津波災害警戒区域一覧と指定状況調査

津波災害警戒区域一覧と指定状況

指定されていない地域でも説明義務が生じることがある

この記事の3ポイント要約
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津波災害警戒区域は29道府県で指定済み

2025年10月時点で40都道府県のうち29道府県が指定を完了していますが、東京都や大阪府など多くの自治体で未指定の状態が続いています。

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未指定でも重要事項説明以外の責任が問われる可能性

区域指定がない場合は法的な説明義務はありませんが、津波浸水想定区域内であることを知りながら説明しなかった場合、損害賠償責任を負うリスクがあります。

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調査は国土地理院のハザードマップで確認

重ねるハザードマップを使えば津波浸水想定区域や指定状況をすぐに確認でき、不動産取引前の調査に活用できます。

津波災害警戒区域の全国指定状況一覧

 

津波災害警戒区域の指定は、都道府県によって進捗状況に大きな差があります。2025年10月時点で、津波被害の恐れがある40都道府県のうち、指定を完了したのは29道府県にとどまっています。これは全体の約7割に相当しますが、残りの3割は未指定または一部指定の状態が続いているのです。

指定が完了している主な都道府県には、愛知県、山形県、徳島県、宮崎県などがあります。これらの地域では、津波浸水想定区域と同一の範囲で津波災害警戒区域(イエローゾーン)が指定されており、不動産取引時には必ず重要事項説明の対象となります。一方で、北海道、静岡県、和歌山県、神奈川県などは一部の市町村のみで指定が進んでおり、同じ県内でも市町村によって対応が異なるという状況です。

つまり指定済みということですね。

特に注目すべきは、東京都が島嶼部のみを対象としており、23区を含む本土部分では指定作業が進んでいない点です。大阪府、千葉県、三重県なども23都道府県が未指定または一部指定の状態にあります。これは地価下落や住民の不安を懸念する地元自治体との調整が難航していることが主な理由とされています。国土交通省の資料によれば、2025年8月時点での指定状況は以下のような分布となっています。

完全指定済みの主な道府県

  • 北海道(一部)、青森県、岩手県、宮城県、秋田県
  • 山形県、福島県、茨城県、神奈川県(一部)
  • 新潟県、富山県、石川県、福井県、静岡県(一部)
  • 愛知県、三重県(一部)、京都府、兵庫県
  • 鳥取県、島根県、山口県、徳島県、愛媛県
  • 高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県
  • 大分県(一部)、宮崎県、鹿児島県(一部)、沖縄県

これは全国的な傾向です。

不動産業者としては、取引対象物件がある都道府県の指定状況を常に最新の情報で把握しておく必要があります。都道府県のホームページや国土交通省のポータルサイトで定期的に確認する習慣をつけることで、説明義務違反のリスクを回避できます。

国土交通省の津波防災地域づくりに関する法律のページでは、最新の指定状況や関連法令の詳細が確認できます

津波災害警戒区域指定が遅れている理由と不動産取引への影響

津波災害警戒区域の指定が遅れている最大の理由は、地価下落への懸念です。内閣府の調査研究によれば、警戒区域に指定されると不動産取引時に必ず津波災害リスクが認知されるため、時間経過に伴う地価への影響が顕在化しやすいとされています。特に商業地では住宅地よりも水害リスクが地価に大きく織り込まれる傾向があり、地元自治体や住民が指定に消極的になるケースが多いのです。

実際、国土交通省の調査では、2021年3月時点で警戒区域の指定を完了したのは11府県にとどまっていました。それから約4年が経過した2025年でも29道府県と、全体の7割程度にとどまっています。この進捗の遅さは、東日本大震災の教訓を踏まえて2011年に制定された津波防災地域づくりに関する法律の趣旨が十分に実現できていないことを示しています。

