登記済権利証を紛失しても売買できる完全対応ガイド

登記済権利証の紛失でも売買できる手続きと対策

権利証を失くしたら、その物件は売れない——そう思い込んでいませんか?

📋 この記事の3つのポイント
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権利証を紛失しても売買は可能

「事前通知制度」または「資格者代理人による本人確認情報の提供制度」を使えば、登記済権利証・登記識別情報がなくても不動産売買を進められます。

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公証人確認は約5,000〜数万円の費用が発生

司法書士による本人確認情報提供は数万円〜10万円超の報酬が相場。事前通知制度は費用ゼロですが手続きに2週間以上かかる場合があります。

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再発行は一切できない

登記済権利証も登記識別情報も、法律上「再発行不可」です。紛失後の対応策を正しく理解しておくことが不動産業務の基本スキルです。

登記済権利証の紛失が売買に与える影響と基礎知識

 

登記済権利証(または登記識別情報)は、不動産登記法上、所有権移転登記を申請する際に「本人確認」の手段として機能する書類です。2005年の不動産登記法改正以降、新規の登記ではすべて「登記識別情報(12桁の英数字)」が通知される形式に切り替わっており、旧来の紙の権利証は以後発行されていません。

つまり、「登記済権利証」は現在発行されていない書類です。

手元にある場合はそのまま有効ですが、一度失うと法律上の再発行制度は存在しません。これは不動産登記法22条および不動産登記規則による規定であり、法務局に申し出ても「再発行」という手続き自体がないのが現実です。

多くの売主・買主は「権利証がなければ売れない」と思い込みますが、実際には2つの代替手続きが用意されています。この仕組みを正確に把握しているかどうかが、不動産業従事者としての実務力を左右します。

書類の種類 発行時期 再発行
登記済権利証(登記済証) 〜2005年以前 ❌ 不可
登記識別情報(12桁) 2005年〜現在 ❌ 不可

紛失した場合でも売買が可能であることは確かです。ただし、代替手続きには時間・費用・段取りが伴います。

登記済権利証の紛失後に売買できる「事前通知制度」の全手順

事前通知制度は、費用ゼロで利用できる公的な代替手続きです。

具体的な流れはこうです。まず売主が通常通り所有権移転登記を申請します(権利証なし)。法務局は申請を受理したのち、登記簿上の住所宛に「申請がありましたが、本人ですか?」という確認書類(事前通知書)を書留郵便で送付します。売主はこれを受け取り、2週間以内に「申請は間違いありません」と法務局に申し出ます。この申し出を受けた法務局が登記を完了させる、という流れです。

費用ゼロが基本です。

ただし、いくつかの落とし穴があります。

  • 通知書は登記簿上の住所に届くため、転居・住所変している場合は受け取れないリスクがある
  • 申し出の期限は通知が届いた日から2週間以内(期限を過ぎると申請が却下される)
  • 取引のスケジュールが厳格な場合、2週間の待機期間が障壁になりやすい
  • 売買代金の決済・引き渡しと登記完了のタイミングを合わせにくい

特に住所変更が伴う場合は要注意です。登記簿住所と現住所が異なると、そもそも通知が届かず手続きが頓挫します。この場合は先に住所変更登記を完了させる必要があり、手間がさらに増えます。

実務上、売買と同日決済を求める取引では「事前通知制度」の利用は難しいと判断するケースが多く、後述の「本人確認情報提供制度」を選択するのが一般的な対応です。

登記済権利証の紛失を司法書士が解決する「本人確認情報提供制度」

権利証(登記識別情報)がなくても、資格者代理人(司法書士または弁護士)が売主と面談して本人確認を行い、その確認情報を法務局に提供することで登記申請ができる制度です。不動産登記法23条4項に根拠があります。

これが最もスムーズな方法です。

司法書士が実際に売主と対面し、以下を確認します。

確認内容を「本人確認情報」として書面にまとめ、登記申請に添付します。法務局はこの書類を審査し、問題なければ通常通り登記を完了させます。決済当日に完結できるため、売買スケジュールを崩す心配がありません。

気になるのは費用感ですね。

司法書士報酬は事務所や物件の複雑さによって異なりますが、本人確認情報の作成費用として3万〜10万円程度が相場です。通常の所有権移転登記報酬に上乗せされるため、売主側の負担が増える点は事前に説明しておくべきです。

