地を購入したにもかかわらず、実測すると190㎡しかなかったようなケースです。坪単価100万円であれば、差額だけで1,000万円規模の清算請求になることもあります。痛いですね。
このリスクを回避するためには、契約書の特約欄に「実測面積と公簿面積が相違した場合においても、売買代金の増減は行わないものとする」という文言を明記することが有効です。全宅連の「特約・容認事項文例集」には、こうした特約の文例が顧問弁護士監修のもと多数収録されています。重説・契約書作成時の疑問解消に特化したツールであり、ハトサポ会員なら無料でアクセスできます。
境界越境物がある物件では「買主が承継する旨を特約で明示する」こともルールです。容認事項の記載漏れは、後日のクレームや損害賠償の原因になります。全宅連の文例集を使えば、顧問弁護士監修の文言をそのまま流用できるため、法的リスクを最小化した特約文を作成できます。これは活用してほしいところです。
三井住友トラスト不動産「土地公簿売買契約のトラブル」(公簿面積差異の相談事例)
宅地建物取引業協会連合会の契約書式を最大限活用する独自視点:法改正アップデートの見落とし対策
全宅連の契約書式は、法改正のたびに改訂されています。たとえば2022年の宅建業法改正に対応した書式更新、2024年4月の標準媒介契約約款改正への対応など、直近でも複数回の改訂が行われています。これが原則です。
問題になるのは、「以前ダウンロードした書式をそのまま使い続けている」ケースです。法改正があった後も古いバージョンの書式を使用している場合、最新の法律に基づく必須記載事項が欠けていることがあります。行政調査が入った際に旧書式使用が発覚すると、業法違反の指摘を受けるリスクがゼロではありません。
具体的な対策として、以下の3ステップを実務に組み込むことが有効です。
ステップ1:ハトサポで書式の「最終更新日」を確認する
ハトサポの書式ダウンロードページには、書式ごとに改訂年月が記載されています。少なくとも半年に1回はログインして最新版が出ていないか確認することを習慣にしましょう。
ステップ2:法改正情報を協会のメールマガジンで受け取る
各都道府県宅建協会はメールマガジンや会報誌で法改正情報を定期配信しています。会報の「お知らせ」欄に書式改訂の告知が掲載されることが多いため、見落とさないようにします。
ステップ3:古い書式データを社内で一元管理して更新する
支店や複数のスタッフが別々に書式を保存していると、バージョンの統一が難しくなります。ハトサポのWeb書式作成システムはクラウドベースなので、サーバー上のデータを共有することで、複数のスタッフが常に最新書式を使える環境を構築できます。
令和4年5月の宅建業法改正・令和6年4月の標準媒介契約約款改正は、それぞれ書式の記載内容に直接影響を与えた改正です。これらの改正内容は、全宅連が発行する「わかりやすい売買契約書の書き方」「わかりやすい賃貸借契約書の書き方」などの解説書で詳細に確認できます。解説書は有料頒布ですが、各都道府県協会の窓口または全宅連の出版物として入手できます。
「契約書式は一度ダウンロードしたら安心」という考え方は、この業界では通用しません。法令は毎年のように変わるため、書式の定期更新確認が法的リスク回避の最初の一手です。これだけ覚えておけばOKです。
愛媛県宅建協会「全宅連出版物・わかりやすい重要事項説明書の書き方追補版(令和6年4月改正対応)」

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