進捗が遅いことが問題です。

不動産取引への影響としては、指定済みの区域では重要事項説明書に必ず記載しなければならないという明確な義務が生じます。宅地建物取引業法施行規則で定められているため、説明を怠ると指示処分や業務停止命令の対象となる可能性があります。一方、未指定の区域では法的な説明義務はありませんが、津波浸水想定が公表されている場合は、買主から後日「知っていたのに説明しなかった」として損害賠償請求を受けるリスクがあります。

このリスクを回避するには、未指定区域でも津波浸水想定区域内にある物件については、任意で情報提供することが賢明です。重要事項説明書の「その他」欄に「本物件は津波浸水想定区域内にありますが、津波災害警戒区域の指定はまだ行われていません」と記載しておくだけでも、後のトラブル防止につながります。水害ハザードマップの説明義務は2020年8月から施行されており、これと併せて津波リスクも説明することで、より丁寧な対応が可能になります。

津波災害警戒区域の調べ方と確認手順

津波災害警戒区域を調べる最も確実な方法は、国土地理院が提供する「重ねるハザードマップ」を活用することです。このシステムでは、住所を入力するだけでその地点の津波浸水想定区域や津波災害警戒区域の指定状況を視覚的に確認できます。スマートフォンからでもアクセス可能なため、物件調査の現地で即座に確認することも可能です。

確認すれば安心です。

具体的な手順としては、まず重ねるハザードマップのサイトにアクセスし、画面上部の検索窓に物件の住所を入力します。地図が表示されたら、左側のメニューから「津波浸水想定」を選択すると、想定される浸水深が色分けで表示されます。黄色からオレンジ、赤へと色が濃くなるほど浸水深が深いことを示しています。さらに詳細を確認したい場合は、地図中心点情報ボタンをタップすると、その地点の標高や浸水深の数値が表示されます。

都道府県のホームページも重要な情報源です。多くの都道府県では、津波災害警戒区域の指定状況を市町村別にPDF形式で公開しています。例えば神奈川県では、15市町(横浜市、川崎市、横須賀市、鎌倉市、藤沢市、小田原市など)で指定が完了しており、指定日や指定範囲の図面を閲覧できます。静岡県では伊豆市において全国で唯一の津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)も指定されており、より詳細な基準水位情報が公開されています。

これは参考になります。

役所調査の際には、都市計画課や防災課で「津波災害警戒区域指定図書」の閲覧を依頼することも有効です。これらの図書には、基準水位(浸水深に建物への衝突によるせり上がり高さを加えた水位)が記載されており、避難施設の高さ設定や建築計画の参考になります。基準水位が2.0メートルを超えると建物の約半数以上が全壊する可能性があり、浸水深30センチメートルを超えると歩行困難で死者発生の恐れがあるという目安が示されています。

不動産業者向けの実務対応としては、取引対象物件の調査チェックリストに「津波災害警戒区域の確認」という項目を追加することをおすすめします。重ねるハザードマップのスクリーンショットを保存し、調査報告書に添付しておけば、後日の確認や証拠資料としても活用できます。

国土地理院のハザードマップポータルサイトでは、津波だけでなく洪水や土砂災害など複数のリスクを重ねて表示できます

津波災害警戒区域内の不動産取引における重要事項説明のポイント

津波災害警戒区域内の物件を取引する場合、宅地建物取引業法第35条に基づく重要事項説明が必須となります。説明すべき内容は、「取引対象となる宅地または建物が津波災害警戒区域内にある旨」です。これは指定がなされた時点から説明義務が発生するため、取引時に指定されていない場合は説明義務はありません。しかし、契約後引渡し前に指定された場合のリスクも考慮する必要があります。

説明義務が基本です。

重要事項説明書には、具体的に「本物件は津波防災地域づくりに関する法律第53条第1項により指定された津波災害警戒区域内にあります」と記載します。さらに、区域内における警戒避難体制の整備状況、最寄りの指定避難施設の場所、想定される浸水深や基準水位についても説明することが望ましいとされています。買主が津波リスクを正確に理解できるよう、市町村が作成した津波ハザードマップを提示し、物件の位置を示すことも有効です。