また、面談の日程調整が必要なため、決済日の少なくとも1週間前から司法書士への連絡・段取りを開始することが実務上の鉄則です。直前に「権利証が見つからない」と発覚するケースが多いため、重要事項説明の段階で権利証の有無を必ず確認する習慣をつけると、こういったトラブルを未然に防げます。

法務局:不動産登記の申請手続(本人確認情報提供に関する公式案内PDF)

登記済権利証の紛失が発覚したときの実務対応チェックリスト

現場で「権利証が見つからない」と売主から連絡が入ったとき、慌てずに動くための手順を整理します。

STEP 1:登記簿の現住所を確認する

まず登記情報提供サービスまたは法務局で最新の登記簿を確認し、売主の登記簿上の住所と現住所が一致しているかを確認します。一致していなければ住所変更登記が先です。

STEP 2:取引スケジュールを確認する

決済まで2週間以上の余裕があれば「事前通知制度」が選択肢に入ります。余裕がなければ司法書士による「本人確認情報提供制度」一択です。

STEP 3:担当司法書士に早急に連絡する

本人確認情報の作成には面談・書類準備が必要です。決済日の1週間前が連絡のタイムリミットと考えてください。

STEP 4:売主に費用の説明と同意を得る

本人確認情報提供制度を使う場合、追加費用(3〜10万円程度)が発生します。書面で事前同意を取ることが重要です。

STEP 5:買主・金融機関への説明

住宅ローン融資が絡む取引では、金融機関が権利証の代替手続きを認めるかを事前に確認します。多くの金融機関は対応していますが、担当者レベルの認識不足で手続きが遅れるケースがあります。

これが現場対応の基本フローです。

登記情報確認には「登記情報提供サービス(https://www1.touki.or.jp/)」が便利で、1件334円(土地または建物)から確認できます。決済前に最新の登記内容を確認することは、権利証問題に限らず不動産取引全般の基本です。
登記情報提供サービス(法務省指定・オンラインで登記簿確認が可能)

登記済権利証の紛失で見落とされがちな「不正登記リスク」と予防策

ここが、検索上位の記事ではほとんど触れられていない独自視点の話です。

権利証や登記識別情報を紛失した場合、本人が手続きを進める際の不便だけが問題ではありません。第三者が売主になりすまして不正な所有権移転登記を申請するリスクも同時に高まります。

実はこれが最大のリスクです。

架空の「権利証紛失」を装い、偽造された本人確認書類とともに司法書士に接触し、不正な本人確認情報を作成させようとする詐欺的手口が実際に報告されています。法務省の通達でも、司法書士による本人確認の際には「通常の取引と比較して本人確認の程度を高めること」が求められています。

こうしたなりすましリスクへの対策として、法務局では「登記識別情報の失効申出制度」が用意されています。これは、情報漏洩・紛失が疑われる際に、その登記識別情報を使った登記申請を拒否させる手続きです。

  • 申出先:物件を管轄する法務局
  • 費用:無料
  • 効果:申出後、当該識別情報を使った登記申請を法務局が受け付けなくなる
  • 注意点:失効申出をした識別情報は以後使えないため、本人が正規に申請する際も代替手続きが必要になる

失効申出は「保険」として活用できます。

特に、物件を長期間売却予定がなく、書類の管理が不安な売主に対しては、この制度を紹介することで信頼関係の構築にもつながります。「権利証を失くしても大丈夫」という話だけでなく、「失くした後にどう守るか」まで案内できる不動産業従事者は、顧客からの評価が明確に変わります。

加えて、売主側が知っておくと安心なのが「不正登記防止申出制度」です。これは登記識別情報の有無にかかわらず利用でき、申出から3か月間は申出人に事前通知が届く仕組みです。更新も可能であり、転居中・長期不在の売主には特に有効な手段です。

法務局:不正登記防止申出制度の案内(無料・随時申出可能)

権利証紛失は「売買ができない」問題ではなく、「手続きと費用が変わる」問題です。それが基本です。不動産業従事者として、代替手続きの全容と不正リスクへの対応策を正確に理解しておくことが、取引の安全と顧客の信頼を守る最も確実な方法です。


補訂新版 不動産登記申請memo 権利登記編