津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)内の物件については、より詳細な説明が必要です。オレンジゾーンでは、一定の開発行為や建築行為に対して都道府県知事の許可が必要となる制限があります。具体的には、社会福祉施設、学校、医療施設などの制限用途の建築物を建築する場合、居室の床面の高さや構造について基準水位以上とする必要があります。2025年8月時点で津波災害特別警戒区域の指定があるのは静岡県伊豆市のみですが、今後他の地域でも指定される可能性があります。

これだけは例外です。

説明義務違反のリスクを避けるため、不動産業者は以下の対応を徹底すべきです。まず、物件調査の段階で都道府県のホームページや重ねるハザードマップで最新の指定状況を確認します。次に、重要事項説明書作成時には「津波防災地域づくりに関する法律」の項目を必ずチェックし、該当する場合は具体的な区域名と指定日を記載します。そして、説明時には口頭でも丁寧に補足し、買主の理解を確認した上で署名捺印を得ることが重要です。

未指定区域での取引でも、津波浸水想定区域内であることが判明している場合は、任意で情報提供することがトラブル回避につながります。「現時点では津波災害警戒区域の指定はありませんが、津波浸水想定区域に含まれています」という一文を重要事項説明書の備考欄に記載するだけでも、買主への誠実な対応として評価されます。説明義務がないからといって黙っていると、後日買主が津波リスクを知った際に「説明がなかった」として信頼関係が損なわれる可能性があります。

津波災害警戒区域指定後の不動産価格への影響と売却戦略

津波災害警戒区域に指定されると、不動産価格にどの程度影響するのかは多くの不動産業者が関心を持つテーマです。内閣府経済社会総合研究所の研究によれば、警戒区域の指定は地価に一定の影響を与えるものの、その影響度は地域や用途によって大きく異なります。商業地では住宅地よりも水害リスクが相対的に大きく織り込まれる傾向があり、指定後に取引価格が下落するケースが報告されています。

地価への影響は様々です。

ただし、すべての物件で一律に価格が下落するわけではありません。ハザードマップの公表自体は基準地価実勢価格に直接影響しないという調査結果もあります。これは、不動産鑑定評価の基準に災害リスクがすでに織り込まれているためです。松山市のように市街地の広範囲が浸水想定区域に指定されている地域では、ハザードマップにおける不動産価格への影響はほとんどないというデータもあります。つまり、周辺地域全体が同じリスクにさらされている場合、相対的な価格差が生じにくいのです。

影響は限定的かもしれません。

売主の立場で津波災害警戒区域内の物件を売却する際には、いくつかの戦略が考えられます。

まず、物件の強みを明確にすることです。

例えば、建物が鉄筋コンクリート造で津波に対する耐久性が高い、高台に近く避難が容易、指定避難施設まで徒歩数分といった点をアピールします。次に、津波対策設備がある場合はそれを積極的に訴求します。防潮扉や浸水防止設備、非常用電源などがあれば、買主の不安を軽減できます。

買主の立場では、津波災害警戒区域内の物件を購入する際のメリットも理解しておくべきです。イエローゾーンには土地利用や建築に関する制限がないため、自由に建築や改修が可能です。また、周辺相場より割安で購入できる可能性があり、適切な防災対策を講じることで安全に居住できます。住宅ローン減税についても、2025年12月時点では津波災害警戒区域は対象外とする議論が進められていますが、まだ確定していません。今後の税制改正の動向を注視する必要があります。

内閣府経済社会総合研究所の研究論文では、津波防災地域づくりが地価に与える影響について詳細な分析が行われています

不動産業者としては、津波災害警戒区域の指定を「ネガティブ要因」としてのみ捉えるのではなく、「防災意識の高い買主層」へのアプローチのチャンスと考えることもできます。適切な情報提供と誠実な対応により、長期的な信頼関係を構築することが、持続可能な不動産ビジネスにつながります。


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